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死なずの君に送る歌  作者: 琴乃葉楓
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冬季大演習 Ⅲ

話を抜かして投稿してしまっていたので、第三部としてこちらの話を投稿させていただきます。

申し訳ありませんm(_ _)m

「大蔵省の大臣官房殿でしたか…。これは失礼を…」

「いえいえ、大佐殿のご高名に比べれば私などまだまだですので、どうぞ顔をお上げになってください」

大臣官房というのは、いわば省内での航海士的な役割を担う人間のことだ。

所管行政に必要な調査及び分析、省内における事務の調整や人事・会計等の管理など、大蔵省の中枢を取り仕切る役職で、その職務性質上、蔵相の信頼厚い部下が就くことが多い。

すなわち、常に海軍と予算競争をしている陸軍としては、なんとしてでも抱き込みたい人間というわけだ。

そしてそれを示すように、陸相も、どこか心配気な様子で、私と大臣官房殿の方に視線を向けている。


「ご高名など…。小官は職務に準じて、自分ができる限りの結果を残したまでですので」

「ご謙遜を。閣下の武勇は我々大蔵省中枢にも聞こえております。本演習でも、部隊の指揮官として参加されるのですよね?」

嘘くさい微笑みを浮かべながら、そんな事を問いかけてくる。

おかしいな…。

第一特務連隊がこの演習に参加することは、陸軍内部で最重要秘匿事項として扱われているはずだが。

なぜ、こいつは知っているんだ?

「…ええ。先程、大臣官房殿と陸相閣下がお話になられていた部隊を指揮いたします。まだ訓練を始めたばかりの未熟な隊員達ではありますが、訓練での成果をお見せできればと思います」

…いや、そう言えばさっき陸相が漏らしてたな。

っというか…ああ、嵌められた。

「成程。夜叉人殿は特○壱計画の責任者と指揮官を兼務されているのですね」

先程まで嘘くさかった笑みが、柔和なものへと変わる。

やってしまった…。

カマかけがあったとは言え、軍の重要機密事項を漏らしてしまった。

いや、他国のスパイ組織なんかに話さなかっただけましか?

どちらにせよ、やってしまったことは仕方がないか…。

「ええ。新渡戸寛蔵中佐率いる第百九歩兵大隊と、攻守に分かれて行う防衛演習を行う予定です」

元々は、小隊か分隊を相手にする予定だったのだが、それでは見目に欠けるということで、大隊との防衛演習に変更されたのだ。

まあ恐らくは、大隊の強さを誇示したい師団長あたりが進言したのだろうが…。


「防衛演習ですか。夜叉人殿の部隊は攻と守のどちらを担当されるのですか?」

「数的不利もあリますので、防衛側を担当する予定です」

俗に、敵を攻める場合には三倍の兵を用意しろと言われる。

それは、攻める側よりも防衛する側のほうが地形を熟知し易く、罠などを事前に設置できるというところなどから言われる。

まあ簡単に言えば、攻める側をするよりは守る方した方がまだ勝率が高いだろうという考えということだ。

「そうなのですか…。てっきり異能ありで攻撃を担当されるのかと思っていました」

異能を解禁すれば、確かに勝負には勝つことができるだろう。

だが、恐らく異能を使ってしまうと大隊(友軍)に死者が出ることになる。

「…異能ありでは、演習では済まなくなってしまいますので」

我が連隊のせいで、友軍に死者が出るなど考えたくもない。

すると、少しの残念そうな表情を浮かべながら大臣官房殿はこういうのだった。

「そうなのですか。御連隊が異能を持って敵を蹂躙するところを見たかったのですが…」

こいつ本当に官僚か?

思わず、そう思ってしまうのだった。

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