夏。三人の少年は線路の上で。
足元で石が鳴る。
「歩き辛え、歩き辛え」と太一。
「枕木の上を歩きゃいいだろ」
健司が唸る。
「それか、哲太の真似でもしろよ」
一番身軽な哲太は、ふらつきもせずに線路の上を歩く。
「哲太みたいに歩けるわけねえ」
名前通りに腹の出た太一が泣き言を言う。
「まだ着かねえのかよぅ」
「うるせえな、こいつ。連れてくるんじゃなかったぜ」
「ここで一本やり過ごしてえんだ」
哲太が線路の上で振り返る。
「トンネルん中で出くわしちまったら、お陀仏だからよ」
その声が聞こえたように線路が揺れ始める。