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5話。ーー弱者を泣かせる者はお仕置きです!(終)に(完)

「なんで連れ戻しに来たんですかね、お嬢様」


 セレーネはマルティナの呆れ口調に笑ってやる。


「あなた、わたくしの専属侍女よ? 当然でしょ」


「解雇されましたよね」


「サンドルトが居ないのだから構わないでしょう」


 マルティナはなるほど、と頷く。確かにあの男の手前、解雇して下さいと願ったのだから、居ないなら戻って来られるのかもしれない。書類上の養い親である男爵家もマルティナを引き続き養女として認めるらしい。


「ありがとうございます、お嬢様」


「あなたまるで感謝してない口調で言うわね。有り難く思いなさいな」


「それでアレコレ無茶振りされても嫌なので」


 マルティナのしれっとした言い分に可愛くないわね、と文句を言いながらもセレーネは嬉しそうに笑っている。


「お嬢様」


「なぁに」


「お疲れ様でございました。うまくサンドルトの排除まで出来ましたね」


 今度は真摯な口調で頭を下げるマルティナに鷹揚にセレーネは頷く。


「そうね。ティナの捨て身の行動のおかげでノースの気持ちが分かったし。それならばノースが持っていたという王族の証を贋物とするのが手っ取り早いと思ったのよ」


 セレーネの話によると。実際にはノースが持っていた先王の子を示す品は本物だった。だけどノースは望んでなかった。どうやら彼の母もお手つきになる気はなく、無理やりだったらしい。だから彼の父親について話しても名乗るな、と言い聞かせていたのだとか。実際に王族として勉強をさせられるだけで苦痛だったとか。セレーネから国外追放という形で新たな人生を与えられたことに感謝しているらしかった。


「お父様がノースのために従者ではなく友人として隣国に一緒にいく殿方を付けたから、あちらでも大丈夫でしょう」


 セレーネの父である公爵が持っている商会に隣国から商売の修行に来ていた商人を友人として紹介してあちらで新しい生活を始めている、とセレーネは語る。手紙のやり取りくらいは出来るらしいのでぜひあちらで頑張って幸せになってもらいたい、とマルティナは思った。


「お嬢様、現状に少しはご満足いただけましたか」


「そうね。私とリーネの仲に嫉妬して私に嫌味を言うのが生き甲斐だった目障りな男を退けたし。リーネは女王であることを誇りに思っていたのにその誇りを貶めて囲い込もうとしていたクズ男を退けられたし。満足よ」


 そのどちらもサンドルトの事だろう、とマルティナは思いながら口には出さない。セレーネほどでは無いものの、サンドルトに嫌味を言われるのはマルティナも経験済みだから。そのサンドルトはセレーネの父が嬉々として手駒にしている。これまではサンドルトの地位と権力が邪魔をしていたので煮湯を飲まされたことを忘れていない公爵が使い潰す気満々だろう。逃げ出すことも許さないだろうし。


「じゃあこれからは公爵家の跡取りとして色々頑張ってくださいね」


 現状に満足している、と聞いたマルティナはセレーネにそんなことを言う。跡取り教育もかなり終えているセレーネ。そのセレーネに見合う婿を探すことが父親である公爵の急務だろう。


「それはそれ。マルティナ。あなたがわたくしに教えたのよ? 他者を玩具にしてその人生を好き勝手に弄ぶよりも、愚者の人生を好き勝手に弄ぶ方がとても楽しいと思いませんか、と。愚者を弄ぶだけでわたくしの気持ちもスッキリ。愚者から甚振られていた弱者を助ければ弱者からの尊敬も浴びられる、とね。だからあなたはわたくしを退屈させないためにも、弱者を泣かせる者を今後も見繕うのよ?」


 ふふん、と高飛車に宣うセレーネに溜め息をつきつつも、これも自ら関わった代償か、とマルティナは諦めて「是」と応えた。

 きっと本質が変わらないセレーネだが、上手くマルティナがコントロールして弱者を助ける貴族としてこれからも生きていくのだろう。そうしてエレクトリーネ女王陛下の御世を陰に日向に助けていくに違いない。



(了)

これにて本作は完結です。

ご愛読ありがとうございました。

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