第23話『初めてのメイク練習』
文化祭まで、あと六日。
放課後の教室では、文化祭の準備が続いていた。
段ボールで作った看板。
色紙の飾り。
スイーツカフェのメニュー表。
教室はまるで工作室みたいだった。
その中で――
玲奈は椅子に座らされていた。
机の上には、化粧ポーチ。
ファンデーション。
アイシャドウ。
リップ。
美咲が腕まくりして言った。
「よし!」
「玲奈のメイク練習始めるよ!」
玲奈はびっくりした。
「えっ!?」
「め、メイク!?」
周りの女子たちも集まってくる。
「玲奈メイクしたら絶対可愛い」 「文化祭本番の練習!」
玲奈は少し緊張していた。
「わ、私メイクしたことない……」
美咲が笑う。
「大丈夫」
「私に任せて」
そう言って玲奈の前髪をピンで留めた。
「まずファンデ」
スポンジで頬にぽんぽん塗る。
玲奈はくすぐったそうに笑った。
「ちょっとくすぐったい」
「動かない!」
美咲は真剣だった。
次にアイシャドウ。
「目閉じて」
玲奈はゆっくり目を閉じる。
柔らかい筆がまぶたをなぞる。
「玲奈、まつ毛長い」
「そう?」
「羨ましい」
最後にリップ。
「はい、完成!」
玲奈はゆっくり鏡を見た。
「……え?」
そこには――
いつもよりずっと女の子らしい自分。
頬がほんのりピンク。
目元が優しい印象になっている。
玲奈は思わず言った。
「これ……私?」
女子たちが笑う。
「当たり前!」
「可愛い!」
玲奈は少し照れた。
その時。
ガラッ。
教室のドアが開いた。
「おーい」
入ってきたのは翔太だった。
そして玲奈を見る。
「……」
一瞬で固まる。
玲奈は慌てた。
「え、えっと……」
翔太は数秒黙っていた。
美咲がニヤニヤしながら言う。
「どう?」
「玲奈のメイク」
翔太は目を逸らした。
「……」
それから小さく言った。
「普通に」
「可愛い」
教室が一瞬静まり返る。
次の瞬間――
「きゃーーー!!」
女子たちが大騒ぎした。
「翔太が可愛いって言った!」 「奇跡!」
翔太は慌てた。
「うるせーよ!」
玲奈は顔が真っ赤だった。
でも胸の奥が少し温かい。
翔太は机の上のメニュー表を取る。
「文化祭準備だろ」
そして玲奈をちらっと見る。
「本番」
「そのメイクで出ろよ」
そう言って教室を出ていった。
美咲がニヤニヤしていた。
「玲奈」
「うん?」
「翔太、完全に意識してるね」
玲奈は慌てた。
「ち、違うよ!」
でも心臓がドキドキしていた。
文化祭まで――
あと六日。
玲奈は少しずつ、
本当のステージへ近づいていた。




