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本日3本投稿の予定です。
「朧っ!!?」
「ぐっ······!?」
冷たい床に、赤い血がポタポタと落ちた。
朧が脇腹を押さえてその場に膝をつく。
「朧!!」
麗羅がすがるように朧の身体を支える。
「しっかりして!朧!」
「う、ぐっ······!」
「よくも突き飛ばしてくれたじゃないか。朧君」
麗羅と朧、二人の前に立つリューゲ。その手には黒い回転式の拳銃が握られていた。銃口からは薄い煙が上っている。
「まったく。そこの馬鹿女といい、君といい、どうして僕の回りには邪魔者ばかり居るんだろうね。本当に苛立って仕方ないよ」
「くっ······」
「朧っ、血が······」
麗羅もハンカチを出して朧の腹部を圧迫する。二人の手には血が溢れていた。
「そ、そんな······拳銃なんかで私達は······」
「もちろん、これはただの拳銃なんかじゃないよ。僕らの組織が作っている対冥徒用の特別銃さ。弾は獄卒用にしてある。これで撃たれれば獄卒でも致命傷を負うのさ」
「ぐっ、がはっ······!」
「朧っ!!」
霊羅を庇うように身をよじりながら、朧はリューゲを睨みつけた。
「やはりお前は、最近話題になっている犯罪組織の······」
「ククク。今までよくも追いかけ回してくれたね朧君。君の執拗な監視には流石にイライラさせられたが、今少しスッキリしたよ」
カリ、カリ、とシリンダーを回すリューゲ。
「誰の指図だい?所長か?」
「······」
「な、何の話をしてるの?朧?」
「僕から教えてあげよう。朧君はここ数ヶ月の間、僕の事をつけ回していてね。多分、ここの更正所が密売ルートの一つで、しかも僕が関わっていると感付いての監視だったんだろう。違うかい?」
「そう、だ。ぐっ······」
苦痛に顔を歪めながらも、リューゲへ噛みつくように答える朧。
「お前の怪しい行動記録や、不審な罪人の移動データから、ここが犯罪のルートにされていると睨んだ所長が、俺に秘かに命令していたんだ。なかなか尻尾を出さなかったが······やっと本性を表したな······!」
「おっと、動くなよ。動いたらそっちの大事な霊羅ちゃんを撃つ事になる」
「この下衆がっ!ぐぅっ······!」
「?!朧っ!」
「がはっ!」
吐血する朧。床が血に汚され、苦し気な息遣いが空気を濁らせる。
「朧っ!動かないで!すぐに血を止めないとっ!」
「はあっ、はあっ、ぐっ······れ、麗羅、お前は逃げ、ろっ!」
「な、何言ってるの?!そんな事出来る訳ないじゃん!」
「その通り。そんな事は出来ない。させられない。なんせ君らをこのまま返す事は出来ないからね」
リューゲは勝ち誇ったような笑みで朧を見下ろしていた。
「しかし、どうしてここが分かったんだい朧君。麗羅ちゃんはバレずに運び出したはずなのに」
「はあっ、はあっ、お、お前の行動パターンは把握していたからな。ここがお前の活動拠点の一つだと言うのも見当がついてたんだ······」
「へえ。なるほどねえ。なら、わざわざ殺されに来てくれて助かったよ。これで口封じが出来る」
「無駄だぞっ!さっき、麗羅に頼まれて監視モニターの映像を調べていた時に、お前が監獄エリアを何度も行き来してる映像を集めておいた!今頃そのデータが所長のデスクに届いている!」
「······ククク、ハッハッハッハッ!」
途端にリューゲは笑い出し、額を押さえた。
「なるほど、なら仕方ない。残念だが僕も稼ぎ場所だったここから逃げざるを得ないという訳だ。だが、朧君──」
邪悪な笑いが朧の前に浮かぶ。
「そこまでやっときながら、今ここには君1人だけなのは何故かな?」
「っ······」
「当ててあげよう。恐らく、君は僕が今回の騒動の犯人だと分かった瞬間、麗羅ちゃんの身の危険を察知してなりふり構わず飛び出したんだ。他の者に報告するという大事な手を打たずにね。そして、焦燥に駆られる中、この物置小屋の事を思い出して慌ててやってきた。君の予想通り、ギリギリピンチのところでなんとか間に合った訳だ」
そこまで言ってからリューゲはさらに高笑いを響かせた。
「ハッハッハッハッ!!なんてマヌケな話だ!たかが能天気な半人前の小娘1人のために致命的なミスを犯していたなんてね!もっと冷静でいれば今頃僕を捕らえられていたかもしれないのに!」
「貴様っ······!」
「そ、そんな······朧、私のせいで······」
「麗羅、お前のせいなんかじゃないっ······」
「でも······」
「さあ、余興はここまで。もう時間が無さそうだ」
再び撃鉄の起きる冷たい音がした。それはまるで死神の鎌が持ち上がるように、麗羅達に絶望を与えた。
「計画が大きく狂ってしまったが仕方ない。今頃、あの悪女どもが脱獄でも起こしていて混乱しているだろう。僕はその混乱に乗じて逃げるとしよう。やれやれ、麗羅ちゃんを売り飛ばして朧の臓器も販売すれば少しは稼げたんだが······まあいい」
ゆっくりと銃口が上がる。
「じゃあ、まずは朧君からだ」
「止めて!!」
冷笑と悲鳴が交差したその時だった。
『あら、盛り上がってるわねえ』
『へえ、グッドタイミングじゃん』
『わ~、ドラマチック~』
「!!」
「なに?」
「っ······!」
何者かが──いや、三つの人影が入り口に立っていた。
お疲れ様です。次話に続きます。




