キューブ
「色々とありがとうございました!」
「おう! また来てくれよな!」
レン達はライラックに別れを告げ、いよいよ本格的に旅を開始する。
「んじゃ、武器も手に入れたことだし、しゅっぱーつ!」
買ったばかりのナックルダスターを両の拳にはめ、浮足立った様子のレン。
「出発って、まだ目的地も決めてないじゃない」
「ん? そういやそうだな」
「あのー……」
申し訳なさそうな声でクローディアが発案する。
「ナフィアとか……どうでしょうか?」
「ナフィア?」
フェリシアは復唱して、その意図を問うた。
「はい。あの街は魔法が栄えていますよね? レンさんが元いた世界に戻るのに、何か有益な情報が得られるかもと思って……」
「うーん……そうね。じゃあ、そうしましょう。でも、ナフィアか……結構な距離あるわね。どのルートで行こうかしら」
「あ、それなんですけど……もしよかったらゴラモ峡谷を通って行きませんか? 欲しい素材があって……」
「ゴラモ峡谷かぁ……」
苦慮しているフェリシアを見て、クローディアは慌てて言葉をかける。
「あ! 無理なら全然行かなくても構わないです! 本当に!」
クローディアは周章狼狽して耳を赤く染め、視線をあちらこちらに向けながらじたばたしていた。
レンは、クローディアの頭に手を置き、それを鎮める。
「どうどう。落ち着け、クローディア」
「ふしゅー……」
フェリシアは白い歯を見せ、懐かしむような優しい笑顔を見せた。
「相変わらずね。あんたは人に気を遣い過ぎよ。これから長い間行動を共にするんだから、もっと気楽に行きましょう。……じゃあ、ゴラモ峡谷を通過してナフィアに向かうことにするわ。移動はもちろん徒歩。異論はないわね?」
「大丈夫です!」
「よく分からんのでお任せします。ただ、徒歩は……」
「よし、じゃあ出発よ」
「はい!」
「フェリシアさぁん……」
不平不満を言いながら、ぶつくさとレンは二人のあとを追う。先頭を切って歩くフェリシアは、微かに口元を緩めていた。
バカ、ツンデレ、合法ロリ。三人の旅が今、幕を開ける。




