R:インタールード
「おっかしーな……どこいったんだぁ?」
奇妙な品物で囲まれた部屋の中、血眼になってある物を探していた。
「あんだけでけぇもん、そうそう失くしはしねぇと思ったが……」
そこらじゅうに散らばった物を放置したまま、ばつが悪そうな顔をしてツクノはその場を後にする。
あの出来事から約十年が経った。光陰矢の如し、と人は言う。その時の流れの中で世界は急速に変化していくし、そこで暮らす人々の変化もまた然り。本当に時とは残酷なものだ。
「なぁ、カンナ。お前あれの場所知らねぇか?」
「……」
呼びかけられた人物は本を閉じることもせず、目を声する方に向けることもない。
神成蓮、ここでの呼び名はカンナ。彼の無口ぶりは進化、いや、退化と言った方が適切だろうか、とにかく、前にもまして彼が口を開くことは少なくなっていた。
「えーっと……あれだよ、あれ! この前見せただろ? ほら、こんな感じの姿見だ。あれがねぇと向こうの世界のお前が監視できえねぇんだよなぁ……。いや、特にする必要もないんだが、俺が気になる。だから、やる。単純明快、気分爽快、悪いことなんてひとつもねぇ! あー……まぁそれはいいとして、ホントに見かけなかったか? 確かに扱いが多少乱雑だったのは否定し得ない事実だが……だって、鏡っつっても空から降ってきて壊れない代物だぞ? ちっとばかし乱暴に扱ったっていいじゃねぇか。……えー、あー違う違う。そうじゃなくて、俺はなぁ、使い終わった後毎回ちゃんと部屋に片付けておいていたし……いや、何回か忘れたか……? んまぁ、一昨日だって間違いなく鏡は部屋にあったんだ。それから今日まで使ってねぇ。はぁ……どこいっちまったんだか……。まぁ、きっとそのうち出てくるだろう。んじゃ、俺は晩飯の食材買ってくっから、留守番よろしくな」
喋るだけ喋ってツクノはまた部屋を移動する。その背中を見送ってから、栞をページの間に挟み込んで、彼はゆっくりと本を閉じた。




