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前回のシリアス返せ

 修学旅行当日。

 またカバンに入ろうと企んでいたタマちゃんを摘みだし、旅行のしおりに筆記用具、着替えや洗面道具類にリュックに雨具。そして保険証のコピー。トランプとUNOと6ニムトをカバンの底に詰めて準備完了。母親から初日のお弁当を受け取って出発。

 タマちゃんはふてくされてふとんの中に潜りこんで出てきてくれないままだった。


「舞原ーおはよー」

「おはよッス」


 朝から元気な阿部君と、眠そうにふらふらと歩いている井上君が合流する。


「二人ともおはよ」


 二人に挨拶をして、校庭で出席を取る。旅行中の班ごとにわかれているのだけど、これはただ仲が良いメンバーで集まったと言う訳ではない。もちろん仲の良い連中なのだけど、担任に好きに班決めして良いと言われたので、男子は夜中に遊ぶゲームの種類で分ける事に決めた。

 6人で1班、男女3人ずつ。一部屋は6人部屋なので、寝る部屋は二つの班で合同になる。夜中にカード麻雀をやる部屋と、花札やる部屋と、トランプやUNOなどをやる部屋にわかれたのだ。

 この割り振りを決めた後で、『自由行動はこの班で行う』と先生に言われてかなり揉めたのだけど、どうせ昼間に行く場所なんてたいして変わらないだろうとそのまま提出した。

 班が決定した後で、自由行動中に行った場所に付いて調べて提出とか言われたので男子全員が頭を抱えた。女子は普通に仲の良い人たちで組んだみたい。

 日光なんていう小学生にも行った場所にいかされて、共通の見学ルートで東照宮とか江戸村も見た上で、自由行動でなにか見学して来いなんて言われても何も思いつかないのだけど、それを調べるのも勉強のうちと言われてしまえば返す言葉も無い。

 うちの班は二人が投げたので、俺が芭蕉の碑をめぐるという内容で予定を提出している。

 ……ちょっとタマちゃんが居ないうちに見ておきたい場所もあったので、公私混同というか俺の都合をむりやり通したのは秘密。その分申し訳ないから調べる方が頑張ろうと思う。


 集合時間5分前。そろそろクラスメイト達がと集まってきた。


「舞原君おはよー」

「純君おはよう」

「舞原君おはよう、班長まかせちゃってごめんね」

「瀬良さん、川井さんおはよう。班長は別に構わないよ、保健係よりこっちのがよかったし。じゃ、全員集まりましたって伝えてくるね」


 いちおう、口ではこう言って置く。


 うちの班の女子も点呼を取る為に集まってきた。本来、6人で一つの班になる以上、男子・女子はそれぞれ3人ずつになる。でもうちのクラスは37人。一人余る。それが入院で不参加の信田環さんになるはずだったのだけど、俺の頼みを聞いてうちの班に環さんを入れてもらい、かわりに隣の班が女子4人になっている。そのせいでこの班の女子は実質二人と言う事になってしまった。一緒に行動するメンバーが少なくなってしまったので申し訳なく思い、代わりと言ってはなんだけど面倒臭い仕事の多い班長は引き受けた。


 のに! なんで居るかなぁ。


「わたしには挨拶返してくれないの? 純君?」


 入院しているはずの環さんだった。


「入院してたんじゃなかったの?! 昨日もタマちゃんがお見舞いに行ってたはずだけど」

「口裏合わせてもらった! ドッキリ大成功」


 いやいやいや。ドッキリってレベルじゃないだろう。担任も「信田は欠席」っていってたのに。


「それに手術とかするんじゃなかったの? 旅行とかすぐに行って平気なの?」

「えーとね。割と平気だった。 お医者さんの先生にも元気って言われたし」


 なんなんだ? 病名とかは知らないけれど、環さんの御両親が病室の外で泣いているのを見たし、環さん本人から学校では当分会えないねって言われていたのに。それもぜんぶドッキリの仕込み? まさか!


 俺がジトーっとした不審の目で見ているのをどう思っているんだか、ニマッと笑うと女子達とハイタッチしに行く環さん。


「もしかして舞原君と……班長引き受け……どうしても一緒の班に……」


キャーキャーと黄色い声をあげながら、俺の方をチラチラ見てくる女子達。どうせ付きあってんのーとか言われてんだろ。


「そういえば、純君が班長で保険係が瀬良さん。ゴミ係が井上君だよね? わたしは何の係すればいいのかな?」

「信田さんは来れないかもしれなかったから、係は無いよ。さすがに欠席している間に押しつけたりはしてないよ~」

「そうなんだ。じゃあ、ぼく写真撮る係やるから、みんな変なポーズ取ってね」


 変なポーズってなによぅと笑う川井さん。カメラも構えてないのにバァァァン!とか言いながら重心がどこにあるのかわからないポーズを取り始める阿部君。

 でも、俺は今とんでもない事に気が付いた。

 環さん、「ぼく」って言った。一人称「わたし」だったよね?


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