表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロスタイム・マジプロ!第2部~セイレイの炎~  作者: 異星人
第3章 過去を乗り越えて、未来を抱きしめて
11/33

第三話 ≪Third Fire。一番星(5)≫


「なにもかも、気に入らないわよ!」


フィルムはイヤリングから不死鳥の羽を一個取った。そして、手のひらに置いた羽を吹いた。空から舞い降りた羽はフィルムの影にくっついた。


「沸き上がれ!ヤケタカゲ!」

「ヤケタカゲ!」


新たなカゲの登場で大変なことになった。


「はやく逃げろ!」

「押すな!」


カゲから逃げる人々は押して、押される。


「舞ちゃん、どこ?」


親は遊び場に走ってきて、子供を連れて逃げた。まつりを楽しんでいたみんなに『生き残りたい』という本能しか残ってない。


そのため、まつりは台無しに。倒れる店からおいしい食べ物が落ちた。割れたあかりから火がついた。


「あはははっ!妄想帝国を捨てた人間どもにお仕置きだ!」


みかさの唇が震えてきた。


「まつりを、町のみんなを…!」


みかさは空に手を伸ばし、風を掴んだ。すると、手のひらに青きエネルギーが集まり、カードリーダーになった。


「苦しめるな!」


カードを持ち出したみかさが、大きな声で叫んだ。


「マジプロ!時空超越!仲間を守れ、インターセプト・プロミネンス!」


みかさは青き風をまとった。インターセプトはハリケーンを蹴り、風の中から現れた。


「出たわね、マジプロめ!」


フィルムは笑った。それもそう。フレームエンプレスは大嫌い。だけど、彼女のパワーは本物。


「負ける気がしないのよ!」


フィルムが拳を握りしめると、ヤケタカゲの身に異変が起きた。ヤケタカゲから、炎に燃える赤い竜が生まれてきた。竜はヤケタカゲをまとい、カゲの楯となった。


インターセプトは歯を食いしばり、ヤケタカゲにとびかかった。だが、インターセプトの拳はカゲに届かず、竜に止められた。


「ヤケタカゲ!」

「くっ…!」


カゲが襲い掛かると、インターセプトは宙返りして後ろに下がった。空を飛んでるみかさをみたヤケタカゲは、拳を握りしめた。赤い竜が拳に宿り、そのままインターセプトを殴った。インターセプトは腕をあげて、赤い拳を止めた。


「どこみてんだ!」

「!?」


拳から赤い竜が出て、そのままインターセプトを飲み込んだ。


「きゃ!!」


悲鳴をあげたインターセプトは、たたきのめされて、地面に押し込まれた。


「あははは!無様なかっこうね!まつりなんか守ろうとするから、そんな目に合うのよ!」


フィルムはインターセプトを嘲笑った。


「大体、あんたはこの町の人でもないじゃない。なんで命かけて戦士とかする必要があるのよ?」

「ある…。」

「はあ?」

「意味、あるんだよ…。」


倒れていたインターセプトは、フィルムの声を聞き、指を動いた。震えは指から手へ、手から腕へ広がった。インターセプトは立ち上がった。


「この町に来て、みんなと出会い、仲間になれた。大切な人が増えてきたんだ。」


足が震える。右腕に力が入らない。


「愛香さんが町に『愛』を広げたから!」


それでも、戦わなかや。


「二人が『町を愛してる』って言ったから!」


インターセプトはよろめきながら、前に進んだ。


「俺は戦うしかねえんだよ!」

「馬鹿馬鹿しい。ヤケタカゲ、とどめをさしなさい!」

「ヤケタカゲ!」


ヤケタカゲが再び拳を握りしめた。赤い竜がその拳に向かう瞬間ー。


「はあああっ!」

「カゲ!?」


空からクラッシュが降りてきた。彼女は重力加速度を力に変え、カゲをそのまま蹴った。


「マジプロ!エリミネート・ザ・スレット!」

「グオオ!」


エリミネートが赤い竜を攻撃した。竜は吠えながら後ろへさがった。


「今だ、クラッシュ!」

「させるもんか!」


フィルムが木から降りてきた。彼女はすごいスピードでクラッシュを狙った。だがー。


「そうはさせない!」

「クッ!」


ストロークが彼女の前を立ちふさがった。


「これはこれは、女帝さまではないですか?」

「もうやめてよ、フィルム!」

「それはできません。こっちにも事情があるから!」


フィルムの体から赤い炎が燃えてきた。それは赤い竜と同じ力。フレームエンプレスからの生霊の炎。


「負けるわけにはいかないのよ!」


フィルムが拳を飛ばすと、ストロークがフィルムの腕を掴んだ。


「あら、それだけ?」


フィルムが嘲笑った。


「フエ様との戦いで無理したとは聞いたけど!」


フレームエンプレスの力は、ストロークの力と同じ。だから、その戦いで、ストロークは全身全霊で戦った。そして、その疲れがまだ体に残っていた。


「ここまで弱いとはな!」

「ああっ!」

「ストローク!」


ストロークが息を切らせた。落ち着いたストロークは、空に手を伸ばした。金色の光が彼女の手に宿った。


「あれは…!」


ストロークは金色の宝石がさされてるクラウンを持っていた。


「モード・ナイト!」


ストロークが金色のクラウンをつけた。すると、ストロークの姿が変わった。今までは可愛いフリルの戦士のようだったが、今は違う。スカートはワイドパンツに変わり、フリルが消えて動きやすくなった。


