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クロスタイム・マジプロ!第2部~セイレイの炎~  作者: 異星人
第4章 新たな夢に向かって
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最終話 ≪Last Dream。ドリーム・パレード(完)≫

「それって、つまり愛香さんのカゲがデリュージョンになったように、神様のカゲがアンシンであるってこと!?」

「夫婦は一心同体ってことか。」

「まだ夫婦じゃない!ただの恋人!」


自分と神を『恋人』と言うストロークに、エリミネートはびくっとしたが、すぐ笑顔になれた。


「そうっすね。お似合いカップルっす!」

「それはどうかな。」

「え…?」


アンシンの嘲笑いに、エリミネートは慌てた。


「われは地球のすべての存在の悲しみ。なんじが一人にされた時、片思いで泣いた時もー。」


エリミネートの顔が真っ青になった。


「なんじが父を恨みながら重ねた怒りもー。」


インターセプトは悔しくて、拳を握りしめた。


「なんじが救え切れなかった命に持つ悲しみさえー。」


ずっと昔の痛みを刺激することばに、クラッシュは唇を嚙んだ。


「われは知っておる。そう、お前らの弱点がわかるわれが、まけるわけないー。」


アンシンの体、つまりカゲの中から、三人の人が作られて、前へ踏み出した。


「俺は君を愛してない。」


神の形をしたカゲはエリミネートを見下ろした。


「お前は、父をほっといて、幸せになるつもりか!」


酔っ払いの父がみかさを責めた。


「私なんか、気にしてなかったよね?」


いつかの愛子が救えなかった乙女が涙を流した。


「あなた…。」


エリミネートは深呼吸した。


「俺たちの弱点ばかり勉強したようだな。」


インターセプトが手をほぐした。


「そう、あなたはわかってない。私たちの強さが!」


クラッシュの叫びと共に、エリミネートは拳を握りしめた。冒険者の森でエリミネートは、ウィルヘルミーナは教わった。胸が痛くても、それさえ愛。すべての痛みが重なり、大人になっていく。


「自分は神様の幸せを願うっす!神様に悲しくなって欲しくないっす!」


エリミネートの体から、炎が燃え上がった。瞳の奥から燃える炎。それは、いずれ嘘なる痛みを食べつくした。


「ああ!俺は幸せになる!文句あんのかよ?」


やっと気づいた。チャレンジに挑み、そして新たな力を得るたび。いつになってもみかさは幸せを求めていた。世界的なミュージシャンなんか望んでない。それは父の夢。父の人生の代わり。


