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 さて。


 今日からまた指導の日々だ。



 張り切っていこう。



 教室へと赴くと、リューゲ先輩が何やら中を覗いていた。



「あれ?リューゲ先輩?」


 こんな所に居るなんて珍しい。


 あっ、もしかして。


 私を探しに来てたりとか?



「リューゲ先輩」

「ん?ああ、麗羅ちゃん。おはよう」

「おはようございます。どうかしましたか?先輩が私の指導場所に来るなんて珍しいですね」

「ああ、いや。たまたま通りかかってね。麗羅ちゃん自慢の三人はどういう感じかって見たくなっちゃってね」

「あはは、自慢だなんて。まだまだ更正への道は長いですよ」

「そっか。周囲の目はまだそんなに良くはないのかな?」

「そうですね。まだ信用はされてません。『あの三人は油断ならない。いつ牙を剥いてもおかしくない──』て言う意見が多いです」

「なるほど」



 リューゲ先輩は何か考えるように教室の中を覗いていたけど、やがてニコリと笑って言った。



「ごめん、邪魔しちゃったね。僕はもうそろそろ行くよ。麗羅ちゃんも頑張ってね」

「はいっ」



 クールに去っていくその背中は何時だって私の憧れだ。私も早くあの背中に追い付きたい。



「よし。頑張るぞー」



 気合いも十分貰った。




 教室へ入る。


 今日も三人はふてぶてしく座っていた。



「はい、みなさん。おはようございます」


「オホホホ。また苦難の時間ねえ」

「あーあー。今日もクソみたいな話でも聞かされるのかしら」

「昨日みたいにケーキ食べようよー」


「はい、静かに」


 ──パンッパンッ──


「昨日のは特別。大サービスです。本来なら貴女方は罪人であるのです。だから、今日からまたビシバシやっていきます!」

「えー、やーだな~」



 さて、今日は何をするか。



 少し迷ったんだけど、一応目処は立っている。



「今日の指導は道徳の授業ではありません。まず始めにそれだけ言っておきます」

「お、やりー」

「ですが。もっと大切で重要な時間にする事にしました。ですので、気を引き締めて臨んでください」

「あら、何をさせられるのかしら?」

「そうですね。まずは軽い説明──と言うよりはおさらいからしましょう」



 手元のファイルを開く。これには今までの三人の活動記録が記されている。



「ここの指導が始まったばかりの頃。私はみなさんに善行奉仕活動の必要性とその内容を教えました。覚えていますか?簡単に言えば、地獄、天国、そして現世にとって有益である事を行うというものです」

「ああ、あったわね、んなモンも」

「そして、今のところなのですが、三人はすでにこの奉仕活動で二つの活動を経験済みです。地獄での労働。天国での善行」

「あれ?あたしら良い事なんかしたっけ?」


 マールの疑問はもっとも。


「はい。地獄での獄卒の仕事の肩代わり。あれはイレギュラーな案件ですので、本来なら更正評価にはならないのですが、徳を積んだ事には変わりないという事で評価されています」

「オホホ。悪くないじゃない」

「そして天国でのハプニング。経緯はどうであれ、天国在住の亡者の心を癒し、奉仕したのでこれも評価されています」

「奉仕されたのはあたしらだけどね」


 以上の事から──


「三人は二つの項目を経験したという事になっています。もちろん、一回やっただけで終わりと言う訳ではなく、いづれは地獄での労働や天国への奉仕活動を行ってもらいますが、今はとにかく全ての活動を体験する事が肝心です」

「最後の活動って······」


 三人の表情が険しい物へと変わる。



 そう、三つ目の奉仕活動。それは生前の人々へのお詫びとしての善行。


 例えば、苛めていたメイドさんがまだ存命してる場合は、そのメイドさんに良い事が起こるよう三人の霊的エネルギーを使って因果を微かに操作するのだ。


 あるいは、恋敵や目の敵にしていた人とかの幸せのために。




 っと。ここで先手を打っておかないと初めの時みたくボコられるかもしんない。



「えー、とは言え、いきなり償いをするのはハードルが高いので、今回はあくまで模擬的に最後の奉仕活動をしてもらう事にします」


「模擬的?」

「なによそれ」

「詳しく」


「つまり、貴女達に関係があった人達にではなく、全く関係ない別の世界の人達のために活動してもらうという事にしました」

「別の世界?」



 ここからは複雑な話になってしまうので、かなり噛み砕いて話さないと。



「現世と呼ばれる世界。つまり、貴女達が生きていたような世界は無数に存在します。その全ての世界に干渉出来るのが我々地獄や天界なのです。そこで、貴女達にはそんな沢山の世界の中から恵まれていない世界のために活動してもらう事になりました」


『············』


「今、大変な時代に入った世界が一つありまして、その世界をより良い方向へと導く努力を天界が主導で行っています。その取り組みに地獄も協力する事になっているので、貴女達にも手伝ってもらおうという訳です」



 三人は互いに神妙な顔を見合わせて、何か考えるように目を瞑った。



 でも、少ししたら


「まあ、それなら」

「しょうがないわね」

「我慢するか~」



 ホッ。



 とりあえず、目処はたった。


お疲れ様です。次話に続きます。

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