ブロッサム
「ふーん……そういうことだったのか」
洗いざらい三人は全てをレンに話した。
「って、ちょっとひどくないっすか! 信用度ゼロかよぉ」
深くため息をついて分かりやすく落ち込む。いじける姿はまるで子供だ。
「本当に悪かったわ。私は信用してなかった訳じゃないんだけど。いや、言い訳がましいわね。ごめんなさい、レン」
誠実に、素直に、深々と頭を下げて謝るフェリシアを見て、少し居心地が悪くなったのか、レンは頭を掻きむしった後、自分のふとももに手を勢いよく叩き付け、姿勢をピンと正してどっしり構えた。
「よし! 許す! だからさ、その、頭上げろよ!」
その言葉にゆっくりと頭を上げ、フェリシアはレンを見つめる。
「…な、何?」
フェリシアは小さく笑って振り向き、レンに背中を向けた。
「なんでもなーい!」
「なんでもなくないだろ!」
二人を眺めて、リュートとクローディア。
「今回はアタシの取り越し苦労だったわけね。みんなに迷惑かけちゃった。今日はどうもね、クローディアちゃん。助かったわ」
「いえ、とんでもないです。それに、お礼を言いたいのは私の方です」
「え?」
クローディアは二人に呼びかける。
「レンさん! フェリシアさん!」
その声に二人は振り向いた。背の低い少女は大きな目を輝かせて提案する。
「お二人と一緒に旅したいんですけど、いいでしょうか?」
「それは本当のことだったのか。俺はいいけど……」
レンは横目で確認を取るといった意味合いで、フェリシアの方を見た。それに対して彼女は悩んだ様子。息をのんで返答を待つクローディアの心臓は、今にも張り裂けそうなくらいな速度で脈を打っている。
静かな空間には時計の針の音が響き、呼吸の音さえも気になってしまう程の妙な緊迫した雰囲気が漂っていた。
針が十五回程一定のリズムを刻んだところで、フェリシアが口を開く。
「わかったわ。一緒に旅をしましょう」
それを聞いたクローディアは感激して、泣き出しそうなくらい喜んだ。
「あ、ありがとうございます! 本当にありがとうございます! 私ができることは一生懸命頑張りますのでよろしくお願いします!」
「何よ、改まって」
照れくさそうにフェリシアはそっぽを向く。
「あはは……。でも、前に頼んだ時には」
「よおおおおおおおおおおし! 仲間が増えた! よろしくな、クローディア! いやぁ、こういうのがRPGの醍醐味だよね~! 王道! 王道展開! しかも美少女ときたもんだ! テンション上がるねぇ!」
いつもと遜色なくやかましいレンに、またもやクローディアはびくつく。
「うるさいわね! ちょっとは学習しなさいよ!」
その光景を遠目から見てリュートは頭を抱えた。
「はぁ……先が思いやられるわね。大丈夫かしら」




