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死なずの君に送る歌  作者: 琴乃葉楓
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精鋭連隊

拝啓、彼岸花が目に鮮やかな季節、お変わりなくお過ごしでしょうか。

陸相閣下に置かれましては、益々のご栄達のこと、せつにせつにお祈り申し上げます。

さて、閣下より第一特務連隊連隊長に任命されてから早半年の時間が立ちました。

着任したばかりの頃は、まだまだ桜が鮮やかな桃色の花を咲かせていましたが、今、安原荘の存する森は紅葉やイチョウの葉が生い茂っております。

また、子供たちの成長も著しく、半年前まではろくな訓練すら受けたことのなかった彼、彼女らは今や栄えある帝国陸軍の部隊として、恥じ入ることのない生活をしております。

私と、藤崎大尉も身の引き締まる思いで、日々職務に邁進している次第です。

ひと月後に行われる、冬季大演習にも参加する予定ですので、よろしければどうか子供たちの成長を見てあげて下さい。

最後にはなりますが、昨今、欧州での戦争の話ばかりが噂に聞こえます。

情報統制で詳しい戦況までは聞き及んでおりませんが、もし万が一、我が部隊が戦線に投入される事があれば、私と藤崎大尉は如何なる戦場であっても喜んでまいります。

ですが、子供たちだけはどうかご容赦くださいますよう、宜しくお頼み申し上げます。

敬具

大祥四年 十月九日

     帝国陸軍省直轄 第一特務連隊 連隊長 夜叉人篤人


帝国陸軍大臣

     渡良瀬直哉 殿


皺くちゃな手で、部下からもたらされたその手紙をそっと閉じ、使っている執務机の引き出しにしまう。

いきなり手紙が送られてきたから何かと思えば…。

明朝、普段どおりの時刻に登省すると、整理された机の上に不自然にこの手紙は置かれていた。

本来ならば、陸軍省に送られてきた手紙は何も言われずに机に置かれることはないのだが、なぜかこの手紙だけが机の真ん中に置かれていたのだ。

大抵は補佐官か、受け取った人間が私に直接渡してくるのだが、不思議なものだと最初は思った。

だが、差出人の名前を見た瞬間なんとなく察しがついた。

恐らく、異能で直接送りつけてきたのだろう。


…それにしても、もう半年か。

手元に置いていた、黒い木目調の柄をしたペーパーナイフの刃を見つめる。

夜叉人大佐を連隊長に、藤崎大尉を副連隊長に任命し、子供たちのことを任せてからそんなにも時間が経っていたことに驚きを隠せない。

二人共、すこぶる優秀な軍人で、引き抜くのは骨が折れたが、それでもなんとか粘ってあの職に付けたのは間違いではなかったようだ。

元々は、陸軍大臣の引き起こした不始末。

将官でもない者に背負わせるのは、いささか気が引けたが…今では正解だったと思っている。

多分、私では彼のような結果にはたどり着けなかったな。


トントン

そんなことを考えていると、扉をノックする音が部屋に響いた。

恐らく、補佐官の石橋大佐だろう。

【石橋大佐であります!政務補佐の為参りました】

予想通りの人物であったことに軽くうなずき返事を出す。

「入れ」

入ってきた男は、その大柄な体を四十五度に曲げ、素早く背筋を伸ばしていう。

「失礼いたします!」

「うむ。早速ではあるが政務を始めようか」

「はい!」

そう返事をして、男は執務机に隣り合うように設置された一回り小さい机に、その腰を下ろしたのだった。

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