「俺の命だ、俺の人生だ!誰にも、邪魔はさせねえ!」


そう、普通な女の子として生きていきたい。それがみかさが心から祈り続けたこと。だから、みかさは今、嵐を起こす。過去のかけらを、風に奪い去ってほしいから。


「あの日、気づいた。」


クラッシュは救え切れなかった命と向き合った。


「変わると決めた!」


もうだれも一人にさせない。みんなの力に、頼りになりたい。そう思い続けたら、いずれ自分の夢が、一番大切なことが分かった。


「私はもう、苦しんでるだけの私じゃない!」


桃色の光がいつかの少女を包み込んだ。光が差した場所に花が咲いた。


「なんー!」


王冠は三人の思いに答えてくれた。三人の背中に、大きな羽が出来た。空へ舞い上がった三人は手を重ねた。


翼を背負ってる真っ白な戦士。いや、彼女らはもはや『戦士』なんかじゃない。『天使』と呼ばれるべき。


「私たちは、過去に留まりたくない!」

「未来へ進むんだ!」

「それを邪魔するなら、許せないっす!」


エリミネートはマイクを握りしめた。インターセプトはギターを捕まった。クラッシュはハープを手にした。


赤い炎。青い風。そして桃色の光。三つのエレメントが重なって、新たな旋律を生み出した。


「マジプロ!ドリーム・パレード!」

「ぐあああぁあ!」


心を癒せるハープの音色。激しく吹き荒らす願いのトルネード。歌姫の優しい声が重なって、大いなるパレードが始まった。


疲れているものに居場所を。悲しむものに温盛を。絶望するものに新たな夢を届ける大きなパレードに世界中は包まれていく。



「やっと…。」


変身が解けた愛子が座り込んだ。


「終わった…。」


みかさは草原に横たわった。


「みたいっす…。」


ウィルヘルミーナは座り、大空を見上げた。黒雲がなくなり、太陽の日差しが現れた。


「もう、疲れたっすよ!」

「うぅ…。フレームエンプレスの時までは、愛香さんが一番疲れたと思ったのにぃ…。」

「俺たちもぼろぼろだな…。」


なぜか、ストロークから返事が来ない。三人はストロークを見た。ストロークは『ドリーム・パレード』の時に得た大きな翼を背にして、遠い空の向こうを見つめていた。


「わっ、ストローク!その翼、すごく似合う!」

「そうっすよ。自分たちも、あんな感じだったっすかね~。」

「うん、うん!きっとそうだよ!」


三人は戦いの真ん中で翼を得た。だから、お互いの姿を眺める暇はなかった。今更だけど、ストロークの姿を見て、想像の翼を広げるだけ。


「だよね、みかさちゃん!」

「…ない。」

「え、なにが?」

「ありえない…。」


翼を広げて、空を見上げてる純白の少女。『ドリーム・パレード』の力を手に入れたストロークは、まるで初めて会ったあの頃のよう。


「あの姿…。俺と出会った時の…。」

「それって…?」


突然に現れて、みかさを助けてくれた天使は自分を『ストローク』と名乗った。でも、あの頃のストローク、いや、愛香はデリュージョンであった。


アリバイの意味。一人は、同じ時に二つの場所にいられない。そう、あの日にみかさが出会ったのは、存在してはならない人。


「愛香さん、これってもしかしてー!」


愛子が急いで愛香を呼んだ。でも、愛香は空を見上げ、何かを呟いてるだけ。まるで、人に見えない何かを眺めてるよう。


「見える、見えるわ…。今までのすべてが…。」


そう、今の愛香の目にはすべての時間が見えていた。いつか存在してた時間。なかったことになった時間。いずれ来るべきの時間も。


「そう、そうだったんだ…。過去と未来が交差するんだ…。」

「あ、愛香さん?」

「やっと、やっと分かったわ!」


愛香はまぶしい笑顔で、みかさの手を取った。


「みかさちゃんが見たあの日のストロークは、今の私。つまり、未来から来た存在なのよ!」

「えええっ!?」


世界を支配していたデリュージョンが、ストロークの姿となって現れた理由。二人は元々別の存在だったから。


「今の私が合いに行くんだ。あの日のみかさちゃんを!」


翼を背負ってる白い天使。夢を失っていた愛香にはとてもならない存在。それは今のストローク。みかさにとっては、未来の愛香。


「起こったんだわ、奇跡が…。過去と未来の交差点・クロスタイムが!」


ストロークは両手でみかさの肩を掴んだ。


「未来の私と、過去のみかさちゃんがあった。そこから、すべてが始まるのよ!」


ストロークに助かったみかさは、彼女が残した言葉を手探り、銀河の町へたどり着く。そして、愛子と出会い、マジプロとなり、ウィルヘルミーナの相談に乗り、彼女と仲間になる。


