第17話『女装コンテストに出ろ!?』
文化祭まで、あと三週間。
放課後の教室では、スイーツカフェの準備が着々と進んでいた。
「テーブルクロスはこの色がいい!」
「メニュー表どうする?」
「パンケーキ三種類にしよう!」
クラスのみんなが、机を囲んで話し合っている。
玲奈もメニュー担当として、ノートにアイデアを書いていた。
「チョコバナナパンケーキ……」
ペンを動かしながら、少し楽しそうに考える。
「あと、いちごクリーム……」
そのとき、教室のドアがガラッと開いた。
「文化祭実行委員でーす!」
元気な声が響く。
クラスのみんなが顔を上げた。
実行委員の女子が紙を持っていた。
「各クラスから一人、出場者を出してください!」
「なに?」
「どんなイベント?」
女子は大きく言った。
「今年の目玉イベント!」
紙を掲げる。
女装コンテスト
その瞬間、教室が爆笑に包まれた。
「なにそれ!」
「面白そう!」
「絶対ウケるやつ!」
男子たちも騒ぎ出す。
「お前出ろよ!」
「いやお前だろ!」
玲奈はその様子を見ながら、小さく笑っていた。
(楽しそうだな)
まさか――
自分が関係するとは思っていなかった。
そのとき。
美咲が、ふっと玲奈を見た。
数秒の沈黙。
美咲がポツリと言う。
「……玲奈じゃない?」
一瞬で教室が静かになった。
「……え?」
玲奈は固まる。
次の瞬間。
「それだ!」
「確かに!」
「玲奈が一番かわいい!」
クラスが一斉に盛り上がった。
「ちょ、ちょっと待って!」
玲奈は慌てて立ち上がる。
「わ、私!?」
由奈も笑いながら言う。
「だって玲奈、普段からスカートだし」
「もう完成してるじゃん」
男子も言う。
「優勝いけるぞ」
「絶対強い」
玲奈は顔を真っ赤にした。
「無理無理無理!」
美咲が笑う。
「そんなに嫌?」
玲奈は少し言葉に詰まる。
「嫌っていうか……」
ステージ。
大勢の人。
視線。
想像するだけでドキドキする。
クラス委員が言う。
「玲奈、お願い!」
「クラス代表!」
女子たちも言う。
「応援する!」
「絶対かわいい!」
玲奈は困った顔で美咲を見る。
「どうしよう……」
美咲は少し考えてから言った。
「無理なら断っていいよ」
「……」
「でも」
美咲は少しニヤッとする。
「見てみたいかも」
玲奈は思わず笑ってしまった。
「もう……」
教室のみんなが期待の目で見ている。
玲奈は深呼吸した。
「……もし」
「もし?」
「クラスのみんなが手伝ってくれるなら」
一瞬静かになる。
次の瞬間。
「やったー!!」
教室が大歓声になった。
「衣装作ろう!」
「メイクする!」
「ヘアセット!」
男子まで盛り上がる。
「ポスター作る!」
「応援団やる!」
玲奈は少し呆れながら笑った。
「なんか大変なことになった……」
美咲が肩を叩く。
「文化祭スターだね」
玲奈は窓の外を見る。
夕方の空が広がっていた。
(大丈夫かな)
でも――
少しだけ。
ワクワクしている自分もいた。
こうして。
玲奈の文化祭は、思いもよらない方向へ進み始めた。
そして――
このあと、玲奈は人生で初めての本格メイクを体験することになる。




