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クロスタイム・マジプロ!第2部~セイレイの炎~  作者: 異星人
第4章 新たな夢に向かって
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第八話 ≪First Dream。歌手(1)≫

夢見る者の底力を今、解き放つ。




第八話 ≪First Dream。歌手≫




四人は神のポータルを使い、アメリカへ。


アメリカと銀河の町の一番の違うとこは『ダイバーシティ』。黒色の神と瞳が並んでる銀河の町とは違い、アメリカにはいろんな人種がある。


髪の色が違う。肌の色が違う。すれ違う人を見ると、目色も色とりどり。虹彩の色は、なんと五つもある。


「へえ…。」


ウィルヘルミーナはちょっと浮かれて、周りをキョロキョロ見まわした。ここには、自分と髪の色が同じ人もある。目の色が同じ人もある。


(自分の似てる人がかなり見えるっす。そういうことは…!)


ウィルヘルミーナの胸がドキドキした。


(自分のこと、『おかしい』と思わないかも!)


銀河のまちのみんなは、夜空に似た美しい『黒』を持ってる。風が振ると、その黒は流れる水のように豊かな動きを見せる。天の川を思い出せるその色が、うらやましくて。


ウィルヘルミーナはいつも黒色を欲しかった。自分だけ持ってる赤毛が恥ずかしかった。


でも、ここ、アメリカは違う。金髪もいる。ブラウン系のヘアカラーも見える。なにより、自分に似てる『赤』もいる。


「これ、もってけ。」

「なんだ、これは。手前、また変なこと作ってねえだろう?」

「みかさちゃん、神様にもうちょっと優しくしてよ。親しき仲にも礼儀ありってこと。」

「親しくねえから大丈夫。」


それだけではない。肌の色もみんな違う。黒から白までのグラデーションを、ウィルヘルミーナは目に刻み込んだ。


「これは、お前らの低い英語レベルを隠してあげる魔法だ。」

「はあ?なにをー。」

「見てわからないのか?通訳機だろう?ほら、はやくつけろ。どうせお前ら全員、俺とはぐれたら迷子になるから。」

「ううっ…。」

「悔しそうなくせに文句は言えないのか。おもしろ。実力テストの点数がお楽しみ。」

「このっ!」

「み、みかさちゃん、落ち着いて!」

「ほら、お前も…。」


ここなら、こんなに多くの個性が集まってる国なら、自分の『変』なとこも、受け入れてくれるのではー。


「おい、ウィルヘルミーナ!」

「ひゃっ!」


ウィルヘルミーナはふわふわの夢から目覚め、現実へ落ちた。


「なにしてんだ、お前。」

「す、すまないっす!」


大好きな神の声さえ聞こえないぐらい、ウィルヘルミーナの心はそわついていた。鼓動の音でいっぱいいっぱいで、耳にもうなにも入ってこない。


「ミナン、大丈夫?」

「しっかりしろ。」

「心配かけてすまないっす。もうへいきっすから。」


ウィルヘルミーナは通訳機をもらった。耳につける音声翻訳機のモデルは、エアーポッズよりも小さくて可愛い。


「これからどうする、愛香?」

「まずは情報収集よ。どんな思いが時間を歪んだのか調べましょう。」


愛子たちは二手に分かれた。愛香と神は、道を尋ねるため、次にストリートへ。愛子たち三人は、同じ場所で『時間』を調べることに。


「どうしますか?」

「俺、初めて合ったやつと話すのは苦手さ。」

「人見知りってことっすね!」

「ちげーよ!」

「じゃ、私が!」


愛子が手をあげた。町の外をあこがれた愛子は、いつも他国の人と話し合うのが夢だった。ワクワクを抱いて、愛子は白人の男に声をかけた。


「あの、すみません!」

「…。」

「聞いてみたいことが、あれ…?」


男は愛子を見下ろして、相手もせずに過ぎていく。


「声が小さかったのかしら…。よっし。もう一度ー。キャアッ!」


愛子の後ろから歩いてきた女は、愛子を見て顔をしかめた。彼女は通り過ぎながら愛子をおしのけた。


「なんてやつだ!おい、待てよ!」

