第一特務連隊 Ⅵ
「なんとか上手くいったな。藤崎大尉」
五人の新任士官がいなくなった部屋で、入れ替わるように入ってきた少女に対して言う。
「は。しかし、重要なのはこれからかと」
まあ、その通りだな。
ここからは、なあなあな特務部隊はというわけにはいかない。
精鋭群とはいかないまでも、ある程度の状況に対応することのできる本物の特務連隊を形成しなければならない。
「…まあ、そうだな」
それは、頭ではわかっているのだ…しかし、やはりと言うべきか、少年少女に対して軍事教育を施すことに多少の抵抗はある。
そもそも、あの子供たちは本来まだ軍務に従事するような年齢ではないのだ。
階級を与えてしまえば、私の…軍人 夜叉人篤人としての覚悟は決まるかと思ったが、そうでもなかった。
今も、子供たちを戦場に送るという罪悪感と、送らねばならない状況に陥らせてしまった帝国の大人として羞恥心で、嫌に身体が、思いが進んでいかない。
そんな、私の心情を雰囲気から理解したのか、藤崎が厳然とした態度で言う。
「大佐殿。失礼を承知で申し上げます。彼ら彼女らは、階級を与えられた時点で軍人です。そこに年齢は関係なく、我々が今後行っていくのはただの軍事訓練。即ち、当人たちが戦場に立った時いかに生き、いかに戦うのかを教示するためのものです」
つまり、少女が言いたいのは、
「私達が子供たちの訓練をするのは、子供たち自身の為、ということか」
「は。軍人である以上、国家の意思に抗うことはできません。なればこそ、与えられた状況でいかに生存確率を上げてやれるか。それが、我々陸軍士官の…第一特務連隊の大人がするべきことかと」
っふ。
思わず、その少女の立派さに笑いが漏れる。
何が、帝国の大人だ。
一番餓鬼のような考え方をしていたのは私ではないか。
「貴官の言うとおりだ、藤崎大尉。敢闘精神の疑われるような発言を訂正する」
軍人は、過ちを言葉ではなく態度で示す。
「副連隊長。明日の軍事訓練に際し、士官以下の任官式を挙行する。分隊長に伝達し、仮組みの分隊に伝えるように頼んでくれ。勿論、全官制服でな」
「は!」
藤崎大尉が、軍人の顔をして部屋を出ていく。
「まったく、本当に明日から忙しくなるな。黒条…久しぶりに奴に会いたいなあ」




