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5話。ーー弱者を泣かせる者はお仕置きです!(終)いち

「ちょっとあなた、私に拾われたというのに少しは侍女らしく出来ないの!」


「拾って下さってありがとうございます。でも私の主人はセレーネお嬢様ただお一人なので」


 半年前、転生した記憶だけでセレーネにケンカを売って危うく自分どころか家も没落させかけた私。伯爵令嬢として一から勉強し直せ、とお父様直々に言われて泣きながらこの半年間勉強してきた。家庭教師の先生たちは悪くないのよ。私がこの世界はフィクションだって思い込んでて聞く耳を持たなかったからね。……色々とこの世界がフィクションじゃないことに気付いた時に、真っ先にお父様に謝ってから家庭教師の先生たちや使用人たちを叱らないようにお願いした。聞かなかったのは私だから、と。お父様は分かっているから咎めることはしない、と言ってくれて安心した。私のせいで仕事が続けられなくなったら申し訳も立たないものね。そうして常識やら知識やらをきちんと理解した私が学園に戻って来て早々に、セレーネ付きの侍女になっていたマルティナが解雇される場面に出会した。

 取り巻き令嬢だったはずのマルティナが侍女をやっている事だってオカシイって私は気づくべきだったのに……。兎に角このマルティナのおかげで我が伯爵家は没落することもないし、私が退学勧告を受けることもないわけで。感謝して解雇されたマルティナを拾った。彼女は太々しい顔で「ああ、残念な思考の持ち主だった伯爵令嬢様、戻ってきたんですね」 なんて礼も無く言ってのけた。……失礼じゃない? とは思ったものの、まぁやらかしたのは私なのでその点については言及しなかった。

 でも、侍女仕事は私に一応付いている専属よりも出来が良いらしくて、マルティナに教えを乞うほどらしくて。マルティナの不遜な態度も使用人は誰も咎めない。でも彼女の堂々としたセレーネ主義はなんだか私も嫌いじゃないので、そこは何も言わなかった。

 でも、どうして解雇されたのか、その辺は聞かせて欲しいと言ったのに「ただの作戦ですよ」 とマルティナはそれしか言わない。なんの作戦なのよ。そう思っていたけれど、事態が目紛しく動いてそれどころじゃなかった。

 目紛しく動いた事態。

 それについては当事者ではない私では、王家……というかエレクトリーネ女王陛下から国の貴族たちに向けた発表内容しか知らない。

 でも、一つ言えるのはその発表を聞いたセレーネ主義のマルティナが誇らしそうに笑んだから、多分彼女の言う“作戦”とやらが上出来だったのだろう、と思えた。

 ーーマルティナがセレーネから解雇された日から二日後。

 エレクトリーネ女王陛下はノース殿下の存在を公に否定なさられた。どうやらノース殿下は先王の落とし胤……つまりエレクトリーネ女王陛下の異母弟ではなかったそう。……ここでもやっぱりマンガと違うわ。ノースって王子って設定だったから。いきなり現れたノースの存在はお父様だけじゃなくてあちらこちらの貴族家で、その存在を疑問視されていたみたい。学園内で密かに噂されていたものね。

 エレクトリーネ女王陛下が「先王の子ではない。証拠の品は贋物だった」 とハッキリ言ったから、違うのだろう。あら? でもノースを連れて来たのってサンドルトだよね? サンドルトってマンガだと優秀だけどちょっと優しすぎる性格だったけど、現実のサンドルトってエレクトリーネ大好きな婚約者だったよね。婚約者の異母弟だと思って連れて来たけど違った……ってどうなっちゃうわけ?

 そう思っていたら、サンドルトは騙されたとしても、確信して連れて来たことによってお咎めを受けることになったとか。エレクトリーネ女王陛下との婚約は解消。貴族籍剥奪。……それって平民ってことだよね。王子じゃなかったどころかまさかの平民に……。波瀾万丈だなぁ。その上で王都追放。でも出国禁止。……国外に出ることはダメというのは、どうやらエレクトリーネ女王陛下の婚約者として、結構国内の政治部分に関わっていたから漏らされないようにってことみたい。なるほど、それは確かに国外に出ちゃダメだわ。

 でも、婚約解消して貴族籍剥奪で王都追放って結構罰が重くない? あ、でも贋物持った偽者の王子を連れて来てエレクトリーネ女王陛下の異母弟だって公に言っちゃったから罰はこれくらい重くないとダメなのかな。その辺はお父様も女王陛下がお決めになられたことだから……と疑問に思ってないみたい。学園のみんなもそうだった。じゃあ、そういうことなのかもね。

 ちなみに偽物って言われたノースは、騙すつもりは無くてもこの国の貴族を騙したからってことで。国外追放に決まったとか聞いた。……サンドルトが勝手にノースを先王の落とし胤だって思っただけなのに巻き込まれて可哀想だとは思うけど、国王が決めたことなら誰も何も言えない。それが身分の序列なのだ、と私もこの半年間で勉強したおかげで覚えた。そういうことから考えると、私、本当にセレーネにケンカ売ったことを思い出してゾッとする。

 身分制度怖い。

 目溢ししてもらって良かったぁ。

 そう思っていた矢先だった。


「ごきげんよう。わたくしの侍女を返してくださるかしら」


 ……セレーネが我が家にやって来てそんなことを宣った。

 もう一度言う。身分制度怖い。

 速攻でマルティナをセレーネに返したよ。だって目が笑ってなかったんだもん。マルティナ返せって圧力が凄かったんだもん。

 でもまぁ、セレーネに付き従ってこそマルティナだよね、とも思うからこれで良かったのだと思う。

お読みいただきまして、ありがとうございました。


最終話も本日中に更新します。

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