「過去が未来を変えて、未来が過去を作った!」


未来からの介入がいないと起きない過去。過去があってこそつないだ未来。時間の女神から与えられた、『今』と言うプレゼント。


「そうか。変身できない愛香が現れた理由は…!」


神は誰か愛香の名を穢してると思い、みかさから教えてもらったステージへ行った。だが、そこに残されたのは、金色に煌めく時間の欠片。それは確かなストロークの気配。


忘れられない優しい香りに、神は直感的に気づいた。わけわからないが、みかさを助けてくれたストロークは、本物だと。


「だからー。」


ストロークははしゃいだ。すべての謎が解けた今、みかさを守れることが幸せ。力になれたことが誇らしい。


「私、行ってくる!みかさちゃんのところへ!」

「ちょ、待ってください!」


愛子が愛香の腕を掴んだ。


「そんなことしたら、また時間が混ぜてしまうんじゃー。」


タイムパラドックス。過去を変えたら、『過去を変えた未来の自分』はどうなるか。変わられた時間に、『過去を変えた自分』の居場所はない。だって、変えられた過去から続いてる未来には、『過去を変えた自分』がない。今の自分とは別の自分がいる。そして、その『別の自分』が過去を変えない。すると、過去も未来も存在できなくなる。


「大丈夫さ。」

「神様…?」


でも、もし過去の自分と合えないなら。そして『未来の自分と合った過去の自分』が、パラドックスを作らないなら。


「俺にはわかる。今の愛香ならできる!」


過去のみかさの出来事を、愛香が再現することができるなら。未来はそのまま。過去もそのまま。なにも変わったりしない。


「私にもわかるわ。みんなからもらった『ドリーム・パレード』の力の使い方!」


ストロークは再びみかさの手を取った。


「みかさちゃん。今、合いに行く!」

「愛香さん…。」

「心配しないで。すぐ戻ってくるわ。あんたたちのいる未来へ!」


ストロークはみかさの髪を優しく撫でてくれた。そして、過去へのポータルを開き、その中へ飛び込んだ。今の未来をいらせるために。

過去、いつかのコンサートホール。


「あなた、この子まで殺す気?」

「もうやめて、父ちゃん!」


みかさや母の叫びが聞こえる場所に、ストロークは羽ばたいた。


「家族さえなかったら、夢を叶えたはずだ!」

「みかさ!」


みかさの父の妄言が聞こえるステージの下。みかさに手を出そうとするカゲに、ストロークは手を伸ばした。


「ぐあああ!」


みかさに手を差し伸べた瞬間、みかさの父のカゲは消え去った。


そう、ストロークには人が救えない。彼女の強さはあまりにも大きなものだから、救う前にカゲが溶けてしまう。


だからきっと過去の、いや、未来のストロークはみかさの父を救えなかった。


でも、それでいい。これは決まった未来へ続く道。過去を変えてしまえば困る。


ありのまま、自然に。流れる時間に身を譲るだけ。


「あなたは?」


みかさの問いかけに、ストロークは切なく笑った。みかさの頬を伝う涙が、胸の痛みになるから。


「私はマジプロ。銀河の町のストローク・プロミネンス。いくつの時間を越えて、やっと、貴方に会うことができました。」


そう、きっとこうなるべき。そして始まる、四人の物語。


「ミライで、待っているよ…。」


大丈夫。すぐ会えるから。未来で待っていてくれる、あなたがいるから。勇気を出して、未来へ進んでいける。


『ドリーム・パレード』の力が消えていく。その力は、まるでみかさだけを守るため存在したよう。


「ま、待って!」


消えていくストロークに、泣きべそのみかさが叫ぶ。


「父ちゃんを倒してくれてありがとう…!」


いままでみかさが語った過去が、未来によって現実になる。時間が、『ドリーム・パレード』の力が導いてくれた交差点。それこそ、『クロスタイム』。


ストロークはそっと笑った。そう、あなたは私を助けてくれた。だから私もあなたを救ってあげたい。


私がいまここにいるのは、きっとあなたに出会うため。


出会ったから、私たちの時間は進んでいく。止まらない時間を、君と一緒に歩いて行く。


支えあい、笑いあい、時々喧嘩もする日々を、一緒に過ごして生きましょう。


君との絆が、未来で待ってるからー。


ストロークは未来へ戻った。過去に一人の少女を残して。


「銀河の町のマジプロ、ストローク・プロミネンス…。」


空から白い羽が一つ、降りてきた。翼を手にしたみかさは拳を握りしめた。


そして、過去は動き出した。




完。

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