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疑惑の目

「まほうの ちからって すげー!」


 ゲームのような台詞を吐くレン。

 だが、確かに魔法の力は驚異的なものであった。歩くことすらままならなかったフェリシアが、何事も無かったかのように、元気に体の治癒を確認して動き回っている。気が済んだのか椅子に座って一息ついた。


「ありがとう、リュート。あなたの治癒魔法はやっぱり超一流ね」

「褒めたって何も出ないわよ。さて、改めまして。アタシの名前はリュート・マクリー。リュートでいいわ。ここで病院紛いのことをやってるの。フェリシアとは昔からの付き合いよ」

「そうなんですか。あ、俺は神成蓮って言います。リュートさんは魔法使いなんですか?」

「あら、なんかその言い方可愛いわね。そうよ、魔法使い。一般的には魔術師、とか、魔導師、って呼ばれてるわ。厳密には違うものらしいけど、そこら辺はどうでもいいかなって」


 自分の事なのに適当だな、と心の中で思うレン。一応、目上の人に対してそれなりの態度で接することができるくらいの脳味噌は持っている。


「その魔術師ってのは、色んな魔法を使えるんですか?」


 ゲーム好きのレンからしてみれば魔法なんて夢の産物だ。いつになく積極的に情報を集めようとする。


「そうねぇ、ある程度までならだいたいの魔法は使えるわ。でも、上級魔法となってくると使える魔法は限られてくるのよ。アタシの場合だと、それが治癒魔法に当たるわね。それより、レンちゃん。こんな基礎的な知識も無いまま今まで生きてきたの? あなただって魔法使えるわよね?」

「え?」


 レンは唐突な衝撃発言を受けて間抜けな顔をした。


「こいつは異世界から来たのよ。ってかそれどういうこと?」

「異世界? アタシの方こそそれについて聞きたいわ」

「えっと、俺はつい数時間前この世界にやってきたんです。原因は分かってるんですけど、よく分からなくて……。とにかく突然の出来事だったもんで、どうも……。元いた世界はこんなRPGみたいな世界じゃありませんでした」

「RPG?」


 聞き慣れない言葉にリュートは首を傾げる。


「あ、分かんないですよね。いや、気にしないでください。たいしたことじゃないんで。それでこの世界にワープしてきた時、最初に出会ったのがフェリシアなんです」

「ホント迷惑な話よ」


 フェリシアは壁に掛けてある絵画の方を向きながら、目も合わさずそう呟いた。


「それで世話焼きフェリシアが面倒見てるってわけね。でも、あんたが仕事まで一緒にすることなんて、あれからあったかしら?」

「……」


 相変わらずじっと絵画を見つめ続けているフェリシアは、その問いに答えようとしない。

 何かに気を使ったのか、リュートは話題を次へとシフトする。


「そうそう、レンちゃんが魔法使えるって話ね。アタシは魔法師だから分かるんだけど、レンちゃんからは今も魔力を感じるわ」


 目線だけずらしてフェリシアが問う。


「それって、レンが今魔法を使ってるってこと?」

「そういうこと。それも結構な魔力を消費してると思うわ。よく体なんともないわね。一体何に使ってるの?」

「俺、魔法に関しては本当にさっぱりですって。魔法なんて使えないです。なんかの間違いじゃないですか?」


 何が何だか分からないというレンを、リュートは黙って数秒観察した後立ち上がり、手招きしてフェリシアを呼び寄せて別の部屋へと移動させた。


「レンちゃん、ちょっと待っててね」

「はーい」




 リュートはゆっくりと部屋の戸を閉める。そして、至極真面目な表情で尋ねた。


「フェリシア。あんた騙されてない?」


 腕組みしながら壁に寄りかかってそれに答える。


「私だってその可能性は考えたわ。けど、あいつの言動からして嘘ついてるようには思えないし、それに異世界の物だって見せてもらった」

「さっきも言ったけどあの子は魔法を使える。あんたに幻覚を見せて信じさせようした可能性だって……」

「私だってそこまで馬鹿じゃないわ。幻術をかけられていたとしても、それくらい気付くわよ」


 少し声のトーンを下げて、リュート。


「あの子の魔力なら、並み以上の幻術をかけるなんて朝飯前よ。かかってることすら気付けないくらいのものも。それくらいの魔力を感じる。使用している魔力以外にも、膨大な力が体から溢れているもの」

「何なのよ、あいつ」

「それが分からないから、危険だって言ってるでしょ」


 フェリシアは渋い顔をしてリュートの言葉に反発する。


「でも、あいつは命の恩人で……」

「あんた死にそうになったの? ホント、珍しいこともあるものね。……それより、異世界から来て初めての戦闘でザルギオンねぇ。ますます怪しくなってきたわ。今日はここに泊まっていきなさい。明日、あの子のこと調べてもらうから」

「調べてもらうって、クローディア? あの子、自分の能力使うの嫌いなんじゃなかった?」

「今回はそうも言ってられない事態よ。きっと分かってくれるわ」


 しばしの沈黙の後、フェリシアは静かに頷いた。そして、ドアの方に歩き出して元のフロアに戻っていく。

 リュートは一人溜息をついた。


「フェリシアらしくないわね。命を救ってもらった相手だから? それとも」

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