「みかさちゃん、落ち着いて!」

「が、我慢するっす!」


愛子とウィルヘルミーナはみかさの両手にそれぞれくっついた。でも。みかさは簡単に落ち着かない。『はなせ』って叫ぶみかさを止めるため、二人は一所懸命。


「わあっ!」


そのため、ウィルヘルミーナの通訳機が耳から抜けた。ウィルヘルミーナは急いで通訳機を探した。


「す、すまん…。」


みかさはあがきを止めた。


「一緒に探そう?」


愛子が近づいたが、ウィルヘルミーナは首を振った。


「自分一人で大丈夫っす。」

「でも…。」

「みんなに迷惑かけたくないっすもんね。」


ウィルヘルミーナは跪いて、地面を探った。でも、どうやっても通訳機がみつからない。耳につける小さなモデルだから、なかなか探せない。


「Here, take it!」


ウィルヘルミーナに、誰か手を伸ばした。その真っ白な手の上には、ウィルヘルミーナの探していた通訳機がのせていた。


「あ、どうもありがとうー。」


感謝してるウィルヘルミーナを、男の子は怪訝な表情で見つめた。やっと通訳機をつけてないことを思い出したウィルヘルミーナは、英語で感謝した。


「Thanks!」


通訳機をもらったウィルヘルミーナを、男の子は助け起こした。エスコートに慣れてないウィルヘルミーナはちょっと戸惑った。


「what year is it?」


気を引き締めたウィルヘルミーナは、彼に今の年度を問いかけた。ニュースによると、ここは時間が混ぜた世界らしい。だからまずは、ちゃんと情報を集める。


「I’m 1920s.」

(アイアム、ですって?)


首を傾げるウィルヘルミーナとは違い、話した本人は違和感を感じない。


(そうか、ここは時間の決めてない世界。)


時間の歪み。それは特定の時間に人を結んでるわけじゃない。すべての時間の人が平等に交われてる。だから、時間など問う必要がない。


(早くみんなに知らせないと…。)

「ミナン!」


後ろから聞こえてくる優しい声。喜ばしい仲間の声に、ウィルヘルミーナが振り向いて手を振った。その姿を見ていた男は、愛子たちを嘲笑った。


「Are those chinkies your housekeepers?」


ウィルヘルミーナの足が立ち止まった。固まったように動けない。彼は大切な友達を家政婦にした。仲間の格を下げる侮辱行為。抑えきれない怒りを、ウィルヘルミーナは隠さずあらわした。


「No, they are NOT. You racist!」


愛子とみかさに聞いてほしくない。聞いたとしても意味を分かってほしくない。だから、ウィルヘルミーナは彼女らの代わりに腹を立つ。


「ミナン、落ち着いて!」


でも、やはり彼女らも聞いたよう。神からもらった通訳機は、なんて高性能だ。


「落ち着けないっすよ!」


先、押された愛子の代わりにカッと声を張り上げたみかさも、今はただ静か。友達を傷つけるものは許さない。でも、自分の名を汚すことなんて、気にしない。そういう態度が、ウィルヘルミーナの心を痛めた。


「すまない。」


愛子がウィルヘルミーナを捕まってるうち、みかさはウィルヘルミーナの代わりに誤った。


「Whoa, I didn't expect from Japs to speak English!」


彼はゲラゲラ笑いながら過ぎていく。みかさは彼の話に何気ない顔するだけ。それが悔しくて、ウィルヘルミーナの世界が滲んだ。


「どうして、どうしてあんなひどいことを…。自分には優しくしてくれたのに…!」

「当たり前だろう。お前は『白人』。彼らにとっての『美人』だから。」


戻ってきた神から語られた真実。それは、稲妻が体中を駆け巡るような衝撃。


「銀河の町のみんながお前を傷つけたように、こんどは彼らが銀河の町を見下ろす。」


アメリカがサラダボウルと言われる意味。異なる人種がいくつもあるが、一人一人の個人として存在してる。少数民族を締め付けて、多数の人の望む形に捏ねたりしない。混ぜない材料が重なっておいしいサラダをつくる見たいに。


