【第二章:水辺の呼吸】
狙撃銃。安くて、使い慣れた銃。スコープとサプレッサーをつけたそれは、見た目以上に静かで、遠くまで真っすぐ飛ぶ。
レンジファインダーで距離を測る。 400メートル少々。ゼロインは300。少し上を狙えば、届く。
風は?
波打ち際を見て、判断する。問題なし。
──いた。
木の陰、味方と談笑しているのか、完全に油断した動きのプレイヤーが一人いた。
見たところ、サブマシンガンの突撃兵が隊列を乱していた。
少し離れた位置に長物を背負ってハンドガンを構えた狙撃兵、アサルトライフルに倍率スコープが乗った1人が側を警戒している。観測手を兼ねた護衛だろう。
引き金を引いた。
音は草と波に吸われ、敵の頭だけが弾ける。
すぐには気づかれない。
残りの二人、観測者と狙撃手。
ソワソワと辺りを警戒し始めるも、まだ緊張感は薄い。
狙撃手は、味方がどこかで遊んで死んだだけとでも思っているのか。
私は観測者に狙いを定める。
一発。
観測者が崩れ落ちる。
さすがに狙撃手は遮蔽物に隠れた。
だが、逃げる方向は限られている。
私は、その視線の先、逃走ルートにスコープを移動させる。
待つのは慣れている。
私は、見られるのは苦手だが、見ることには慣れているのだ。
ゆっくり観察しながら、私はデイリーミッションを終えたらすぐに引き返した。