表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死なずの君に送る歌  作者: 琴乃葉楓
1/48

出会い

きっと、君はだれが死んだとしても悲しいと感じることはないのだろうな、と僕は思う。

僕…夜叉人篤人(やしゃじんあつと)と彼女…黒条綾音(こくじょうあやね)が初めて出会ったのは、まだ桜の華が咲く四月の初旬のこと。


辺りは、入学式やら入社式何てもので少し騒がしく、道行く人もどこか浮ついた雰囲気があるのを感じながら、僕は一人歩きなれた道を迷いなく歩いていたあの日。

黒条は、鎖三月(さみつき)橋という地元の橋の上から見える、海を覗いていた。


別に、普段だったら海を見ている人間がいたとしても、毛ほども気には留めなかっただろう。

それほど、珍しくもなんともない光景のはずなのに、僕は彼女から目を離すことができなかった。


珍しくもない黒髪で、あえて気になるところを上げるとするなら、目の色が桜よりも鮮やかなピンク色ということ。そして、身につけているものが、紺色の学ランに似た軍服であったというくらいだ。


だが、この街は海に面した街ということで、海軍の基地もあり軍服を着た人間も多い。

女性の軍人こそあまり見ないが、別に珍しいとも言えないだろう。だが、否、それでも、僕は彼女から目を話すことができなかったのだ。


しかし、彼女は僕の存在に一向に気づく様子がない。

ただ、静かに、波打つ海をその瞳に捉え続けている。


車の通る音と波打つ水の音が聞こえる程度の静粛を、唐突に少女が破り去ったのは、僕が橋についてから3分程が経った頃だった。

「あ、にゃん太郎にご飯あげるの忘れた。」

そう言うと、彼女は僕が歩いて来た方角へと走っていってしまった。

警察手帳に似た、紺色の生地で縁取られた軍手帳を残して。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