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本日、3本投稿の予定です。

 

「えーと、ここのチェック欄にサインして、そんでもってこっちの報告書を午前中に提出して······」



 指導教官の朝は忙しい。仕事は、授業で使う教材の研究だけではないのだ。ちゃんと事務的な仕事もたくさん。



 でも、この時間の方が余計な事考えずに没頭出来ていいかも。あの三人と対峙してると私のストレスゲージが音速レベルでMAXになってしまうし、叫びすぎて喉がカラカラ砂漠になってクタクタになった洗濯物みたいになるもんね。




「麗羅ー、おはよー」

「あ、シャーリーおはよー」


 同僚とのんびりお話しながら情報交換も欠かさない。



「へえー、シャーリーは地獄見学しに行くんだ」

「そ、前に先輩が教えてくれてね。悪罪人達が苦しめられる姿を見れば少しはビビるから効果あるんだってさ」

「結構えげつないね」

「ふふふ、あたしの血塗られた教育(ブラッディ・スタディ)に恐怖の叫びがこだまするのよ!うっ、あたしの中の(カルマ)よ、まだ抑えるのよっ」

「シャーリー、そういうの好きだよね······」



 でも、地獄見学かあ。

 社会学習って事で取り入れてもいいかも。今はまだ外に連れ出すのも不安だけど、近い内に外出申請書作っとこうかな。



「あ、そうそう。麗羅、朧がやたらとあんたの指導を気にしてたわよ?」

「え?朧?」

「うん。なんかあいつさ、やたら麗羅の様子とか聞いてきてさ。まだ悪女どもの指導やってんのかー、とか。しかも、こう、目の端吊り上げた感じで」


 そう言って目つきの悪さを指で表現していた。

 ぷっ、似てる。誰に彼にも睨み付けるような朧の三角眼にそっくり。


「あははっ、それ似てるーっ。あの高慢ちきで頭カッチカッチ石頭で小憎たらしさ百点満点のぶっきらぼう朧そっくり──」


「へえ、楽しそうな話だな」


 ──ポン──


 聞き慣れた声と共に、私の肩に手が乗った。


「朝っぱらから賑やかだな。俺も混ぜてもらってもいいか?」

「············」

「あー······麗羅、あたしそろそろ行くわ。じゃあ、ごゆっくりー」



 同僚のシャーリーは逃げ出した。


「······あ、えーと。おはよう、朧」

「よう。傲慢で石頭でぶっきらぼうな男だが、挨拶返してくれるなんてな。ありがたい」

「もう、ネチネチ言うのは良くないぞー。ほら、笑って笑ってー」


 振り返ってみると、めちゃくちゃ不機嫌そうな朧が見下していた。


「わ、わあ、朧。どしたの?なんか不機嫌そうだね?」

「ああ、陰口叩かれてるのを直に聞いて不快の絶頂だ」

「も、もう、やだなー。陰口じゃないよ、ほら、幼馴染みとして朧のチャームポイントを並べてただけだよ」

「そうか。ならお前のチャームポイントも俺から教えてやろう。能天気でお人好しで、ドジの上に空回りする精神年齢未成年の殴られ新米教官だ」



 ちょいと口が悪うございませんこと?


「うぅ、ちょっとは加減してよっ!」

「十分マイルドにしてやった」

「まったくもうっ!」


 みんなして私の事能天気だとか言って。そろそろ鬱になって泣くよ?


「そんな口悪いと女の子にモテないぞ!もっと優しくしなさいっ」

「別にモテなくていい」


 そんな事より──と朧がもっと不機嫌そうに眉を寄せる。


「あの三人の指導、まだやってるのか?」

「え?うん。当然でしょ?だって私が担当教官なんだから」

「ならさっさと粗でも探して悪罪人に落とせ。それか他の指導教官に代わってもらえ。お前には荷が重すぎる」

「······ねえ、朧。どうしてそんなに私の指導に首突っ込むの?あの三人の事やたら気にしてるみたいだけど······あっ、もしかして······」


 はは~ん。ピンっときたぞ~。


「朧ってば、もしかしてあの三人の中に気になる子でもいるの~?」

「はあ?」


 わーっ、何そのシチュエーション。許されない恋慕って感じ?そりゃ、あの子らも悪女であるものの令嬢。麗しき乙女達だ。実際、三人ともかなりの美人だし。


 そんな美しくも妖しい地獄の令嬢達に教官である青年の禁じられた淡い恋物語。うん、これはなかなか良いぞ~。



「おい。何いきなりニヤニヤしてるんだ。ただでさえ抜けてる顔つきが更に締まり無くなってるぞ」

「むふふー。いーのいーの、照れなくって。朧、言ってくれれば私だって色々協力してあげるのにー。もう、ほんと素直じゃないなあ」

「お前さっきから何言ってんだ?」

「そっかそっか。そう言えば、あまりにも問題児の場合は他のベテランとか指導力のある獄卒が担当を変える事もあったよね。なるほどー、朧はその制度を使って私からあの子らを引き抜きたい訳か。そんでもって禁断のロマンス。それで私をダシにしようだなんて、君もなかなか憎いテクニックを使うじゃないかー」

「······」


 ふふ。図星だな?朧ったらムッとなって怖い顔をしているぞ。久々に私に言い負かされて頭にきてるのだろう。やりー、私の勝ち~。


「······麗羅。お前のチャームポイントに『鈍感』も追加な」

「え?鈍感?」

「じゃあな」



 くるりと去っていく朧。

 少しからかい過ぎちゃったかな。なんだか怒ってたみたい。


「後で謝っとこうかな······」



 あっと、いけないいけない。私もそろそろ行かなくちゃ。



 必要な教材などを持って事務所を出る。





「······なんで鈍感なんだろう?」


 という謎も一つ持って。

お疲れ様です。次話に続きます。

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