第2話『秘密の転校生、注目の的』
翌日、颯は少し緊張しながらも、昨日の秘密共有が心の支えになっていることを感じていた。美月と交わした「私だけの秘密」という約束が、胸の奥を温かくしてくれる。
教室に入ると、早速視線を感じた。昨日よりも多くの女子が彼を見つめている。男子たちはまだ戸惑いの表情を浮かべていたが、その中で蓮は、眉をひそめながらも目を離さなかった。
「おはよう、颯くん」
美月の明るい声が颯を迎える。
「おはようございます」
颯は少し照れくさそうに答えた。制服のスカートは昨日よりも少し上手に着こなせた気がする。
授業が始まり、数学の時間。颯は手を挙げ、先生の質問に答える。声は柔らかく、でもはっきりと通る。クラスメイトの中には、思わず「すごい」と小さくつぶやく者もいた。
昼休み。教室に戻ると、颯は机に座ってお弁当を広げた。そのとき、突然女子たちの一人が声をかけてきた。
「颯くん、昨日のこと……すごいね。可愛いだけじゃなくて、なんか……かっこいい!」
颯は驚き、頬が少し赤くなる。秘密が知られてしまったのではないかと一瞬ドキリとしたが、その子は好意的な笑みを浮かべていた。美月もそっと微笑んでいる。
「ありがとう……でも、誰にも言わないでくださいね」
「うん、わかってる!」
その日、放課後には少しした騒動が起きる。学園の中庭で、颯が一人で休んでいると、男子たちが興味本位で近づいてきたのだ。
「おい、昨日の転校生、あれって女装趣味だろ?」
「本当かよ、あんなスカート履いて……」
颯の心臓は早鐘のように打つ。だが、そこへ美月が駆け寄る。
「やめて!颯くんはあなたたちのからかいの対象じゃない!」
美月の強い声に、男子たちは一瞬たじろぐ。颯も勇気を振り絞り、静かに立ち上がった。
「……僕は僕です。それ以上でも以下でもありません」
その言葉には、不思議な芯の強さがあった。男子たちは言葉を失い、少し距離を置く。颯の中に、少し自信が芽生えた瞬間だった。
その後、颯は美月と一緒に帰り道を歩く。夕日の光に照らされ、颯の茶色い髪が金色に光る。
「今日、すごく頑張ったね」
「美月さんがいてくれたから……ありがとうございます」
「ううん、当たり前だよ。友達なんだから」
颯は少し照れくさそうに笑う。秘密を抱えながらも、少しずつ心を開ける人ができたことが嬉しいのだ。
数日後、颯はクラスに少しずつ溶け込むようになった。女子たちは彼の可愛らしさや優しさに惹かれ、男子たちも少しずつ興味や尊敬の目を向けるようになる。そして、蓮もまた、最初は不思議がっていた颯のことを、心の奥で「認めなければ」と思い始めていた。
颯のスカートの裾に隠された秘密はまだクラス全体には知られていない。しかし、少しずつ日常の中で、颯の存在はクラスに新しい風を運び、友情や小さな恋の予感を芽生えさせていく――。
その夜、颯は布団の中でそっとつぶやいた。
「明日も、頑張ろう……自分らしく」
秘密を守りながらも、自分らしさを貫く転校生の新しい学園生活は、こうして静かに始まったのだった。




