39:嬉しかったんだ……
でも、やっぱり。
タイキ君が忘れられない。
すぐ隣に、ヒカル君がいるのに。
いつしかあたしは、波間で水をかけ合って遊んでる、タイキ君を目で追ってしまっていた。
(おみっちゃん、嬉しそうだな)
当たり前だよね。
好きな人と、一緒の時間と空間を共有していられるんだもん。
「どうかした? 体調悪い?」
「え? ううん。全然。ごめんなさい」
こんなにも心配してくれてる、ヒカル君。
前に思ったことが蘇る。
(最低女に、なりたくないでしょ?)
うん。
なりたくない。
想いを踏みにじりたくない。
「謝ること無いよ。調子悪くなったら、すぐに言ってね」
「はい」
そんなことを話していたら。
おみっちゃんとタイキ君が来てくれた。
「コトネ。交代」
「まだいいよ?」
「ううん。せっかくなんだから、遊んでおいでよ」
「今までありがとうね」
――タイキ君のやさしいことばが、胸に痛い。
「じゃ。行こっか、コトネちゃん?」
「は、はい」
どうしてだろう。
気のせいかな?
(何だか、タイキ君の目。少し沈んで見える)
勘違いだよね。
だって、おみっちゃんと一緒なんだもん。
あたしの気のせい。
「コトネちゃんもヒカルも。さんきゅです」
「いって」
タイキ君とヒカル君が、ことばを交わす。
「行こうよ!」
つないでくれた、ヒカル君の手。
しっかり握って、あたしたちは海へ向かった。
どこかで、タイキ君の視線を感じながら……。
(何でなの? タイキ君?)
あたしは。
でもあたしは。
――その視線がどうしてか、嬉しかったんだ。
とてもとても。
嬉しかったんだ……。




