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『──続いては天界での珍事件です。先日、天界のゲートが存在する聖門施設でちょっとした騒動がありました』

『関係者への取材によりますと、地獄から天界見学に来ていた亡者が天国の亡者と結託し、逃走を図った所を我が地獄の獄卒が追いかけ、無事に捕らえたというもので──』



『「こらーっ!待ちなさーいっ!」』


「ぶっふぅ?!ごほっ、ごほっ、ごほっ?!」



 食堂のテレビにでかでかと写し出される自分の姿に、思わずむせてお蕎麦を吐き出してしまった。


「あ!麗羅じゃん!」

「すっごー。テレビデビューじゃん」

「おおー、すげー」


 同僚の獄卒達がワイワイ盛り上がり、他の部署の獄卒の目も向いて、身体がのぼせるように熱くなるのを感じる。

 知らない鬼も声を掛けてくる。


「よっ、凄いな。ご苦労さん」

「貴女やるわねえ。凄いわ」

「すっかり有名人だな」


「あ、あはは、はは······ども~······」


 普通にめちゃくちゃ恥ずかしい。

 よりによって怒りの形相で髪を振り乱して、スカートなのに足広げて金斗雲乗ってるとこの映像なんだもん。

 もっと可愛いとこ使ってくれればいいのにっ!

 後で放送局に苦情入れてやるっ。



『次のニュースです。違法マナを売買する犯罪グループの所持していた資料から、人身売買も手掛けてる事が分かり──』






 お昼を終えて事務所に戻る。


 シャーリーは······まだ帰ってないか。



「うーん。緊張するなあ」

「何がだ?」

「おっと!もう驚かないぞ。朧だね?」


 突然後ろから掛かった声に振り向くと、やはり朧が立っていた。


「ふふん。私がいつまでも遅れを取るとは思わない事だよ」

「お前は一体なんの勝負をしてるんだ。いや、そんな事より」


 朧がスッと目を細める。


「シャーリーに模擬試験頼んだって?」

「耳が早いね。これぞまさに地獄耳!どう?今の上手くない?」

「今は結果待ちか」


 つまんなかったっぽい。今のは上手かったと思うんだけどなあ。


「うん。シャーリーが戻って来るのを待ってるんだ。多分そろそろだとは思うんだけど」





 今日、私は少しドキドキのチャレンジをしている。


 いや、正しくは私ではなく例の三悪女達がなんだけど。



「ああ、緊張するな~」

「ふん······」



 実は、シャーリーに頼んで模擬試験を実施してもらっているのだ。以前、私があの三人に施した更正試験だ。今回の採点者はシャーリー。


 前回は全くお話にならなかったけど、今なら少しは良くなっているんじゃないかと言う私の希望的観測。


 この模擬試験の結果イコール私の指導の結果と言う訳でもある。



「うう~、どうか結果が出てますよーに~」



 ややして。



 シャーリーが帰って来た。



「あっ!シャーリー!」


 戻って来たシャーリーは、なんか虫歯を噛んでるような表情をしていた。


「あれ?どうかしたの?」

「いや······麗羅、あんた凄いわよ。よくあんな連中の面倒なんか見れるわね······」

「ほえ?」



 シャーリーがカッと目を見開いた。



「あのクソ令嬢どもっ、口を開けば罵詈雑言、嘲笑、我が儘!もう苛ついて苛ついて仕方なかったわよ!ああっ、あたしの魔眼(イービルアイ)よ、憎しみの(フランベ)を抑えろ!ぐっ、右腕がっ、あたしの封印されし右腕(ダークフィアー)が疼く!!」

「え、えっと······なんかごめん。シャーリーも大変だったんだね······」

「ふん。普通の獄卒ならこれが正常な反応だ」

「え。これ正常なの?」

「······まあ、とにかく苛つく奴らなんだろ、あの三人は」



 うーむ。確かに私も普段からやられ放題だからなあ。気持ちはよく分かる。



「ところでシャーリー。模擬試験の結果はどうだった?」

「え······えー、あー、まあ、うん······」


 視線を泳がせるシャーリー。そして申し訳なさそうと言うか、同情するような目を向けてきた。


「いや、あのね。あたしだって獄卒よ?だから採点に間違いはないと思うわ。だけどね······でも、さ。麗羅が悪い訳じゃないと思うわよ。あんたの指導が問題あるんじゃなくてあの三人がヤバすぎるってだけでさ」

「な、なにその建前というか前口上は?」


 もしかして、また酷い点数だったのかな。

 成長まるで無しの結果だったのかな······。


 朧もふんっと鼻を鳴らす。


「罪人なんて皆そんなもんだ」

「······そ、それでシャーリー。何点だったの?」

「あんましショック受けないでね······一人づついくわよ」


 手元の紙を見て、シャーリーが点数を読み上げる。



「ヴィセ、14点。ベーゼ、17点、マール、12点。以上、三人とも落第」

「え?14?17、12?」

「その、麗羅······落ち込んじゃだめよ」


 つまり、三人合計で約40点?


「······や、や············」

「麗羅?」

「おい、大丈夫か?」


「やったあああああーっ!!!」

『?!』



 血が沸騰する!喜びが全身をビリビリと稲光となって駆け巡る!


 あの、あのオール0点、パーフェクト0の三人が、10点以上も獲ったんだ!


 しかも客観性をもたらす為にシャーリーに頼んでの採点。つまり、これは紛うことなきあの三人の成長点なのだ!



 あ、目頭が······。


「く~っ、うっ。長かった。短いけど、ここまで来るのが長かった!私のあの苦難の日々は決して無駄じゃなかったんだ!あの三人がこんな高得点を獲るなんて!」

「······え、10点台なんて高得点だったっけ?」

「な訳ないだろ······」



 こうしちゃいられないっ!



「そうだっ!頑張った三人にご褒美あげないと!ケーキ買ってこよう!」

「は、はあ?!落第点でケーキ?」

「お前なあ······」

「シャーリー、お礼にシャーリーにも何か買ってくるよ!」

「え、あ、ありがとう」

「ついでに朧にも何か買ってこよっか?今日はお祝いだ~!」

「いや、俺はいい······」

「そう?じゃ、私行ってくるねー!」




 まだ休憩時間はある。今の内に買ってくれば午後のティータイムに間に合う。



 行くぞー。


お疲れ様です。次話に続きます。

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