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はし渡し

「うーん……! 無理!」


 両手を目一杯広げて潔く諦念を示すイッキ。


「さすがに多すぎますよね。しかも、ここ街の中心で栄えてますから、なおさらです」

「だよなー? 時間も時間だし、気付けば影も闇の中ってか! なー? 蓮」

「いや、頑張ろうぜ! フェリシア、どう?」

「ダメね、見つからないわ。ってか、あんたも使いなさいよ。癪だけどレンの方が能力上でしょ」

「あー……いや、ちょいと一身上の都合で……」


 ここぞとばかりに憎たらしい顔をして、レンを挑発する。


「ふーん、ガタ来たんだ。修行も積まずに連発するから、そういうことになんのよ。反省したら次からはちゃんと特訓することね」


 それが理由なのか。あの感覚は。

 釈然としないが、今はそういうことにしておく。


「へいへい」

「どーする、御三方。これじゃ埒明かんで。聞き込みするって言っても、さすがに『この人と同じ顔の人見ませんでした?』って聞けねぇよ。頭おかしい、ぜってー。あー、もう! 初手から詰んでる! 平手対裸玉!」

「落ち着け、友よ。とりあえず、やってみよう。じゃないと気が済まん。行ってくるぜ!」


 三人から離れてレンは聞き込みを開始した。

 手当たり次第に声をかける。次から次へと。絶え間なく。

 しかし、結果は失敗に終わった。


「あぶねぇ、あぶねぇ……。警察呼ばれるところだったぜ……」

「そりゃな。いきなり『俺と同じ顔見ませんでした?』って声かけてみろ。恐れ戦くわ。ってか、この世界に警察いんのかよ……」

「どうします? レンさんのドッペルさんがここにまだいるとは言い切れませんし、移動しますか?」

「それもそうだな。つっても、どの方角に行ったかも皆目見当つかんし、どこに行けばいいのやら……」

「知ってるよー」

「うわっしょい!」


 変な驚き方をするイッキの隣にいたのは――


「アルム!?」

「同じ顔の人、どこに行ったか知ってるよー」


 その白く美しい少女は人混みの中でも一際目立つ。


「街の手前で会った子ね。もう一度会うなんて思いもしなかったわ」

「それはアルムの気分次第なのです」

「えー……うん?」


 フェリシアは顔を引きつらせて首を傾げた。

 この少女はあまり得意なタイプの人種ではない。レンとはまた違ったネジの抜け方をしている。話の通じない相手。バカは良くても、不思議ちゃんはちょっと荷が重い。


「あれー!? いつぞやの、ってか今日出会った可愛い子ちゃん!? これは、運命の出会い!? その蛇のような美しく赤い瞳は僕の心を痺れさせている、ぜっ!」


 その様子に冷たい視線を送らざるを得ない。


「イッキってあんなキャラだったっけ?」

「女の子が絡むとだいたいああなるんだよ。昔から変わんねぇ」

「へー……。でも、私達と会った時、あんなんじゃなかったわよね?」

「だいたいって言ったろ? 状況によっちゃそうならない。俺も長い時間あいつと一緒にいるけど、いまだにその区別がつかん。きっと、あいつなりの……ポリシー? があるんだよ」

「納得いかないわ」

「あ、あのー……」


 クローディアが申し訳なさそうにして、二人の会話(?)に入る。アルムの方には目を向けず、イッキの方だけを見ていた。


「レンさんのドッペルさんのことをお聞きした方が良いんじゃないでしょうか。時間もあれですし……」

「分かってる、分かってる」


 本当に分かっているのだろうか、と彼女は思った。


「で、アルムちゃん。そこんとこどうよ。そこのバカと同じ顔のやつ、どこ行ったか教えてくんね?」

「いーよー。じゃあアルムについてきてねー」


 そう言って、アルムはその場から去る。――瞬間移動で。


「うーん……! 無理!」

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