第28話『玲奈の兄、登場』
文化祭まで、あと一日。
放課後の教室では、最後の準備が行われていた。
机を並べてカフェの形にしたり、看板を貼ったり、メニュー表を確認したり。
玲奈はエプロン姿で、スイーツの材料を整理していた。
(いよいよ明日なんだ……)
少し緊張していると――
ガラッ。
教室のドアが開いた。
「失礼しまーす」
知らない男子が顔を出した。
背が高く、髪は少し長め。
整った顔立ちで、どこか中性的な雰囲気がある。
女子たちがざわついた。
「誰?」 「イケメン…」
その男子は教室を見回す。
そして――
玲奈を見つけた。
「玲奈」
玲奈は振り向く。
「え?」
そして目を見開いた。
「……お兄ちゃん!?」
教室がざわつく。
「え!?」 「お兄ちゃん!?」
男子は笑った。
「久しぶり」
玲奈の兄――
**玲央**だった。
玲奈は慌てて近づく。
「どうしたの!?」
玲央は肩をすくめる。
「母さんから聞いた」
「文化祭で女装コンテスト出るんだって?」
玲奈は少し恥ずかしそうに頷いた。
「う、うん……」
美咲が興味津々で聞く。
「えっと…お兄さん?」
玲央は軽く頭を下げた。
「玲奈の兄、玲央です」
女子たちがざわつく。
「兄妹似てる!」 「美形兄妹!」
玲央は少し笑った。
「まあ…実は俺も」
「女装好きなんだ」
教室が静まり返る。
「え?」
玲奈がびっくりする。
「お兄ちゃん、それ言うの!?」
玲央は普通に言った。
「モデルやってるし」
「女装モデル」
「ええええ!?」
教室が一気に騒ぎになる。
美咲が目を輝かせる。
「モデル!?」
玲央はスマホを見せた。
そこには――
ドレスを着て雑誌に載っている玲央の写真。
まるで本物の女性モデルみたいだった。
女子たちが叫ぶ。
「すご!!」 「綺麗!!」
玲奈は少し驚いた顔をした。
「お兄ちゃん…相変わらずすごい」
玲央は玲奈を見て言った。
「で?」
「衣装は?」
玲奈は少し照れながら言う。
「あるけど……」
「見せて」
数分後。
家庭科室。
玲奈は女装コンテスト用ドレスを着て出てきた。
白とピンクのフリルドレス。
メイクも少ししている。
玲央は数秒見て――
微笑んだ。
「可愛い」
玲奈は顔が赤くなる。
「ほ、ほんと?」
玲央は頷く。
「うん」
「普通に優勝狙える」
その時。
家庭科室のドアが開いた。
翔太だった。
「おーい」
そして玲央を見る。
「……誰?」
玲奈が言う。
「私のお兄ちゃん」
翔太は驚いた。
「兄!?」
玲央は翔太を見る。
「君が翔太くん?」
翔太は少し警戒した。
「……なんで名前知ってる」
玲央は笑った。
「玲奈から聞いた」
そして少し意味ありげに言う。
「玲奈のこと、よろしくね」
翔太は一瞬言葉に詰まった。
玲奈は真っ赤になる。
「お兄ちゃん!!」
家庭科室は笑い声でいっぱいになった。
文化祭まで――
あと一日。
玲奈の大切な人たちが、
少しずつ集まり始めていた。




