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39/71

39:嬉しかったんだ……

 でも、やっぱり。

 タイキ君が忘れられない。

 すぐ隣に、ヒカル君がいるのに。

 いつしかあたしは、波間で水をかけ合って遊んでる、タイキ君を目で追ってしまっていた。

(おみっちゃん、嬉しそうだな)

 当たり前だよね。

 好きな人と、一緒の時間と空間を共有していられるんだもん。

「どうかした? 体調悪い?」

「え? ううん。全然。ごめんなさい」

 こんなにも心配してくれてる、ヒカル君。

 前に思ったことが蘇る。

(最低女に、なりたくないでしょ?)

 うん。

 なりたくない。

 想いを踏みにじりたくない。

「謝ること無いよ。調子悪くなったら、すぐに言ってね」

「はい」

 そんなことを話していたら。

 おみっちゃんとタイキ君が来てくれた。

「コトネ。交代」

「まだいいよ?」

「ううん。せっかくなんだから、遊んでおいでよ」

「今までありがとうね」

 ――タイキ君のやさしいことばが、胸に痛い。

「じゃ。行こっか、コトネちゃん?」

「は、はい」

 どうしてだろう。

 気のせいかな?

(何だか、タイキ君の目。少し沈んで見える)

 勘違いだよね。

 だって、おみっちゃんと一緒なんだもん。

 あたしの気のせい。

「コトネちゃんもヒカルも。さんきゅです」

「いって」

 タイキ君とヒカル君が、ことばを交わす。

「行こうよ!」

 つないでくれた、ヒカル君の手。

 しっかり握って、あたしたちは海へ向かった。

 どこかで、タイキ君の視線を感じながら……。

(何でなの? タイキ君?)

 あたしは。

 でもあたしは。

 ――その視線がどうしてか、嬉しかったんだ。

 とてもとても。

 嬉しかったんだ……。


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