だが、粉末にして、捏ねたこそ出来上がるパンにはならないから、時々胸が痛い経験をするのだ。


「そんな…。」


いろんな人がいる場所。それは、みんなが幸せになれる場所だと思った。しかし、『完璧』なんていない。みんな、自分なりの間違いやいいとこを抱いて生きる。それは人も国も同じ。でも、それに気づかなかったウィルヘルミーナはがっかりしてしまった。


「随分、時間が混ぜてるみたいだな」

(神様も…。)

「あらまし14世紀から21世紀までありそう。」

(愛香さんも…!)


何気ない。怒ってない。それが悔しくて、唇を噛んだ。


「そんな顔しないで。17世紀のアメリカなら、これほど当然のこと。」


愛香はむしろ、ウィルヘルミーナを心配してくれた。へいきそうな笑みに、心が割れそうになる。


(神様は言ってくれたっす。『お前をおかしく思うやつは誰もねえ』と。)


初めて出会った時、神からもらったやさしさを思い出す。相談してくれた愛子やみかさのことも、みんなのために戦ってくれる愛香のことも。


(ああ、そうっすよ。自分、受け入れて欲しかったっす。愛されたかったっす。だからって、自分以外のみんなに差別されて欲しくないっすよ…!)


ウィルヘルミーナは目をぎゅっと瞑った。自分も愛されたいと望んだ。自分だけ愛されたいとは思ってない。その微妙な差に、ウィルヘルミーナはうつむいてしまった。


「…。」


みかさは後ろで、元気のないウィルヘルミーナをじっと見つめていた。



五人はレストランに行って、お食事するため座った。でも、いくら経っても、ウェイターが来なかった。そのうち、隣に座ってる、来たばかりの白人はもう料理が出た。


「あのー。」

「ったく、待ちなさいよ!アジア人は随分せっかちだな!」


話をかける前、シェフに怒られた。彼らは愛子たちを無視した。理由はみんな同じ。彼女らが、アジア人だから。


五人はレストランを出た。お金を持っていても、お店に入られない。誰もが動物園の異国的な命を見物するみたいに、愛子たちを興味深い視線で見つめた。


10分以上町をさまよって、やっとみすぼらしい建物の中のカフェへ入った。


(ふう…。)


ウィルヘルミーナはコーヒーカップを覗いた。一緒呪った見た目が、自分を見つめ返した。ここに限って、誰より輝く姿が。


なのに不思議。自分を見つめてくれなかった人も、見た目だけに注目する人も、誰も『本当の自分』なんかわかってくれない気がする。


(結局、自分の望みは叶えないっすね…。)


カップに映された顔は、波紋と共にコーヒーの色にしわが寄った。心配かけたくなくて、ため息を口にせず、ただ喉に飲み込んでたウィルヘルミーナは、後ろから聞こえてくる歌声を聞き、顔をあげた。


(きれいな歌声…。)


振り向いたら、マイクを持った少女がいた。彼女の後ろ、バンドメンバーがそれぞれの楽器を演奏していた。


「僕ら歩んだ道、離れていても、君の指先がどこを向かっても。」


優しい音色がカフェにあふれた。


「一つになれる、一つになれる…。」


ライブの後、ボーカルが手を振った。カフェのみんなが歓声を上げた。


(すごい…。みんな一つになってる…。)


ウィルヘルミーナはボーカルをぼうっと見つめた。


(これが、歌の力…。)


歌を聴いてる時はみんな同じ気持ち。そう、見た目は違っても、心は一つ。


「ねえ。」

「え…?」


ぼうっとしていたウィルヘルミーナは、突然声をかけてくる少女を見て、我に返った。


「先からずっと見ていたけど、もしかして時間ある?」

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