それこそ、騎士の姿で合った。


「はああっ!」


ストロークがフィルムにとびかかった。目に見えないスピードで、ストロークはフィルムを殴った。あっという間にやられたフィルムが倒れた。


「ストローク、すごい…!」

「クラッシュ、今よ!」

「あっ、はい!」


クラッシュは拳を握りしめ、カゲをぶっ殴った。


「マジプロ!クラッシュ・ザ・シャドウ!」


フィルムのカゲは闇に戻った。舌を鳴らしたフィルムはポータルの中へ消えた。



「愛香さん、すごすぎ!」

「いや、それほどでも。」

「すごいっすよ!自分、モード・ナイトやってみたいっす!」

「私も!」


三人が騒ぐ間、みかさはずっと黙っていた。彼女はめちゃくちゃになった。まつりを切ない視線で見ていた。


「大丈夫。」


愛香はみかさの肩に手をあてた。


「今は遊ぶことばかり思いなさい。」

「でも、まつりはもう…!」

「終わってなんかないよ、一番星さん。」


愛香の指がどこかをさした。みかさは顔をあげ、つま先がさしてる人をみた。そこには、今朝折り紙の星をプレゼントした一年生がいた。


「お前は?」

「いや、あの、その、逃げようとしたけど、みかささん、あまりにもきらきらして…!」

「俺が…?」


みかさはちょっと驚いたが、すぐ落ち着いた。


「お前もバンドやってるのか。」

「え…?」

「ギターは教えられない。だから」

「違います!」


恥ずかしくて目を閉じたまま、少女が叫んだ。


「私、聞きました。みかささん、町のためにコンサートしてくれる、って。だから、やはり『一番星』にふさわしいのは、みかささんと思って…!」


他の町の人のみかさが、銀河の町のため、大切な人のため頑張ってくれた。決して屈しない意志と、それを誰かのため譲るやさしさ。


「その姿がまぶしくて…!」

「まぶしい…?」


みかさが呟いた。天才ミュージションと呼ばれたことはあるけど、ただそれだけ。だれもみかさをありのまま見てくれなかった。『天才』の下、しゃがんでるみかさを見つけてくれなかった。


みかさという星は、『音楽』の影の下、輝かずにいた。そう、音楽がある限り、みかさはみかさではない。普通の女の子にはなれない。


なのに、銀河の町にきて、マジプロになって、自分の手で戦って、誰かを守って…。そんなことは当たり前すぎて、『まぶしい』とは思えなかった。


「えっと、その…。」

「そう…。」


戸惑ってる一年生に、みかさが声をかけた。


「俺なんだ…。」


音楽という鏡を破った。すると、映るのはただ一人の少女だけ。


「俺は、『一番星』なんだ…。」


みかさは袋からフラスコを出した。その中には、大きな花が空を向いていた。


「お前、名前は?」

「に、虹ノあやです。」


みかさはあやの手にフラスコを置いた。


「探してくれてありがとう、あや。」

「…!はい!」


愛子たちは木の後ろに隠れて、みかさの笑顔を見ていた。決して消えない、可能性という笑顔を。



みかさは丘を登った。丘の上には愛香がいた。愛香は座って、祭りをみていた。


「あら、みかさちゃん。」


愛香はみかさのため、少し右に動き、席を空いてくれた。みかさはおずおず近づいて、愛香のとなりに座った。高い丘から見ると、町が小さく見えた。見下ろした町を花火がキラキラに飾った。


「まつりはどうだった?」

「まあまあです。」

「ふふ、楽しかった?」

「ちっ、違います!」


空に花火の音が鳴り響いた。天を飾る光がみかさの顔を照らしてくれた。本音をばれたみかさは、頬を真っ赤に染めていた。


「あら、そうだったの?」


愛香が首をかしげると、黒い髪が鎖骨に触れた。風に揺れる長い髪と、優しい瞳。とても嘘などつけない空気だった。


「『好き』も『愛情』もありません。ただ…。」


みかさは唇を嚙んだ。視線を落とすみかさを、愛香はずっと待ってくれた。


「気になります。愛香さんが散らばった愛情がどんな形に咲いたのか。」


知りたい。見つけたい。二人が町を愛する理由。


「だから…。」


そう、これは『好き』じゃない。ただの好奇心。きっとそうだ、とみかさは何度もつぶやいた。


「聞かせてください、町のこと。ちょっとだけいいから…。」


恥ずかしくなったみかさは、小さな声で話した。そんなみかさを見ていた愛香は膝を曲げて座った。


「愛香さん?」

「おいで。」

「いや、そんな!私なんか!愛香さんに膝枕をしてもらうなんて!」


愛香はなにも言えず、足をそっと叩いた。みかさは愛香に圧倒されて、愛香の膝に頭を乗せた。


「昔々、空をさまよう星がいました。星は、人間の世界にあこがれて、空から降りてきて…。」


最初は緊張していたみかさだったが、すぐ安らぎを取り戻した。愛香の話が続くと、みかさは目を閉じた。美しい物語は、みかさをきらきらする夢へと連れてってくれた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