悪魔は嘲笑うⅣ
「夜叉人海軍中将閣下並びに黒条海軍少将閣下のごとうちゃく~!」
黒い燕尾服に身を包んだ、侍従と思しき数名の男達が、被っていたシルクハットを右手で取り、僕達の乗った車を最敬礼で出迎えてくる。
「藤崎少佐、随分と大層なお出迎えだな」
正面に座る、微笑を浮かべた女性に声を掛ける。
すると女性は、浮かべた微笑はそのままに、迷いなく言葉を返す。
「我が国の英雄がご参内なされたのですから当然でしょう」
「それにしても、宮相閣下や次官殿に侍従長殿までもいらっしゃるのは過剰なのではないか?」
外で待つ、燕尾服の男へと視線をやりながら、再び女性に話しかける。
しかし、
「英雄のご参内ですから」
キッパリと言い切り、剣帯から外していた軍刀を再び腰に据えると、一足先にドアを出て侍従たちの方へと向かっていってしまった。
「あの反応、どう思う?」
今度は、隣に座っている黒条に対して問う。
「確実に何かしら裏はあるでしょうが、現状では何とも」
そういって、両手を上げて大袈裟にポーズをとる。
「夜叉人閣下、黒条閣下。到着いたしました、どうぞ」
そうこうしているうちに、運転していた兵と助手席に座っていた兵の二人が、藤崎が開けたドアと同じ方のドアを静かに開けながら、僕と黒条に降車するように促す。
「…うむ」
「ご無沙汰しております、神崎宮相閣下」
降車して、すぐにこちらへと歩み寄ってきたその男に声を掛ける。
見て分かるほどに高価な黒い燕尾服に身を包み、純白な蝶ネクタイを締め、顔は、年齢を感じさせないほど若く、鼻下には最近の紳士らしい整った髭が生えたその男こそ、この場に置いての最上位者であり、帝之懐刀十二振リを纏める長。
そして、帝の腹心
「こちらこそ、急な呼び出しにも関わらず参内して頂き感謝する、夜叉人君、綾音嬢」
神崎達郎宮内大臣である。




