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「はっ、はっ、はっ、はっ!」
教室に戻ってきた。
急いで中に入るけど誰も居ない。
「どこに······」
「あ、麗羅さん」
ふいに後ろから声をかけられた。看守さんだ。
「担当されている罪人達ですが、先程リューゲさんより通達があり、今は牢獄に戻されています」
「分かりました」
急いで牢獄に向かう。
監獄棟に着き、三人が収容されている区画に入る。
「更正教官の麗羅です!」
身分証を看守さんにつきつけながら、速まる足に付き合う。
「みんな!」
「あら、遅かったわねえ」
「ほら、やっぱり来た」
「予想通りだね」
ヴィセ。ベーゼ。マール。
三人の令嬢は檻の向こうで変わらず不敵に笑っていた。
この憎たらしい生意気な笑顔に、何故か少しホッとする私が居る。
いや、それより──
「三人ともっ······みんなは······貴女達は······」
「あら、何かしら?」
「······」
「言いたい事があるのなら言いなさいな」
私は······私は──
「······みんな、事情は聞いた?こうやって拘留されている理由を」
「ええ、聞いたわよ」
「あたしら容疑者なんでしょ?」
「しばらく大人しくしてろって言われたー」
事情は知ってるみたい。でも、三人はいたって平静で自然だ。焦ってもなければ怒ってもないし、ましてや悲しんでもない。
「それで?私達の処分はどうなつたのかしら?」
「場合によっちゃ黙ってないけど」
「どうだったー?」
「······」
私の力じゃ、三人の心情を知る術はない。
果たして三人は本当に悪事を働いたのか、否か。
働いていたとして、その目的は本当に脱獄だったのだろうか。
聞きたい。知りたい。真実を。
だけど······だけど、私は──
「············大丈夫。まだ保留中だよ。すぐさま悪罪人にされる事はないよ」
「あら、賢明ね」
「だけど法執行の獄卒が調査中で、しかも方針としては悪罪人にするべきだって言ってる。ほっとけば、多分······」
「ふーん」
「でもっ!大丈夫っ!」
私のやるべき事は決まってる。
「私が貴女達の潔白を証明してみせる!絶対に濡れ衣を晴らしてみせる!」
『··················』
三人は顔を見合わせて私に目を向けた。
いつもの嘲笑じみた表情でも、ふてぶてしい顔でもない。
ただ、何かをじっと見ていた。
「麗羅。貴女の言い分だと私達が無実だと確定してるみたいだけど?」
「うん。私はそう思ってる」
「で?その根拠は?もし、あたしがあんたや獄卒の立場なら疑って当然だけど?」
「根拠なんてないよ」
「ふーん?じゃあ、なんで?」
「信じてるから。みんなの事。三人はそんなに悪い人じゃない。もう、以前とは違うって信じてるから」
「それが貴女の根拠?」
「うん。私の······絶対的な自信だよ」
『······』
私はやっぱり能天気で馬鹿なのかもしれない。
普通なら、罪人の事なんて疑ってかかるのが正しいのかもしれない。リューゲ先輩の言うように、朧の考えるように。
でも。
でも、私から『信じる』を取ったら、この子達にしてあげられる事なんて何も無いじゃないか。
私は半人前だ。経験も技術もない。
だからこそ、自分の中のこの気持ちだけは譲っちゃいけないんだ。
決定的な証拠が出るその時まで、私は三人を信じる。
「待っててねみんな。きっと私が疑いを晴らしてみせるから!」
「どうやってだい?」
「!!」
声に振り向くと、リューゲ先輩がこっちに来ているところだった。
「リューゲ先輩」
「麗羅ちゃん。君が何をしようとしているかは分からないけど、止めた方がいい」
「······どうしてですか?」
「君が傷つくからだ。もし、君の希望が失くなってしまった時。その時、君がどんなに傷つくか······僕はそんな悲しい未來は見たくない。後輩が傷つく姿はね」
「先輩······」
その気持ちは嬉しい。
でも、今の私はその心配よりも欲しいものがあります。
それは、私を信じてくれる気持ちです。
「ありがとうございます、リューゲ先輩」
「分かってくれたか──」
「でも、大丈夫です!私は傷ついたりしません!」
「え?」
何故なら、そんな事にはならないからです。そう、三人は絶対にそんな事してません。
「私は信じてます。あとはそれを証明するだけです!ですので、もう少し待っていて下さい!」
「麗羅ちゃん?」
「こうしちゃ、ですね。では、行ってきます!」
「あ、待っ──」
ここに来て良かった。なんだか踏ん切りがついた。
きっと私は間違ってない。必ず、この事件を解決出来るはずだ。
「よーし!」
監獄棟から出た。
さて、まずはどうしようか。
何も策も無しに動いたってしょうがない。ここは冷静に手を打たなくちゃ。
「あれ?麗羅?」
「ん?」
考え込んでいたところに、シャーリーがやってきた。隣に朧も居る。
「あ、二人とも。どうしたの?」
「どうしたの、はこっちのセリフよ。あんた急に走って行っちゃうし、どこにも見当たらないしで」
「ごめん、ごめん。じっとしてられなくて」
「で?お前は何をしてたんだ?」
「えっとね──」
現状を簡単に話し、今の私に出来る事、やりたい事を説明した。
「だから、私はあの三人が無実だという証拠を探すの」
「そこまでする価値があの三人にあると思っているのか?」
「価値とかじゃないの。私がそうしたいの」
「······はぁ。お前って強情な所もチャームポイントだよな」
「え?」
朧は苦笑いしていた。でも、笑っていた。
「そういうとこ、昔から変わらないな」
「そう、かな」
「わかった。俺も手伝う」
「えっ?!いいの?」
「お前の望む結果にしろ、そうでないにしろ、これは調べなきゃいけない事だからな」
「朧······」
「オホンッ。あのー、大変失礼いたしますが、あたしも居る事をお忘れなく」
「あ、ごめん、シャーリー。え?じゃあ、シャーリーも?」
「水くさい事言いっこなしよ。あたしに任せなさい。この名探偵に」
二人とも手伝ってくれる。こんなに心強い事はない。
「よし!じゃあ、時間もないし早速行こう!」
お疲れ様です。次話に続きます。




