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 麗羅はおぞましい極罰の光景にすっかり気分を悪くし、うんうんうなされながらベンチで寝ていた。



 一方、解き放たれた悪の三姉妹は観光に来た女子グループのように明るく弾みながら、地獄の極罰を見て回り始めた。




「ねえねえ、あの山見てー。針で出来てる~。あ、重そうな荷物持って登ってる亡者がいるよ?」


 マールが指差す方向には、針山地獄の罰を受けている亡者達が居た。鉄で出来た巨大な針を何本も背負わされ、針の上を歩かされている。すぐ横には巨大なコウモリに乗った獄卒が見張っており、ムチで叩いて急がせている。



「あら。自分達を苦しめる山を自分達で作らせてるのねえ」

「へえ、面白いじゃん」



 ヴィセ、ベーゼ、マールの三人はニヤニヤ笑いながらその様子を見て、次のエリアに向かった。



 今度は幅の広い川が現れた。



「川ね。ふーん。ここだけ少し雰囲気違うじゃん。なんか幽霊出そう」

「あたし達ユーレイじゃん」

「ああ、そうだったわね。チッ、思い出すとムカついてくる」

「ここではどんな罰が課せられてるのかしら?」



 一行が周囲を観察していると、川縁で何やら動いている人影が見えた。


「あ、あそこに誰か居るよ」

「近くに行ってみましょ」


 フェンスに沿って近づくと、そこにはみすぼらしい姿の亡者が石を積んで、小さな塔のような物を作っている。


 三人が首を傾げる。


「あら。随分と楽そうな刑ね?」



 すると、そこへ獄卒がやってきて積み重ねた石の塔を無造作に蹴って壊してしまった。


 獄卒は何事もなかったように去っていき、残された亡者は悲痛な泣き声をあげた。



「ふーん。地味ね」

「ただの嫌がらせね」

「つまんなーい」


 三人はまた別の罰エリアを回った。



 あらゆる残酷な罰は三人の悪役令嬢の心を大いに沸かしたが、同時に物足りなさを感じさせていた。



「あの獄卒やる気なさそうねえ。もっと顔とか狙って鞭打てば良いのに」

「あの拷問器具の後に塩とか用意しとけばもっと痛めつけられるのに。チッ、無能」

「ねーねー、あの食べ物にさー、毒とか入れたら良いと思わなーい?」


 ついには極罰への駄目出しまで始めだした。



 そんな風に三人があれこれ話ながら歩いていた時だった。どこからともなく



「はぁー。疲れた」

「あ~。ダリい。もう働きたくねぇー」

「また今日も残業か······」



 と言う声が聞こえてきた。それは、休憩用のベンチでぐったりと座る数人の獄卒達の話し声であった。



「今日もさー、罰棍百打ちの刑でさ。もう腱鞘炎になって痛くて痛くて。はあ、午後もまだある······」

「俺もこの後、飢餓飯(食べれば食べる程、空腹感を増す米)を食わせなきゃなんねえんだよ。はあ、また炊飯器運ばなきゃな······」

「俺なんて針山の掃除だぜ?あちこちに血肉がこべりついてるからさ。はぁ~。何時終わる事やら······」





 詳しい事情は省くが、昨今のあの世は慢性的な人手不足に陥ってる。


 そんな死後の世界に送られる人間の数は日に日に増えており、天使や獄卒などの仕事の負担が大きくなっているのだ。




「はぁ。天使達が手伝いに来てくんないかな」

「無理だろ。なんなら天界の方がヤバいって聞いたぞ」

「らしいな。はあ~。魔界の悪魔達が協力とかしてくんねえかな」

「それこそ無理っしょ。あんな無法者に手伝いなんかやらせたら集団脱獄とかやりかねない」

「だよな。はぁ。もう休みたい」



 などと愚痴っている獄卒達を、ヴィセら三悪女が見ていると、その視線に彼らも気づいた。



「ん?あれ?おい、こっち側に亡者が居るぞ」

「うん?あー、あれだろ。今朝、朝礼で言ってたやつ。見学に来てる悲罪人だろ」

「ここの惨劇を見て大人しくしてくれれば良いけど······頼むからこっちに来るような愚行はしませんように。もう、仕事増やしたくない」


『············』


 三人の悪役令嬢達は何を思ったか、不敵で妖しい笑みを揃って浮かべたのであった。



お疲れ様です。次話に続きます。

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