第18話『玲奈、初めてのメイク』
文化祭まで、あと二週間。
放課後の教室は、いつも以上に賑やかだった。
スイーツカフェの準備も進んでいるが、今日はもう一つ大事なことがある。
――女装コンテストの準備だ。
「よし!」
美咲が机をポンと叩いた。
「今日は玲奈のメイク練習!」
「おー!」
女子たちが一斉に集まってくる。
「え、ちょっと待って」
玲奈は少し慌てていた。
「ここでやるの?」
「もちろん」
由奈が笑う。
「女子更衣室だと狭いし」
机の上には、たくさんのメイク道具が並んでいた。
ファンデーション、アイシャドウ、リップ、ブラシ。
「すごい……」
玲奈は思わず言った。
「こんなにあるんだ」
美咲が笑う。
「女の子の世界へようこそ」
椅子に座らされる玲奈。
「動かないでね」
「う、うん」
まずはベースメイク。
由奈が言う。
「肌きれいだから薄くでいいね」
ブラシが頬に触れる。
ふわっとした感触。
「くすぐったい……」
玲奈は少し笑った。
次はアイメイク。
美咲が真剣な顔で言う。
「目閉じて」
「うん」
まぶたに優しく触れるブラシ。
「玲奈、目大きいから映えるね」
「ほんとだ」
「コンテスト強いかも」
玲奈は少し恥ずかしくなる。
「そんなことないよ……」
最後にリップ。
薄いピンク色。
「完成!」
美咲が鏡を差し出した。
「見てみて」
玲奈はゆっくり鏡を見る。
そこには――
少し大人っぽくなった自分がいた。
「……」
言葉が出ない。
「どう?」
由奈が聞く。
玲奈は小さく言った。
「……すごい」
いつもの自分と、少し違う。
でも――
どこか自然だった。
そのとき、男子たちが教室のドアから顔を出した。
「まだー?」
「見せろー」
「ダメ!」
女子たちが一斉に止める。
「今は準備中!」
でも美咲がニヤッと笑った。
「ちょっとだけ」
玲奈はドキドキしていた。
「いいの?」
「うん」
男子たちが入ってくる。
そして玲奈を見ると――
「……」
一瞬、静まり返った。
「……え?」
「かわいい」
「普通に女子じゃん」
玲奈の顔が一気に赤くなる。
「やめて!」
男子が言う。
「優勝いけるぞ」
「絶対」
女子たちも盛り上がる。
「衣装も作ろう!」
「ヘアアレンジ!」
玲奈は笑いながら言った。
「なんか……大イベントになってきた」
美咲が言う。
「文化祭のスターだから」
帰り道。
夕方の空が少しオレンジ色になっていた。
「玲奈」
「うん?」
「今日どうだった?」
玲奈は少し考えてから言った。
「最初は緊張したけど……」
そして小さく笑う。
「ちょっと楽しかった」
美咲も笑った。
「でしょ」
文化祭まで、あと二週間。
玲奈の挑戦は、まだ始まったばかりだった。




