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 今日のお昼は天ぷら蕎麦っ。良い事あった日くらいは贅沢しなきゃね。頑張ってる自分にだってご褒美はあげないと。




「う~ん。お出汁の良い味。香りも美味しい」



 天ぷらも海老がプリっプリっ。衣はサ~クサク。この食堂のコックさんは天才だっ。


「ツルルル······ん~、幸せ~」


 色んな人間界の料理食べてきたけど、この蕎麦が最高。

 それに、今日は特別な薬味が乗っている。そう、私の指導が上手くいったという薬味が。



「という訳だよ、朧君。君も私を見習って少しは頑張りたまえ」

「黙って食えねえのかよ······」



 だが、なんと言っても。たまたま居合わせた朧に私の手柄を自慢するという美味しすぎるトッピングが更に食欲を加速させる。



「むふふ、朧~。今日も揚げ物~?そんなに油っぽい物ばかり食べてると胃もたれしちゃうぞ。そしたら無愛想な顔が更に顔色悪くなっちゃうよ」

「大きなお世話だ」

「しょうがないな~。今度、昔みたいに私がお弁当作ってあげようか?」

「······いや、大丈夫だ」

「遠慮しなくていいのに~。照れ屋さんだな~」



 素直な令嬢達。天ぷらの乗ったお蕎麦。言い返せない朧。


 もしかして、私の教官キャリア最高の日じゃないか?



「ふふ、朧。ジュース奢ってあげようか?一本だけ」

「ケチくせえな。いらねえよ」

「あら、それは残念。おーっほっほっほ」

「変な笑い方すんな」

「変なとは失礼な。私の可愛い生徒の真似だよ」

「······で?一体どんな話したんだよ?いきなり素直になったってとこまでは聞いたが、その後はどうなったんだ?」

「あら?聞いちゃう?乙女達の花園の秘密の話を?朧ったらいやらしいな~」

「お前って調子乗りやすいのもチャームポイントだよな······」

「ありがとう」

「皮肉だよ」



 あの三人はやたら私に興味を持ってくれた。

 私の性格とか思考とか、趣味とか、教官としての歴や能力。


 他にも身体能力はどうかとか、ケンカした事はあるのかとか、頭の角って硬いのかどうかとか、ちょっとコアな質問もあったけど概ね私の事を根掘り葉掘り聞いてきた。




「という感じでね。たくさん話したよ」

「······」

「でも、なんであんなに色々聞いてきたんだろう?もしかして、私を通して獄卒の生態でも研究するのかな?そんなに知識欲があるようには見えなかったんだけど」


 と、そこまで話したところで、前触れもなく朧が突然──


「お前、今日はもう帰れ。代わりに俺が指導しといてやる」


 とか言い出したんだけど。



「へ?なんで?」

「いいから帰れ。あいつらにはもう関わるな」

「何いきなり言ってんの朧。またまた怖い顔して。ひょっとしてジェラシー?」

「······どうも気に入らない。あの三人の態度の急変。怪しいと思わないか?」

「考えすぎだよー。あ、そろそろ時間だ。じゃ、朧。また後で話してあげるよ。私のスーパー教官話をね」

「あ、おい待て──」



 せっかく信頼を得たんだ。時間に遅れたりしちゃパアだ。急いで行こう。



 お盆をカウンターに返して教室へ向かう。デザートは後で買おう。






 ──ガラガラッ──



「はーい、みんなお待たせー。帰ったよー」


 戻ってみると三人は一つの机を囲んで何やら話し込んでいたけど、私が入るやニコニコと笑った。



「あら、早かったわね教官」

「やっと来た」

「お帰りなさーい」


「ん?三人とも何か作ってるの?」


 見てみると、三人は机の上に長い布みたいのを置いて、それを結びつけたりしていた。カーテンだ。


「あれ?カーテン?それで何してるの?」

「あ、なんでもないよー。これ使ってドレス作れないかなーってお姉さん達と挑戦してたの。キャハっ」


 クスクスとマールが笑う。


 うーん。備品を勝手にいじるのは感心しないけど、まあいっか。


「それより教官もドレスとか似合いそうだね。良かったらここに来て当ててみてよ」

「え?私が?」

「オーッホッホッ!いいわね~。きっと似合うわ~」

「いいね、教官来なよ」

「う、うん。それじゃあ」


 三人に勧められるまま椅子に座る。


 そそっと三人が立ち上がって私を囲んだ。



「じゃあ、今から教官のドレスアップターイム。いえ~い~」


 私の髪をマールがサラサラっと持つ。


「あ、意外に綺麗。ちゃんとしてるね」

「でしょ?髪の手入れには自信あるんだ」

「あら?教官、腰に付けてるそれは何かしら?」

「うん?」


 ヴィセが私の腰の罰棍を指差す。


「今気づいたわ。それ、武器?」

「え?あー、うん。まあそんなとこ。ほら、鬼に金棒ってやつ。あははは」



 貴女達亡者を痛めつける道具ですとは言えまい。ここは適当にはぐらかさなきゃ。



「ふーん。それ、武器なの?」

「あ、駄目だよベーゼ触っちゃ。これ、危ないんだから」

「へえ。危ないねえ」


 ベーゼが笑った。ニコリ。ではなくニヤリ、と。明らかに邪悪な笑みだった。


 そして、ベーゼがヴィセに。ヴィセがマールに。何かアイコンタクトをとるように頷きあった。



「ねーねー、きょうか~ん」

「な、なに?」

「お願いがあるの~。ちょーっとだけ──」


 マールの微笑みが悪女の色に染まった。


「大人しくしてね」

「へ?」


 聞き返す間も無く、三人がサッと動いた。



 素早い動きだった·········。

お疲れ様です。次話に続きます。

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