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 何日か平和な日々が続いた。




「お~っ。今日は午前中だけで300個いけたね!」


 しばらくは道徳の授業とマナ霊作りの日を繰り返している。


 また近い内に地獄や天国の見学には行く予定だけど、今はマナ霊の需要がとんでもない事になっているので、こっちを優先してやっていきたい。



「はい、午前はこんなもんでいいでしょう。午後は道徳にするか、作業の続きにするか。うーん、悩ましいね」

「ティータイムにしようよ」

「それはまだ早い。今週末に設ける予定なのでその日までのお楽しみにしましょう」

「待ち遠しいわね」


「はい、では一旦休憩。みんな、また午後にね」



 昼休み休憩の鐘の音と共に私も事務所へと向かう。



「ふう。なんだかんだ言って最近は平和だなあ。この調子なら、更正もそんなに遠くはないんじゃないのかな」



 もし、あの三人を更正して改心させたら、私は表彰されるかもしれない。


 凄腕ルーキー、悪役令嬢を更正!その出来すぎるキャリアウーマンの素顔に迫る!


 みたいな感じで広報新聞に載ったりして。


 そして、転生して次なる人生へ向かう彼女らに私は凛々しく告げるのだ。


『ヴィセ、ベーゼ、マール。もう君らに教える事は無い。さあ、お行きなさい私の教え子達よ』


『きょ、教官っ!』


『涙は見せちゃ駄目。さ、お行きなさい!』



「なんて感じで感動的なシーンもっ!」



 ──シーン······──



 あ、誰も居ない廊下に私の声が響いた。恥ずかしい。良かった、誰も居なくて。


「あははは······はは······お別れ、か」


 ポツンと独り言が口から出た。



 そっか。いつかはあの三人も転生してここから居なくなるんだ。


 そりゃそうだ。ここは更正させて転生させるのが目的の場所なんだから。

 そして、それが私の使命だ。



 でも。


 そっか。三人ともお別れか。



「············ううん」


 それで良いんだ。


 今度こそ、幸せな人生を歩んで欲しい。そのためにここで更正させているんだ。



 その日まで。私は全力であの子らを指導する。



 きっと更正出来ると信じて。




「さ、午後も頑張らなくちゃ」



改めて気合いの入ったところで、事務所へと向かう。



 事務所の前に到着した時はお腹が小さく鳴っていた。


「うん?」


 と、ここで。何やら騒ぎが起きていた。同僚の何人かが、そこら辺で話あっている。


「?何かあったのかな」


「あっ!麗羅!」



 すると、その中からシャーリーが走り寄って来た。なにやら慌てた様子。


「どうしたの?シャーリー」

「どうもこうもないわよっ!あんた何も聞いてないの?」

「え?何が?」

「あの三人······あんたの担当罪人の令嬢達の部屋から窃盗品が見つかったのよ!だから······あの三人、悪罪人にされるんだって!」

「······え?」










 ──コンコンコンコンッ──



「失礼しますっ!!」


 急いで所長室のドアを開ける。失礼だろうが何だろうが、今はそれどころじゃない。


 中では所長が落ち着いた様子で待っていた。


「所長!」


 ──バンッ──


 思わず机を叩いて大きな音を出してしまった。


「何かの間違いです!あの子達が窃盗だなんて!そりゃ、確かに前科もあるし、やっても不思議ではないけど、でもっ──」

「落ち着きなさい、麗羅」

「っ············すみません······」


 まだ破裂しそうな感情の脹らみをなんとか堪える。ここで感情的になっていては駄目だ。私はここに怒鳴りに来たんじゃない。詳しい話を聞きに来たんだ。


「す、すみません。でも、私は、そのっ······」

「分かっているよ。順を追って話そう。その前に一旦落ち着こうか。そこに座りなさい。今ハーブティーを淹れるから」

「は、はい」



 以前来た時のようにソファで向かいあってカップを貰う私。


 でも、心はさざ波立って仕方ない。


「まず、最初に結論から言おう」


 座ったと同時に所長が口火を切った。


「君のあの担当罪人の三人。ヴィセ、ベーゼ、マールの三人は、悪罪人になったと決まった訳じゃない」

「!!本当ですかっ!?」

「ただし──」


 静かな目でじっと見てくる所長。


「事が事だからこの件は保留中という事になっている。今はまだ調査段階だ」

「······あの、窃盗品って?」

「うん、そこから話そうか」



 所長はゆっくり簡潔に纏めて話してくれた。




 今日の朝。巡回中の法執行獄卒が、監獄エリア内の牢屋の定期点検を行っていた所、ヴィセ、ベーゼ、マールの三人の部屋からそれぞれ盗んだと見られる品々が見つかった。


 罪人達が物を盗む事はたまにある。だから、それだけなら即悪罪人にという処罰にはならないのだけれど──



「罰棍、火薬、マナ玉、鳳凰羽(地獄で取れる花の一種。炎を生み出せる)、さらにはハサミなどの刃物が複数。そして、獄卒用の札(様々な道具を出したり、術を起こせる万能用具)これらが発見された。それも、大量にだ」

「それは······」


 ここ最近の奉仕活動で取り組んでるマナ霊や、その他の制作時に使ってる材料や道具だ。

 罰棍や札は違うけど······。


「それが三人の部屋から?」

「そうだ。そこで、果たしてそれらがどこまで問題なのかを今協議している」

「と、言うと?」


 所長はカップを置いて言った。


「見つかった量が多かった。少しくすねたというレベルではない。明らかに何かの目的があっての保有だろう。となれば············果たして、それらを使って脱脱獄の意思があったかどうかという事を話さねばならない」

「!!そんな事っ──」



 ──コンコンコン──



 弁護しようと立ちかけたその時。



『失礼します』


 と言う声と共に、一人の獄卒が入ってきた。



 それはリューゲ先輩だった······。



お疲れ様です。次話に続きます。

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