第20話『手作りの衣装』
文化祭まで、あと十日。
放課後の家庭科室は、いつもよりにぎやかだった。
ミシンの音。
布を切るハサミの音。
そして甘いお菓子の匂い。
玲奈たちのクラスは、文化祭で
**「スイーツカフェ」**を出すことになっていた。
そしてその衣装作りを手伝ってくれているのが――
家庭科部だった。
「はい、この布持って!」
「こっち縫うね!」
家庭科部の女子たちは手際よく動いている。
机の上には、フリルのついたエプロンやカチューシャが並んでいた。
まるでメイドカフェみたいな可愛い衣装。
玲奈は少し緊張しながら布を持っていた。
「す、すごい……」
すると家庭科部の部長が笑った。
「文化祭の衣装作るの好きなんだよね」
「毎年やってるから」
美咲が言う。
「今年は玲奈がいるから、特別可愛いの作ろう!」
玲奈は驚いた。
「え?」
すると、机の上に一枚のスケッチが置かれる。
そこには――
ふわっと広がるスカート。
リボン。
レース。
大きなフリル。
とても可愛いワンピースのデザインだった。
「これが玲奈の女装コンテスト用ドレス!」
玲奈は目を丸くした。
「わ、私の?」
「もちろん!」
家庭科部の女子が言う。
「玲奈、モデル体型だから」
「絶対似合うよ!」
玲奈は顔を赤くした。
「そ、そんなことないよ……」
すると美咲が玲奈の肩に手を置く。
「ある」
「めちゃくちゃある」
周りの女子たちも頷く。
「うん」 「玲奈スタイルいいもん」
玲奈は恥ずかしくて俯いた。
その時。
ガラッ。
家庭科室のドアが開いた。
「おーい」
顔を出したのは――
翔太だった。
「先生、文化祭の備品取りに……」
そこまで言って止まる。
家庭科室の中を見て、少し驚いた顔をした。
女子だらけ。
そしてその中心にいる玲奈。
玲奈と目が合う。
「……」
玲奈は少し緊張した。
美咲が言う。
「あ、翔太」
「ちょうどいい」
「玲奈の衣装どう思う?」
そう言ってスケッチを見せる。
翔太はそれを見る。
数秒沈黙。
そして言った。
「……可愛いじゃん」
玲奈はびっくりした。
「え?」
翔太は玲奈をちらっと見る。
「これ着てステージ出るんだろ?」
「う、うん」
翔太は肩をすくめた。
「じゃあ目立つな」
そして少し笑う。
「優勝候補じゃん」
家庭科部の女子たちがざわつく。
「え、翔太が褒めた!?」
「珍しくない?」
翔太は少し照れたように言う。
「いや、普通に似合いそうだから」
それだけ言うと、棚から箱を取った。
帰る前に一言。
「玲奈」
「え?」
「衣装出来たら見せろよ」
「えっ」
翔太はニヤッと笑う。
「審査してやる」
そう言って家庭科室を出ていった。
部屋の中は一瞬静まり返り――
次の瞬間。
「きゃーーー!!」
女子たちが騒ぎ出した。
「今の聞いた!?」 「玲奈の衣装見たいって!」
美咲がニヤニヤする。
「絶対意識してるじゃん」
玲奈は真っ赤になった。
「ち、違うよ!」
でも胸の奥が少しドキドキしていた。
家庭科部の部長が笑う。
「よーし」
「玲奈のドレス、気合い入れて作るよ!」
「文化祭で一番可愛くする!」
ミシンの音がまた響き始めた。
文化祭まで――
あと九日。
玲奈の衣装作りと、
少しずつ変わっていく恋の空気が始まっていた。




