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R:狂気乱舞

 カンナは今まで見せたことのないような目で熱心に話を聞く。ツクノはその姿を見て少し心が弾んだ。


「要は情報が第一。事前に相手のことをよく知っておくのはもちろんのこと、それに加え実践中に動きを観察することも大切だ。むやみやたらに相手に突っ込むのは賢いやり方じゃない。まー、たまに何も考えないで戦った方が強いってやつもいるが、お前は絶対に頭を使ったほうが強い。見てたら分かる。それとあくまで戦闘は臨機応変に。型にはまった動きじゃ勝てるもんも勝てないぜ」


 愚痴をこぼすようにカンナは呟く。


「基本の動きすら教えてもらってないんだけど……」

「それは自分で学べ。体のつくりは人それぞれだ。他人に教えてもらった動きが合わないことなんてざらだからな。とりあえず回避し続けて、隙を見つけたら攻撃。戦ってるうちに体術は自然に身に付くから安心しろ」

「……わかった。それとその……防具とかは? 前みたいに痛い思いはしたくないって言うか……」

「ばーか。素人に防具なんていらねぇんだよ。動きづらくて逆に的になる」

「……そう……なのかな」




 カンナはニムに向けて小刀を構えた。


「おいおい、そんなに身構えなくたっていいんだよ。楽にしてろ。まずは相手の動きに慣れるんだ」


 少年は首肯し、リラックスした状態で目の前の敵と対峙する。

 ニムはスライムを一回り小さくして、白色にした感じのモンスター。愛らしい姿ゆえペットのように人々から扱われることも多い。パワーはスライムに劣り、あろうことか小さいくせに動きも遅い。そして、スライムと明らかに違うのは目があるということだ。これはとても重要なことで、目があるからどこが正面か判断できる。どこから見ても同じ見た目のスライムは意外に厄介なのだ。

 小さい、遅い、最弱ここに極まれり。


「ニムは相手に向かって突進しかしてこねぇ。しかも直線オンリー。だから――」


 ツクノが話している最中にニムはカンナに向かって突進した。


「あ」


 それをカンナは軽々かわす。この前一撃喰らって塞ぎ込んだとは思えない身のこなし。


「そ、そうそう。だからかわしやすいんだ。それで――」


 また彼が説明し終える前に動き出す。今度はカンナだ。

 カンナは、突進をかわされ背を向けているニムに小刀を向ける。遅くて鈍いニムはもちろんをそれに反応することもできない。

 カンナは勢いよく刃を突き刺した。体液が飛び散る。その一刺しでニムはもう死んでしまったであろう。しかし、カンナは幾度も刃を抜き差しする。その体を痛めつける。彼は相手の命がもう尽きていることを知っていた。だが、やめない。繰り返し刺す。何回も何回も何回も何回も――


「おい! カンナ!」

「……」


 ツクノの怒鳴り声を聞いたカンナはその手を止める。


「もう死んでる。それ以上傷つけなくていい。俺が言えることじゃないが……あまりにも残酷だ」

「……」


 カンナはニムに突き刺さった小刀をゆっくりと抜き、そして最後にもう一度強く死体に刺した。ニムの体は原型を留めていない。


「お前……」


 少年は溢れんばかりの笑みでツクノの方に振り向いた。

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