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2話。ーー落とし穴にはご注意を。(前)

 ああっ。この正門よ! 何度も何度もマンガで見たわ、この正門っ。この正門をくぐると傲慢な悪どい公爵令嬢が居て。そんな公爵令嬢が許せず立ち向かう正義感溢れるヒロインの子爵令嬢が居るのね! ヒロインの令嬢……確かアンネリカって名前だったはず……は他人を玩具にすることしか考えない公爵令嬢の被害者である第一王子や騎士の卵で父親が近衛騎士の副団長である伯爵家長男に宰相補佐の兄のように将来は自分も宰相補佐を目指している政務官の卵の男爵家次男と共に打倒公爵令嬢を誓うのよっ。

 でも、そんなアンネリカを異母姉のマルティナって子爵令嬢が意地悪するのよねっ。自分が転んで怪我したのが悪いくせに、それで父親から見向きされず、母親から可哀想がられて甘やかされて、悲劇のヒロインぶってる歪んだ性格の女。そして父親が連れて来た愛人の娘であるアンネリカに嫉妬するバカなやつ。それも、公爵令嬢の取り巻きとして公爵令嬢の名を笠に着てアンネリカやマルティナが惚れたヒロインの幼馴染を苦しめるバカな子。


 傲慢で人を玩具にしか考えない公爵令嬢も嫌いだけど、陰湿なマルティナの方が私はもっと嫌いよっ。アンネリカの代わりに私がマルティナを懲らしめてやりたいわ! そう思いながら正門を潜り抜けた先には、あの傲慢な公爵令嬢……セレーネって名前よ、確か……がいた。……早速、会ってしまったわ! あの令嬢に目を付けられて玩具にされるのはゴメンよ。一応貴族の最高位である公爵家の令嬢だし。第一王子の婚約者だからやりたい放題で誰も止められないし。

 しがない伯爵家の娘である私じゃあ、セレーネはどうにもならないわ。それよりもセレーネの取り巻きであるマルティナよっ! アイツなら私だってどうにか出来るわ! だって爵位が上だもの! でも見当たらないわね。セレーネの後ろには侍女が居るだけだわ。まだ入学式の時間にならないし、来てないのかもしれないわね。あら、そういえば、マルティナだけじゃなくて他にも何人かセレーネの取り巻きは居たはずなのに、誰一人として取り巻きになってないのか、誰も居ないわね。


 ヤダ、もしかして、マンガと違って現実のセレーネって取り巻きも居ないボッチ令嬢なのっ⁉︎ ウケる。なぁんだ、そんな公爵令嬢なら全然怖くなんてないわね! ヨシ、セレーネのこともアンネリカに代わって私がどうにかしてやろうじゃないっ。

 で。

 アンネリカとお友達になって、アンネリカの幼馴染の彼を紹介してもらうんだっ! このマンガって、傲慢令嬢を学園から追放して皆が平和な学園生活を送ることがハッピーエンドなんだけど、第一王子と近衛騎士副団長の息子である伯爵家長男と宰相補佐の兄を持つ男爵家次男とアンネリカの幼馴染の四人と恋愛模様を繰り広げるのも楽しみの一つなんだよね! 逆ハーっぽいけど、それは見せ方の一つで最終的には誰かを選ぶっていう乙女ゲームっぽい性質もあるマンガ。私は最終話まで読んでないけど、マンガ描いてる人が、逆ハーだけは有り得ないって断言してたのは、コミック発売記念イベントの時に確実だったし。

 ということは、一番可能性があるのは、第一王子だろうから、アンネリカの幼馴染をアンネリカに紹介してもらってもいいと思うのよっ。私の好み、どストライクなのがアンネリカの幼馴染……ハレンズだったしね!

 常にアンネリカを優しく見守っている笑顔がイイのよね! 是非、彼氏になって欲しい!


 さてさて。入学式が始まったわ! あら? アンネリカがいないわ。なんでよ? アンネリカってセレーネと同い年じゃなかった? マルティナも同い年でしょ? いや、待って。年齢はきちんと出てなかった……かも。あのマンガって年齢をきちんと設定していなかったような……。って、あら? そういえば……第一王子を見なかったわね? 近衛騎士副団長の伯爵家長男と宰相補佐の兄を持つ次男は入学していたのに。第一王子、お休みかしら? まぁいいわ。私、あの王子に興味ないし。寧ろ、アンネリカとハレンズが入学しているか、していないか確認する方が大切よ! うーん。割と多い入学生だからアンネリカとハレンズを探すのは結構大変だわ。セレーネはクラス分け試験で一位だったから目立つのね。私はセレーネとは違うクラスだけど、アンネリカとハレンズはどうだったのかしら。あまりあのマンガって詳しく描かれてなかったのよね。


 そうか。クラスがどこか貼り紙されてたクラス分けのやつ見れば良かった! 多分まだ貼られてるだろうし、帰りに見ればいっか。あまりキョロキョロしていて不審感を持たれても厄介だし友達は欲しいし。出来ればアンネリカと友人になりたいんだけどねっ。

 一応マジメに学園長の話を聞いているフリをして入学式が終わり、クラス別に先生の話とやらを聞いて、ようやく解放されてから貼り紙がされていた門の掲示板まで行くと、侍女が一人立っていた。伯爵位から上の貴族の子息・令嬢には侍女か侍従が着いて来てもいいことになっている。私も着いて来てるし、ね。きっと掲示板前のあの侍女もどこかの家の人だろう。まぁ使用人には興味ないんだよね。


「ええと。アンネリカ……アンネリカ……アンネリカ。ハレンズ……ハレンズ……ハレンズ、と」


 私付きの侍女は一歩下がって待っているし、掲示板前の侍女は私が立ったらすぐに掲示板からちょっと退いたので遠慮なくアンネリカとハレンズを探す。おっかしいなぁ。この学園は貴族の子息・令嬢は余程の事情が無い限りは基本的に入学するのだ。アンネリカの父は平凡な子爵だけど、ハレンズも一緒に引き取れるくらいにはお金に余裕がある。入学させないわけがないのに。


「アンネリカとハレンズを入学させられない程、お金に困っているとも思えないし。あ! そうか! もしかして、あのセレーネの取り巻きでアンネリカの異母姉であるマルティナの嫌がらせで入学出来てない、とか? ありかも。取り敢えずマルティナの名前も探してみるかっ」


 マルティナマルティナマルティナ……。アレ。マルティナの名前すら無い。セレーネは当然あったけど。……そういえば、三人の名前を探す間に第一王子・サンドルトの名前を見なかった気がする。


「ええ! サンドルトもいないし、マルティナもアンネリカもハレンズも居ないのっ! どういうこと⁉︎」


 私はこの時自分の思考でいっぱいだったから、周りに誰が居るとか頭の中から綺麗さっぱり消えていた。だから知らなかった。私の独り言に目をキラリとしている掲示板前にいた侍女の存在を。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

次回は3月末か4月の更新予定です。


というわけで、所謂モブの転生者の登場です。彼女視点で2話目は進んでいきます。

一応、前中後終のつもりですが、もしかしたら中・1、中・2みたいな表現になるやもしれません。

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