ライズ
お互いの情報交換を済ませた後、これからのことを考える。
「俺もこの旅に同行していいかな?」
「ええ、結構よ。私達の精神的負担が減るし」
そう言ってフェリシアはレンを一瞥した。
「ひどくないっすか?」
無視して二人は話を進める。仏頂面で通訳を続けるレン。
「えーと……本格的な活動は明日からだね? 何かやらなきゃいけないことはある?」
「あー……」
少し顔を強張らせて、フェリシアはイッキの姿を見る。その男は未だに灰まみれだった。
「そうね、まずは『せいそう』してもらおうかしら」
その意図を汲み取ったイッキも自身の体を見て、目を細くする。
「分かったよ。『せんたく』はお急ぎコースにしよう」
まだ洋画風の訳が抜け切っていなかった。
翌日。朝日が昇ってすぐに四人は歩き始めた。削られた山地の間を冷たい風が吹き抜ける。
昨日の努力のおかげで、目的地ナフィアまではあと少し。充分な睡眠をとったレンはとても御機嫌だ。
「清々しい朝だねぇ! 眩しい光が目に染みるぜ!」
「さっむ……」
手を擦りながら辺りを見回す。イッキの服装は、はっきり言ってイタイ。黒のレザージャケットに白シャツ。そして黒のボトムスにはチェーンが付いていて、じゃらじゃらと音を立てていた。高校生の身なりとしては、少々奇抜というか何というか。
「そろそろ街が見えてくるはずなんだけど……」
フェリシアは徐々に目の色を赤く染める。
「あー! 待った! 待った!」
「何よ?」
「ふっふーん!」
レンは得意げな顔をしてイッキの方を見た。
「……何だ?」
「俺さ、超能力身に着けたんだよ!」
「超能力? ってか超能力って、身に着けるとかそういうもんなのか?」
「いいから、いいから! 見てなさいって!」
意識を集中させる。イッキは不思議そうな顔でレンの行動を見守っていた。そして、レンは己の瞼を上げ、黄金に輝く瞳を露わにする。
「お……おお……なんだそれ」
「おいおい! もっとこう『うおおおおおおおおおおお!』とかいうリアクションくれよ!」
イッキはいまいちテンションが上がらずにいた。
「で、それは?」
「聞いて驚くなよ! これは……えーっと……ご……ご……」
「ご?」
「ごく簡単に説明すると、すごい!」
「……そりゃすごい」
適当にあしらう。
「だろ!? これでめっちゃ遠くまで見えるんだぜ! たとえば、俺達が向かうその先にぃ?」
ナフィアの街を確認しようと、進行方向へと視線を動かした。
「……女の子が立ってる」
「女?」
「ああ、白い髪の少女」
「ファンタジーかよ」
「しかも可愛いっぽいぞ! これは話しかけなくちゃね! 行ってきまーす!」
「あ、おい!」
全力ダッシュするレンを止める気にもなれず、イッキはその場に立ち尽くす。会話のできない三人は皆一様に、呆れた顔で首を振った。
「おーい! そこの人ー! 何してるなう!」
儚げな白い少女は赤い目をレンに向ける。
「あれぇ? はやいぞぉ?」




