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本日3本投稿の予定です。

 

「どうして?どうしてとは何に対してのどうして、かな?」



 リューゲはうっすらと笑った。


 その笑みは、麗羅が今までずっと見てきた笑顔とは違っていた。


 残忍で悪意に満ちていて、見下すような笑みであった。



「どうして僕がここに居るか?かい?それとも、どうして資材を盗んでいたか、かい?それとも、どうしてあの悪女達を陥れたかかい?」

「············リューゲ、先輩······」



 麗羅は悲痛な表情を歪めて、目を逸らした。


 調査の結果、資材室からの不正な材料流出のタイミングと一致して出入りしていたのはリューゲだけであった。

 その事実を知った時、麗羅の思考は止まった。

 信じられなかったのだ。憧れであり、それ以外にも特別な想いを寄せていた先輩が、今回の事件の犯人だとは。


 しかし、同時に麗羅の頭の中には思い当たる節が多くあったのだ。



 例え、資材室から材料を盗み出す事が出来ても、次の課題が残る。


 そう、その『盗んだ材料をどうやって三令嬢の牢屋の中へ配置するか』だ。


 その課題を自然にクリア出来る者は限られている。


 まずは、担当教官である麗羅。

 監獄を見張っている看守。

 そして、法執行の獄卒。



 リューゲは更正教官の獄卒であると同時に法執行の獄卒でもある。


 資材室からの材料の入手、そして牢屋への立ち入り。

 この両方を怪しまれずに成し遂げられる人物はリューゲ含めてほんの数人。


 その中でさらに、麗羅の指導内容と三人の令嬢の評判や行動スケジュールまで把握しているのは彼一人だけだろう。




 リューゲは麗羅の横に置いてある机の上にゆっくり座った。



「まず初めに言っておくと、僕は別にあの三人に恨みがある訳じゃない。朧みたいに罪人に対しての嫌悪感がある訳でもない。まあ、要するに。麗羅ちゃんの担当罪人を狙ったのには別の理由があるのさ」

「別の、理由·········?」


 未だにこの現実を受け入れられていない麗羅が呆然と呟やいてリューゲを見る。

 リューゲはニヤリと笑った。


「商品価値があると思ったからさ。罪人とは言え、あの三人はなかなか強い魂を持っている。そういう亡者は解体すると大量のマナを産出するからね」

「なんの······一体······何の話を、しているんですか?」

「おや?ピンっとこないかい?駄目だな~、麗羅ちゃんは~。ちゃんとニュースとか見てないでしょ。そんなんだから半人前なんだよ?」


 リューゲは鼻先で笑うと、悠然とした体で語り始めた。



「僕はとある犯罪シンジゲートの一員でね。まあ、平たく言えばギャングとかマフィアみたいなものさ。そこは違法マナと禁忌宝具を主に取り扱ってる組織でね」



 違法マナとは、亡者などの魂を特殊な術で解体、消滅させる事によって得られるマナの事である。これは固く禁止された悪行でもある。


 そもそもマナとは、全ての生命の魂に宿ったエネルギーの事であり、感情が揺れる心の動きなどによって魂から生成されるのだ。

 地獄も天界も魔界も、全ての世界はこのマナのエネルギーによって成り立っているため、これは万国共通通貨のように重宝されている。


 しかし、通常の魂の活動では、生成されるマナの量は微々たるもの。


 それを強引な手段で無理矢理に抽出する事で獲得するマナを違法マナと呼ぶのである。



「ところがここ最近。僕らの“製錬所”が天界の断罪天使や魔界の連邦捜査官に摘発されたせいで手痛い打撃を受けてしまってね。お陰で金策に苦労しているんだよ」

「·········それで、あの三人を?」

「うん。少しでも()()になればと考えてね。まあ、僕のここでの()()はまた別なんだけどね」

「なぜ······なぜ、あの三人を?」

「言ったろう?商品価値がありそうだからって。それに、密売するのには楽そうだったからね」


 言ってる意味が分からず目を白黒させている麗羅を嘲笑いながらリューゲは話を続けた。



「僕はここで獄卒をやる傍ら、本業をしていてね。それはマナ霊の材料であるマナ玉の横流しさ。まあ、はっきり言って大した稼ぎにはならないけど安定して獲得出来るからね。でね、ついでに不定期的に亡者の密売をやってるんだよ」

「亡者の密売ですって?」

「そう。更正指導を受けてる罪人の中からめぼしい奴をピックアップして悪罪人に仕立てあげる。僕は法執行の獄卒だからね。僕が審査して烙印を押せば大抵の亡者は悪罪人になる。そして、その悪罪人を更迭中に拉致して僕らの各所拠点へと出荷。めでたくマナを抽出出来るって訳さ」


 リューゲの口から軽々しく出る言葉の一つ一つに、霊麗は言葉を失った。



 魂の強引なマナ化が禁止されている理由は、解体された魂は二度と転生出来ないという非道な結末があるからだ。これは、言わば本当の意味での死、永遠の消失を意味する。



「周囲からのあの三人に対する信頼はまさに理想的だったからねえ。彼女らが無実の罪で悪罪人にされても、誰も不思議に思わないだろうって考えた訳さ。事実、周りはみんなあの悪女達を疑っていたしね。ただ一人を除いて」


 リューゲは冷たく目を細めて麗羅を見下ろした。


「まったく。半人前の出来損ないのくせに、よくもしゃしゃり出てくれたね。君が勝手に犯人探しなんかしたせいで僕の計画が狂ってしまった。念のために君を探しておいて良かったよ。資材室の在庫数と獄卒の業務報告から僕の事を導き出した時には流石に腸が煮え繰り返ったもんさ」



 リューゲは麗羅の頬をはたいた。


「っ······!!」

「僕の事を慕ってるならそれ相応の行動くらいしてくれよな」




 悲しみに揺れる麗羅の瞳には見向きもせずにリューゲは近くの箱を漁り出した。



「さて。イレギュラーが多すぎて少し強引な方法にはなりそうだが、なんとか上手く事を修められそうだ。あとはあの愚かな三人の女どもを始末するだけだな」

「っ!!止めてっ!あの三人は何も悪くないっ!もうすぐ改心しそうなのっ!お願いだからあの子達の努力を踏みにじらないで!」


 麗羅の切実な叫びに、リューゲは不気味な笑みを振り向けて応えた。


「おや。本当にそう思っているのかい?麗羅ちゃん。君の頭のおめでたさは神具級だね。あんまし馬鹿すぎて泣けてくるよ。残酷な事実も知らずに可哀想だ」

「えっ······残酷な事実?」



 聞き返す麗羅に、リューゲはまた邪悪に笑った。



「教えてあげようか?面白い事を」


お疲れ様です。次話に続きます。

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