表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/20

4話。ーーでは、現実世界の彼は?(中)

「では、所作が美しいと思われる女性が住んでいた所を重点的に調べられる、と」


 マルティナの確認にエレクトリーネが軽く頷き返答する。女王陛下に畏れ多くも質問することを許され直答を得られていることについては、マルティナももう慣れた。


「その辺ももう済んでいる。臣下に探りを入れさせおそらくこの者が、という女人を見つけた。だが既に死去している」


 エレクトリーネの返答に、わぁお、マンガ通りの展開っとマルティナは内心で思ったものの、辛うじて外には出さなかった。


「その女人の子息が平民にしてはかなり顔が美しくて貴族の落胤だと周りから言われているのよ。而もリーネの絵姿は平民にも人気だからね、見たことがある平民は何となく似ているなんて騒ぎにもなったらしいの」


 セレーネが補足して説明するがマルティナは顔を引き攣らせた。


「それ、不敬ですよね。女王陛下の隠し子だの先王陛下の隠し子だの言われているのと同じでしょう」


「そう。そのこともあってリーネは直ぐに調べさせたの。だけどリーネの子というには年齢が、ね。それよりも先王陛下の子という方が年齢的には分かるわ。でも先王陛下のお手つきになった者なんて、リーネにも分からないのよ。先王陛下付きの執事や侍従なんて引退しているから。手紙で下問も出来ないし、呼び出すのも一苦労。それでティナの前世の記憶とやらで実際に王家の血を引く者が居るという物語があったのかどうか知りたかったの。あと、あなたのメイク術による変装ね」


 セレーネの説明にマルティナは頷く。変装の腕が主目的で前世の記憶は付随のつもりで訊いたら、当たったという所だろう、とマルティナは判断した。


「では、かなりの確率で先王陛下の隠し子だ、と」


「おそらくは。わたくしの弟にあたる者だろう」


 マルティナが再度確認し、エレクトリーネがもう一度頷く。


「ちなみに、その者が陛下の腹違いの弟君だったとして、その者をどうなさるおつもりで?」


 マルティナとしては、その辺の確認はしておきたい。命を断つとか言われたら思い止まってもらわなくてはならないから。


「どうもこうも、引き取る。下手に勘付かれて貴族に取り込まれるのは厄介だし、それがサンドルトだったら尚のこと厄介だからな」


 エレクトリーネは引き取る、と断言する。続く言葉に政治的な駆け引きの道具にされることを懸念していることを理解したが、最後の一言には、マルティナもセレーネも厭そうに顔を顰めた。当然エレクトリーネも、だ。

 サンドルトは前世の物語では第一王子にして王太子であり、ヒロインであるアンネリカに恋する王子でもあった。一途なところが前世では人気だったけれど、裏を返せば執着心が強い。

 現実のサンドルトはエレクトリーネを女王として尊敬し女性として愛して執着しているが、隙あらば王配の座に着いたらエレクトリーネを表向き病気として一線から退けて監禁する気満々である。

 そして王配として己が女王の代わりに実権を握るつもりなのだ。それが権力欲とか王家乗っ取りとかではなく、純粋にエレクトリーネに女王という立ち位置を辞めてもらって自分だけを見て自分だけを愛してもらいたい、と願ってのことなので厄介なことこの上ない。

 腹違いの弟など見つけた日には手中にして異母弟を国王に着けて、エレクトリーネを女王の座から引き摺り下ろして嬉々として監禁して自分だけのエレクトリーネにしようとすることだろう。


「さっさとお会いして、先王陛下の落胤であることが確定しましたら即、連れて帰りましょう。私はあんな男に女王陛下を監禁させたくないですし、あんな男にこの国を良いようにされたくないです」


 マルティナはセレーネと同じ気持ちらしく、代弁していた。サンドルトは国よりもエレクトリーネの男だからエレクトリーネを手に入れたら、国の舵取りを適当にしそうで面倒なのである。

 今はエレクトリーネのために仕事をきっちりこなしているだけなのは、セレーネもマルティナも、そして何よりエレクトリーネ自身が分かっていた。

お読みいただきまして、ありがとうございました。


次話も来月更新予定。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