第32話『文化祭のあとで』
女装コンテストが終わったあと。
文化祭の校庭は、まだお祭りの熱気でいっぱいだった。
屋台の呼び声。
笑い声。
ステージの音楽。
玲奈はトロフィーを持って歩いていた。
「まだ信じられない…」
優勝。
自分が。
すると後ろから声がした。
「玲奈!」
振り向くと――
美咲が走ってきた。
「優勝おめでと!!」
ぎゅっと抱きつく。
玲奈は笑った。
「ありがとう…!」
そのあと翔太も来た。
「おめでとう」
玲奈は少し照れる。
「ありがと」
翔太はトロフィーを見る。
「すげーな」
「学校一かわいいってことじゃん」
玲奈は慌てる。
「そ、そんなことないよ!」
翔太は笑った。
「いやあるだろ」
玲奈の顔が赤くなる。
そこへ――
「ほんとだね」
玲央が後ろから来た。
まだ女装のままだった。
美咲が笑う。
「玲央さんまだその格好!」
玲央は肩をすくめた。
「着替えるタイミング逃した」
翔太が苦笑する。
「普通に綺麗だから困る」
玲央は玲奈を見る。
「改めて」
「優勝おめでとう」
玲奈は嬉しそうに言う。
「ありがとう、お兄ちゃん」
その時。
校内アナウンスが流れた。
「文化祭終了まであと30分です」
周りから「えー!」という声。
美咲が言う。
「最後回ろうよ!」
「文化祭!」
玲奈も頷く。
「うん!」
4人は校内を歩き始めた。
射的。
クレープ屋台。
お化け屋敷。
楽しい時間はあっという間だった。
そして――
夕方。
校庭の空はオレンジ色になっていた。
文化祭の片付けが始まっている。
玲奈は少し寂しそうに言った。
「終わっちゃうね…」
美咲も頷く。
「早すぎる」
玲央は時計を見る。
「俺そろそろ帰る」
玲奈は少し寂しそう。
「もう?」
玲央は笑った。
「また来るよ」
そして玲奈の頭を軽く撫でた。
「今日はほんとに可愛かった」
玲奈は顔を赤くする。
「お兄ちゃん…!」
玲央は翔太を見る。
「玲奈、頼むね」
翔太は少し照れながら答える。
「…はい」
玲央は満足そうに笑った。
「じゃあね」
そう言って帰っていった。
夕焼けの校庭。
玲奈と翔太、美咲の3人が残る。
少し静かな時間。
翔太が言った。
「玲奈」
「ん?」
翔太は少し迷ってから言う。
「今日さ」
「…ほんとに可愛かった」
玲奈の心臓がドキッとした。
「っ…」
顔が真っ赤になる。
美咲はニヤニヤしていた。
(これは…)
(何か起きそう)
文化祭が終わったあと。
玲奈と翔太の距離は――
少しずつ、近づいていた。




