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早朝の妖怪退治

 今日も早起き。

 ラジオ体操と朝食の後、少し暑いけど一つの椅子を半分こにして座って、タマちゃんと2人でのんびりゲーム。

 早起きして得た時間の最高の使い方だな!タマちゃんもだんだん朝型になってきたみたい。


 今日は日曜日だし、そもそもまだ日が昇ったばかりなので父親も母親も起きていない。だから、音量は小さくするけれど、テレビのチャンネルを取られる事も無い。完璧!完璧なゲームタイム!


 気分もいいので、俺の3連鎖で早くもパニックになりかけているタマちゃんに、余裕を持ってとどめをさす。


「わぁー!こんどは大だげき?!」

「タマちゃん、しー。まだみんな寝てます」

「はいごめんなさい」


 左手を離し、人差し指を口の前で立ててシーッと真似する。その隙に上まで「ぷよ」が積もってしまって俺の勝ちが確定したけれど、二階の方からミシミシ音がする。起しちゃったかな?


「あ、シーってしてる間にいつの間にか積もってたから、今のはノーカンだね」

「だめです。勝負は勝負だから、五センチずれなさい」


 えー、横暴だ―と小声で騒ぎながらも、コブシ一つ分ほどズレて座面を空けてくれる。

 これが二人でいろいろやって編みだした、二人で対戦ゲームするときにもっと楽しむ方法。つまりは罰ゲーム。


 賭けと言っても、二人ともお金なんてそんなに持ってないし、デコピンとかだと(タマちゃんが)痛いし。だから椅子の座る部分を奪い合うというルールにした。

 3回も負ければほとんど空気椅子なので結構ツライし、それ以上負けた場合は床に正座。


 ……実は空気椅子より正座の方が楽なのは内緒。


 次の勝負を始めて、階段状に「ぷよ」を積んで5連鎖を狙う。両側にドンドン積み上げてあっという間に画面の半分近くが埋まっているタマちゃん側の画面をチラ見して、勝負は非情なのだよと心の中で呟く。


 しかしタマちゃんは、さっき騒いだ事が気になるらしく、2階の方をしきりに気にしている。


「むぅ。家鳴りめ…」

「家鳴りって?」


 ポツリと呟きを聞いて思わず聞き返す。それって妖怪の名前じゃ無かったかな?


「うん。家をミシミシとかガタガタとか鳴らすだけの妖怪だよ。あんまり好きカッテにあそばせとくとママさんたち起きちゃうかな?って思って」


 そう言うとへにょりと眉をひそめたタマちゃんはすっと椅子から立ち上がり……天井の隅に殺虫剤シューシユー撒いたりしはじめた。

 おいおい害虫扱いかよ。


「効かなかった」

「いや、それ、ただの殺虫剤だし」

「嫌がらせにはなるよ。誰だって自分に向かってシューってされたら逃げるでしょ?」


 そりゃそうだけど。どうせ退治するなら金鳥の力じゃなくて、術とかのちからでやって欲しかった。


「なんかさ、結界を張る術とか、『破ぁ!』みたいな大技とか、そういうのはないの?」

「ないよ。虫とかの妖怪で人に取り付くようなのもいるけど、家鳴りはミシミシいうだけの無害なのだし。わざわざこういう無害なのには対抗策は誰も作ってないんじゃないかな。それに、そういう封じたり除けたりする術は人間のが詳しいでしょ?」


 あー。陰陽術とか、そういう人間が使う術もあるんだろうけど。俺に言われたって困る。


「タマちゃん、なんか攻撃する術って無いの?」

「じゅんはただの子狐に何を期待するのさ?」

「だって狐火とかって地味なんだもん」


んー、と腕を組んだタマちゃんは、地味と言われた事を否定する事も無く。最近やってるRPGゲームの攻略本を開くと、真空の刃で敵を攻撃する魔法を指さす。


「こういうのならあるよ」

「かまいたちか」

「呼んできて真空の鎌とか教えて貰う?」


 教えてもらって何とかなるものなのかな。鎌が手に付いたイタチなら体質というかなんというか、人間の俺には使えそうもない。

 いや、俺も狐の仲間だったっけ?どっちにしろカマイタチとは遠く離れてそう。

 ただ、手から火を出すのも楽しかったけど、真空の刃とか出せたらかなりカッコイイ。手から真空刃を飛ばす自分の姿を想像してみる。……かなりイイ。


「カマイタチってやっぱり三人で行動しているの?」

「もちろん」

「でっかい鎌とか持って?」

「もちろん。手がカマですから」


…やめておこう。部屋の中にでかい鎌もった妖怪がいるとか、あんまりだ。それが三人もいたらさすがに怖い。そもそも椅子が足りない。


 でも、ちょっとカッコいいな、とは思う。そんな技が使えるようになったら……あれ、何を斬るんだろ。人を斬ったり転ばせたり治したりっていうのは鎌鼬の仕事だし。家鳴り相手に使ったら天井に傷が付きそう。家の中では危なくて使えないし、表で使って人に当たったら危ない。あれ、使う機会がないぞ?


「カマイタチに術教えて貰ったとして、それって危なくない?」

「はものは危ないものです」


 そうだよね。危ないよね。


 刃物と言えば、婆ちゃんに「妖怪は金気を嫌う」って言われて爺ちゃんのお守り刀貰ってきてたっけ。

 両親を起こさないように、そーっと歩いて自分の部屋から短刀を持ってくる。

 前に教えて貰った「狐の窓」を指で組み、天井あたりを透かし見てみる。いたいた、イノシシだかアリクイだかみたいな、奇妙なモノが天井にぶら下がって柱を押したり引っ張ったりしてる。


 斬れたりすると危ないから、鞘から抜かないままで近付けて


「父親の35年ローンの結晶なんだ。あんまり家を痛ませるような事はしないであげてよ」


と声をかける。天井にぶら下がってる家鳴りは、ぬかみその匂いを嗅いだ時のタマちゃんみたいに、鼻に皺を寄せて逃げるように去って行った。

 うん、結構平和裏に解決できるもんだ。


 人がそんな風に家鳴り退治している間、勝手にゲームのポーズを解除して連鎖を組んでたタマちゃんには、本気モードで正座に追い込んでやった。


 本日の、ぷよぷよの戦績は15勝1敗。対・妖怪戦の戦績は2勝0敗。


タマちゃんは、「ぷよぷよ」のデモ画面でやっていた、一気に4色消すのを再現しようとして、欲しい色が来なくて自滅…という事ばかりしてるので弱いのです。

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