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2話。ーー落とし穴にはご注意を。(中)

「あの、失礼ですが、お嬢様。大きなお声を出されてどうなさいました?」


 私の隣から声が掛かる。後ろには私付きの侍女が居るけど……声を掛けてきたのは誰かを待ってた侍女。あーそっか。ちょっと端なくも大きな声だったかも。失敗した。


「あ、いえ、知り合いが入学していないな、と思いまして」


「ああお知り合いが……」


 私の説明に侍女サンが頷いてくれる。そうだ。この人は誰かの侍女だよね? 伯爵位以上の人には侍女が居てもよくて。私の知る限り、様々なお茶会に参加していても同じ伯爵位で彼女を連れた令嬢は見た事がない。令息には侍従で令嬢には侍女が認められているこの学園。侍女であるわけだから、どこかの家の令嬢付きなのは確か。全ての伯爵位の令嬢を私も知っているわけじゃないけど、大体の同じ伯爵位の令嬢には会っているから、公爵家か侯爵家の令嬢付きだろう。

 それならちょっと教えてもらうのもアリだよね⁉︎


「ちょっとアナタ、尋ねたいのだけど」


「私の勉強不足で申し訳ないのですが、どちらのご令嬢様でしょうか」


 あら、生意気ね。名を名乗れですって。公爵令嬢か侯爵令嬢のお付きか知らないけど、身分は私より下のはずなのに。まぁいいわ。ここは大らかな気持ちで名乗ってあげましょうか。私が名乗ると侍女サンは恭しく頭を下げた。……まぁこういう態度が取れるならいいわ。


「伯爵令嬢様でございますね。それで私に何をお尋ねでいらっしゃいますか」


「ああそうそう。アナタのご主人様にあたるご令嬢は、第一王子殿下と親しいのかしら?」


「お、お嬢様っ⁉︎ 何を仰せでいらっしゃいますか⁉︎」


 私が侍女サンの態度に機嫌を良くして尋ねたら、私付きの侍女が血相を変えて口を挟んできた。えええ、何よぉ。なんでそんなに慌てているの?


「そちら様は、伯爵令嬢様の侍女殿で?」


「は、はい。私は……」


 私の侍女が名乗ろうとしたら、目の前の侍女サンは、片手で止めて名を名乗らせない。まぁ、侍女のくせに生意気だわ。失礼しちゃう。目の前の侍女サンは私の侍女に何かをヒソヒソと話して私の侍女が顔色を更に悪くした。


「し、し、失礼しましたっ」


「別に構いませんが。今のままだとそちら様が苦労致しますよ」


「は、ははははいっ」


 な、なによっ。私の侍女に何を吹き込んだワケ⁉︎ こんなにカチコチに固まってるじゃないの! ちょっと、何か酷いことを言ったのね!


「ちょっと、アナタ! 私の侍女に何を吹き込んだのか知らないけど、私は伯爵令嬢よっ! 無礼は許さなくてよ!」


 ふふん、ちょっと権力を嵩にきてみたわ。ビビらせるには伯爵位って持ってこいよね! ……あら? でも、そういえば、この侍女サンってどちらの家の侍女なのかしら。私ってば知らないわね。さっきもそう考えていて。あ、そうだわ。高位貴族の、令嬢、の……

 こ、高位貴族⁉︎

 そうだったわ! 同じ伯爵位の令嬢では見たことのない侍女サンだった。いやでも、伯爵位の方を全員知っているわけじゃないし……っ。同じ伯爵位だったら別にこんな態度を取ってもどうということはないわっ。


「失礼ながら……あなた様の侍女殿に無礼を働いたつもりは有りませんが」


 冷静に指摘してくる侍女サン。確かに無礼だと決め付けたのは拙かったかも、しれない……けど。でも、私の質問にも答えてないしっ。やっぱり無礼じゃないの?


「なによっ。アナタ、私の質問にも答えなかったじゃないの! どこの家の侍女か知らないけど、使用人が尋ねられていることに答えられないなんて、主人にあたる人は教育不足なんじゃないかしらっ!」


 フンっ。生意気な使用人だこと! きっと主人にあたる令嬢が傲慢なんだわ!


「あら、私ってばティナの教育が出来てないのね」


 別方向から鈴の音が転がるような軽やかな声が聞こえてきて、私はその声の主を見ようと振り返ったら……


 ニコニコと笑っているのに怒っていることが分かるような……あの、人を玩具にして遊ぶ傲慢令嬢で、公爵令嬢のセレーネが、居た。


 ーーあ、これって私、詰んだってやつ⁉︎

お読み頂きまして、ありがとうございました。

何とか前・中・後の3話か、終の4話で収まりそうです。


次話は出来たら来週土曜日。若しくは5月のGWで更新予定です。

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