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 流石にというか、腐っても令嬢、悪女でも令嬢だ。ティータイムでの所作は本当に優雅。やっぱり良家の麗しきお嬢様なんだなあ。



「あら、また同じ紅茶?おぼこ、貴女無能ね」

「気が利かないタワシ」

「花畑が~つかえな~い~」



 前言撤回。この悪女どもめ。憎たらしき悪の三姉妹だ。



「それはともかくとして。三人とも少しはここの生活には慣れた?」


「地獄に慣れる人間なんて居る訳ないでしょう?」

「生活も何も、あたしら囚人だし」

「むしろ慣れる前に出てく事がアンタの目的なんじゃなーい?」


 ここで悪女達に正論言われるとは。



「まあ、三人ともそこら辺は逞しいというか、図太そうだから大丈夫かな。だけど、更正するためには健全な精神が大切だからね。その精神を養うためには健康な生活が必要だから、何か困った事あったら私に言ってね。出来る限りの事はするから」

『············』

「ん?どうしたの?」


「いえ、別に」

「何でもないわよ」

「本当に頭花畑だね」


「?」


 何故かちょっと不機嫌な感じでぶっきらぼうになる三人。朧を彷彿とさせる素っ気なさだ。



 そんな事より。せっかくこうやってリラックスタイムにテーブルを囲んでるんだ。私から積極的に話を振ってどんどんコミュニケーションを交わそう。



「いや~。でも今日も良い天気だね~」

『······』

「私の好きな食べ物はお蕎麦でね。友達には渋いって言われるんだよね~。あ、お蕎麦ってのはね、とある人間界の料理でさ」

『······』

「今週の地獄占い、私の誕生月が運勢一番なんだって!何か良い事あるかもっ。みんなも占いとか好き?」

『······』

「あっ!窓の外に極楽鳥が飛んでる!」

『······』


「ねえ!ちょっとは反応してよ!」


 せっかく話題を振ってるのに無視されて私は悲しいよっ。


 沈黙に耐えきれなくなり叫ぶと、三人は冷ややかな視線を送ってきた。


「お茶の時は静かにするものよ」

「あんたの話なんて興味ないし」

「なに一人で盛り上がってんの?」


 今日一番泣きそうな私が居る。



 三人との距離はまだまだあるけど、少しづつ関係を築きあげるのが私の課題だろう。





 休憩も終ったし、授業の後半にとりかかろう。



「はい。では午後の指導は道徳の授業となります」


「おむすびなら要らないわ」

「クソどうでもいい話ならパス」

「馬鹿が落ちぶれる話がいいな~」


「おむすびは美味しいでしょっ!女の子がクソとか言わないっ!人が落ちぶれる話望まないっ!」


「あらあら、貴女って静かにしてる時って無いのかしら」

「なんか一々うるさいわよね」

「ガキっぽい」



 堪えるんだっ、私!道徳的な態度で、おおらかに暴言を受け流してみせるのだっ!


「うふふ。もーう、みんなったらお口が悪いんだから~。麗羅こまっちゃう」


「気持ち悪いわね」

「無理すんな」

「ぶりっこでも可愛いくない」


 ──ピキッ──


「だまれーいっ!この悪役令嬢どもー!いいから私の話を聞けーっ!」


『ええぇ······』


 よし、勢いで黙らした。私のパワハラシャウトには流石の悪女らも怯むらしい。


 というよりは引かれてる気がするけど······。



「コホン。失礼。えー、道徳の授業は大切です。なぜなら貴女達には後々、更正試験を受けて貰う訳なのですが、その試験をクリアするためには道徳心が必要となるからです」

『試験?』


 三人が怪訝な目を同時に向けてくる。


「何なのかしら、それ」

「そんなの受けないわよ」

「めんどっちそー」


「受けなきゃいけないのっ、じゃなきゃ永遠に地獄から出られないよっ」



 更正指導所の目的は罪人を清く正しい魂に浄化して更正させ、新しい真っ当な人生に転生させてあげる事。

 そのために、清く正しい魂になったかどうかを判断するための試験がある。当然だ。



「この試験で一定以上の点数を貰えれば貴女達にはより良い人生が待ってるんだよ。だから、頑張れば頑張るほど、早く地獄から抜け出せるって訳」

「ふーん。で、落ちたらどうなるわけ?」

「試験不合格でまた再指導。地獄抜けは先延ばしとなります」

「えー、やだー」

「オホホホ。脱獄した方が遥かに早いわね」


 んな訳あるかい!脱獄したらほぼ確実に悪罪人の烙印押されて、法執行の獄卒に捕まって本物の地獄行きじゃい!


「脱獄なんて考えないように。上手くいく訳ないし、例え逃げられても地獄から抜け出すのは不可能です。それにっ!私がそんな愚行許さないからね!」


「オーッホッホッホ!おぼこ、威勢が良いじゃない」

「雑魚ほどよく吠えるってね」

「許さなくてもいいもーん。勝手に出てくから」



 本当に脱獄しないか心配になってきた。


「はあ、とにかく。貴女達はここから出て行きたい訳だし、私だって貴女達を早く出て行かせたい。つまり、お互いの利害は一致してるわけなんだから協力してよね」


「考えといてあげるわ」

「ふん」

「はいはーい」


 ほとんど身の入ってない返事しかないけれど、今は良しとしよう。



「はい、じゃあ今からいくつか軽い質疑応答するから答えていってね。軽い小テストして貴女達の現状を把握するから」



 とりあえず、まずはこの三人の道徳心を計測しようじゃないか。


 私は実際の試験で使われる質問集と、その質問に対する模範的回答集を取り出して三人への模擬テストを開始した。



「はい、まず第1問。貴女の目の前で困っている人がいます──」



お疲れ様です。次話に続きます。

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