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「はいっ!と言う事でもっとお互いの事を知ろうのコーナー、もとい授業となります。拍手っ」


 ──パチパチパチパチ──


 教室に私の一人拍手だけが鳴り響く。


 三人がキョトンとする。



「おぼこ、何言ってるの?」

「ふふん」


 訳分からないって反応は当然だ。



「えー、つまり。今日はまず初めにこれから一緒に更正していく仲間(?)を知る事から始めようって話。もっと言っちゃえば自己紹介のコーナーになります」

「自己紹介?」


 またまたキョトンとする三人。


「貴女はおぼこでしょ?」

「もう名前は聞いたわよ、タワシ」

「花畑だよね」


「誰一人として私の名前覚えてないじゃんっ!」


 い、いや。まあ、それは追々として。


「私の事は置いといて。自己紹介と言うのは、私じゃなくて皆の方。つまり、貴女達三人の自己紹介ね」


 そう言うと、みんな何か探るような目を向けてきた。


「一体どういう事かしら?」

「要するに、貴女達の名前とか趣味とかをここで軽く紹介してって事」


 ますます理解出来ないと言いたげな三人。


「それに何の意味あんの?」

「意味わかんな~い」


 まあ、もっともではある。


「コホン。えー、つまり。もっと互いの事よく知ろうという話。お互いにもっとお話すれば理解が深まるという訳」

「あら。私はよく知らないけど、貴女は私達の経歴とかとっくにご存知なんじゃなくて?」

「うん、まあね。私は資料で貴女達の経歴とか諸々を把握してる」


 露骨に嫌そうな顔をする三娘。


「でもさ、それだけじゃなくて貴女達が互いに理解し合うのが大切かなって」

「何故かしら?まさか私達にお友達になれって言いたいのかしら?」

「う~ん。そうじゃないんだけど、何て言うのかなー」


 上手く言葉に出来ないけど······。


「貴女達はこれまで色々多くのしがらみとか、束縛に纏わりつかれて自由に人間関係を築いてこれなかったと思うの。だから、ここで心機一転。対等で新しい人間関係作りに挑んで欲しいって思ったの」

「そんな事に何か意味あんの?」

「ある。と思う。相手を知れば、きっと新しい何かに気づくはず」


『············』


 ヴィセ、ベーゼ、マールの三人は何か考え込んでるようだったけど、ややして鷹揚(おうよう)に頷いた。


「まあ、他にやる事もないし」

「仕方ないわね」

「てきとーにやるか~」


「よろしいっ。では、ヴィセから」

「オーッホッホッホ!」


 ヴィセが高笑いと共に立ち上がる。


「ヴィセ・フロワイド。リーボルン地方を治める侯爵家の──あら、そう言えば肩書きは無用だったわね。この世で一番美しく、気高い女性と覚えてもらえば結構だわ~」


「アホ抜かせっ」

「ぶーぶーっ」

「ベーゼ、マール、野次は禁止!ヴィセは劇鑑賞が好きな子だよ。二人ともどんどん劇の事とか聞こうね」


 私の補足にヴィセは眉を寄せた。


「それでは次。ベーゼお願いね」

「チッ、指図するな」


 舌打ちと睨みを私にプレゼントしつつも、自己紹介始めるベーゼ。


「ベーゼ・グラオウザム。肩書きは省くわ。特技は魔法で敵をズタズタにする事。ここでは使えないみたいだけど」


 ガタっとつまらさそうに座るベーゼ。私のフォロー。


「ベーゼはスイーツが好きな子だよ。近い内にお茶菓子も用意するから皆で仲良く食べよう!」

「チッ!ほんとウザい」

「じゃ、じゃあ最後はマール」

「はいはーい」


 立ち上がっておしとやかに頭を下げるマール。


「マール・アレグレー。聖女だったよ。当然よね、こんな可愛いんだもの。あたしは意地悪な姉に騙されてこんな所に落とされちゃったの~。でも、綺麗なお姉さん達が居て安心しちゃった。仲良くしたいな~」


「あらあら、とんだ嘘つきねえ」

「猫被るんじゃないよ」

「アハッ。バレた?」


 ニヤニヤ笑うマールが座ってから一言コメント。


「マールはお人形とかが好きな子だよ。いつかみんなで一緒に遊びたいね」

「ちょ、ちょっと!そんな事まで知ってんの?」


 マールが睨んでくる。


「この変態っ!ストーカー!覗き魔!」

「ま、まあまあ。とにかく、これで全員紹介終わったね。それじゃあ次は質問コーナー」


 またまた私一人一つの虚しい拍手が響いた。



「お互いの事は軽く分かったね。でも、もっと深く知った方が有意義な時間になると思うの。だから、相手に聞きたい事質問しよー」


 三娘。露骨に嫌な、顔をする。 麗羅


「ほ、ほら。あるでしょ?生前はどんな生活してましたかー?とか、同じ貴族令嬢同士ならではの質問とか」


「ないわ」

「無い」

「ナーシ」



 くじけんぞ。


「いーや、あるはずっ!ほら、例えば私はこういうことやったとか、ああいう事やったとか。貴方はどう?みたいにさ」


「ふぅん」

「やった事ねえ」

「うーん」


 互いに様子を伺いあう三人。


 その顔が申し合わせたかのようにニヤッと笑った。どれかと言うと邪な感じで。


「オホホ。私の功績を聞かせてあげてもよくてよ?」

「はんっ。あたしの武勇伝にビビらないでよ」

「うふふ、あたしの活躍話してあげる」


 質問じゃなくて自分の事話したいようだけど、まあいっか。


 狙っていた展開とは違って、言いたい事言い合う雰囲気になっちゃったけど、それはそれでアリだな。



 それに、この三人の話。ちょっと気になる私が居る。


お疲れ様です。次話に続きます。

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