表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

〆の言葉

作者: 鳳仙

私が彼に出会ったのは、7月7日。

いつもと変わらない、仕事終わりの帰宅中の事である。


7時を過ぎて退勤後、私は自宅まで自転車を漕いでいた。

周りには健康のためと言っているが、ただ純粋にお金がないので車を買わずに節約をしているだけなのだ。


自分でもつまらない男だと思う。

だけども、ドラマティックな人生なんかよりは無難な人生の方が幾分かマシだと考えているので、後悔はしていない。



そんな日常に異物が混入してきたのだ。

このような書き方は失礼かと思うが、敢えて言おう。

この時の私の直感は正しかったと。


職場と自宅の中間地点に大きな墓地があるのだが、どうやら今日は普段と違い墓地の近くに人影が見えるのだ。こんな時間に墓地の近くにいる人間だと考えられるのは…と思考を巡らせている最中に、急に声をかけられたのだ。


「お兄さん!

頼み事があるんだけど、聞いてくれるかな?」


私は思った。

きっと私の後ろに誰か友人がいて、その人に話しかけているのだろう。

関わらないのが吉。 きっとDQNと言われる関わり合いも縁もない人だろうからと。


しかし、期待は裏切られたのだ。


「いや、無視は酷くないですか?」

「あ、ちょっと待って、そこの青い自転車のー」


はい詰んだ。

埼玉に出張行った時は酔っ払ったDQNと鬼ごっこを1時間したが、今はそんな若くないし明日も仕事だから関わりたくないな…


この間、僅か1分程であったと思う。

「私のことですか?」


そこで件の異物が、にっこりと笑って私を見つめてきた。

「あ、やっと話しかけてくれたんだ!」

よく見て見るとDQN…いや異物は、160cm程の身長で髪の毛は色を抜き過ぎたのか、金と言うよりは白に近い髪色で、かなり痩せていた。


「お兄さんさ、お願い聞いてくれないかな?」


確かバックに、カロリーメイトかブラックサンダーが非常食で入っていたっけな と。


「カロリーメイトとブラックサンダーどっちが良いかな?」


「いや、え? なんで?」

異物は明らかに困っているようだ。どうやらお腹が空いているのではなく、現金が目当てのようだ。


「悪いね。

僕の全財産では君を満足させられないようだし

心苦しいけど願いを叶えられないようだから帰宅するね 」


「いや、お金が欲しい訳でもないから!」

「?」



どうやら、本当に違うようだが関わりたくないのが本音だが…このまま帰宅時に着いて来られても困る。

仕方がないので、職場近くのファミレスで話を聞くことにしたが、この異物はお金を持っていなかったので結果私がご飯代を支払うことになるのだが。



異物は大人しくファミレスまで着いて来た。

あまり人が入っておらず、ファミレスは閑散としていたが店員にオーダーを伝え、この異物の話しを聞くことにしたのだ。


「君、名前は?」

「 」

答えてくれたのだが、声が小さく聞き取れなかった。

さっきは、もう少し声が大きかったのだが、私もあまり興味がなかったので、そのままにした。

何を話したか、はっきりと言って覚えてはいない。

つまり、中身のない話しだったのだと思う。


そんな微妙な時間も急遽終わりを迎える。

ご飯が届いたのだ。微妙な時間が終わってホッとした一方早く要件を確認し帰宅したい と言うのが本心であった。


そうして、お互いご飯を食べ終わるまでは中身のない話しをして、食べ終わった頃合いで要件を確認した。


「お願いって何? 内容によっては聞けないよ?」

異物が答える。

「このノートの中身を読んで欲しい!」


こいつ声大きく話せるのに、さっきまでなんだったの?

てか、え? これ読むの? いや…え?


そんな嬉しそうな目で見られてもさ、死んだ魚みたいな目の私が見えないかな?

まだ、違う絡み方をされる方が対処に頭が回るわな…と思っているなか、異物が言う。


「早く読んで意見を聞かせて欲しい!」


やり取りをしても時間の無駄のように感じるため、大人しく従うことにした。

はっきり言ってしまうと、字が汚くて解読に時間はかかるし誤字脱字が多くて困ったが、何とか読んだ。

なので率直に言うことにした。


「読み物として字が汚くて内容より、そっちに目がいって

しまった。

けど内容は、嫌いじゃないよ!」


異物は、字が汚いと言われたのがショックのようだった。

しかし、内容が嫌いじゃないと言われて少しだけ嬉しそうに感じた。

もしかしたら、私が罪悪感からそう感じたかっただけかもしれない。ただ、私にはそう思えたのだった。


その後、異物が急にこんな事を言い始めたのと合わせてペンで走り書きを始めた。

私は時間的にそろそろ帰りたい気持ちが限界まできていたが、異物は何か書きながら話してくるのだ。


要約すると、この文章を私以外にも読んで意見を欲しいと。

そう言う事らしい。

私は面倒ごとが嫌いだが、駄々をこねられても困るので要求に答えることにした。

このサイトに登録をしていたものの、使っていなかったのと誰かの目に着くかは分からないが、断るよりかはお互いの要望を叶える。

異物は承認欲求。私は厄介ごとと早く縁をきり、寝たい。


だから答える事にしたのだが、解読に時間は掛かるし言葉自体も間違えていたので、ある程度直す事にしたのだが…

最後は諦めることにした。



何とか書き上げたが、本日も仕事のため一刻も早く寝たいのが本心であり、あのような文章を公開した私もどこかネジが弛んでしまっているかもしれない。


あの異物が今後どうなるか、私は知らない。

厨二病から目覚めるのか。来週には転勤でここを離れるため分からないが、下手に人に絡み無銭飲食にならないようになって欲しいと思う。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