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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

マジ○チ王女様は勇者召喚をするようです

作者: 満水玉

何年か前に途中まで書いたものを掘り出してきました。

 私はジャポニーズ王国の王女、ヤマーダ・ハナコだ。

 この国は今、隣国のチネ狂産主義国とカネ民主的独裁国家によって侵攻されており、甚だ不本意ではあるが我が国の劣勢が続いている。

 勿論、今の我が国の国力を鑑みれば、あの程度の相手ぐらい、150パーセントの本気を出せば余裕で勝てる。

 しかし、ただ勝利したのでは意味がない。あの頭がイカれた子豚ちゃんに、おむつを常に変えなければ生きていけない程の恐怖を!頭数頼みの礼儀知らず共に山に籠って一生出ていけない様な絶望を!

 ふぁっ○!○ぁっく!ふ○○○ぁぁ○く!!!

 おっといけない。淑女がこのようなはしたない言葉を吐いてはいけないな。


 というわけで、先祖代々伝わる最も手軽かつ強力な戦力増加の方法を取ることにした。

 ノーリスクでハイターンな結果をほぼノーリソースでお手軽に手に出来る神秘の奥義、勇者召喚である。当然勇者の人権は無視だ。

 召喚の儀式の代償として、それなりの数の人命と、大量の魔力がいるらしい。


 生贄は幾らでもいる。我が国の捕虜にしてやった兵士共や、そこらに蠢いている穀潰し共を使う。有難く思え!感涙の涙を滝のように流せ!

 大量の魔力についてだが、これも心配は及ばん。

 何故ならば、この国の王女たる私は魔法の才能でも頂点に君臨している。魔力の貯蔵量は凡人の一億倍。つまり、必要な魔力などこの私にとっては雀の涙程だ。

 これらだけでこの国を救えるとは、全く、勇者召喚様様だ。


 さあ、勇者召喚を始めよう!


~~~~~~


 早速召喚してみた。魔法陣から出てきたのは、まるで伝説を刻み込んだ彫刻の様な体つきをした若い男、つまりは筋肉がキモイほど付いているゴリゴリのマッチョだ。

 これは楽しみだ。

 だがなぜ裸なのか?まあいい。言葉の通じぬ蛮族なら廃棄するまでだ。


「異世界の勇者殿、我が国は今、卑劣な蛮族によって滅亡の危機に瀕しています。蛮族共は、我が国を荒らし、穢し、壊し、それでもまだ足りないとばかりに、米の一粒まで搾り取ろうとしています。親を失くした子供達は僅かなパン屑を奪い合い、道に転がる骨までしゃぶり尽くされた死体を、それでもなお齧り続け必死に生き延びようとしています。希望を調べ未来を詠む吟遊詩人の歌声を悲壮な面持ちで聞き入る民衆の姿を(わたくし)はもう見たくない!勇者様、誠に身勝手なお願い(・・・)である事は重々承知しています。それでもどうか、どうかこの非力な私達を救って下さい!この通りです!」


 11割嘘だ。

 私は涙混じりになって、屈辱に耐えつつ頭を下げた。因みに男性は女の、特に少女の涙には滅法弱い。それに加えて私の美貌だ。協力しないはずがない。


「分かりました!不肖このアレクサンドロスは貴女達に協力します。そして、その蛮族とやらを全て畑の肥料としてやりましょう!お姫様、どうかお顔を上げてください。私は貴女の駒として、命尽きるまで戦い抜きましょう!」


 ヘラクレスとやらは、まるで親の仇を討ちに行くかの様な目をしている。

 なるほど、彼は正義感が強く、同時に思い込みが激しいタイプのようだ。このような当たりを一人目で引くなんて、私はやはり女神に愛されているな。顔も悪くないし、戦争が終わり次第、私の婿として迎え入れてやってもいいな。ただ、私の好みは線の細い黒髪イケメンだからやるだけやったら捨てよう。


 彼を丁重にもてなし、豪華な一人部屋を当てがった。父が何か言いたそうだったが魔力の塊をちらつかせたら黙った。この様な弱腰だからコ○○○○○共にやられるのだ。戦争が終わり次第早々に殺してしまおうか。


 翌朝、彼の元を訪ねた。

 彼は死んでいた。Why?

 奴らの暗殺者の仕業か、それとも我が国に裏切者がいるのか。王城に、勇者が殺されたという知らせが出回り疑心暗鬼の心によって支配されつつあった。


 だが、それはあっさりと医者が解決した。

 なんと、蚊に刺されて死んだというのだ。


「私達は、この蚊が持つ毒に免疫を持っていますが、彼は持っていなかったのでしょう。まあ、今後虫刺されなどを気を付けることですね」


 ・・・命尽きるまで戦い抜いた結果が、蚊の一匹にやられるという不名誉な戦死のみか!ふざけるな!

 こうもあっさりと死なれては私の名誉に関わるのだ。勇者が死んだことについては箝口令を敷き、次は蚊に刺されて死なないように城中に蚊取り線香を焚きまくろう。ついでに油も撒いておこう。

 後、蚊を見つけて殺さなかったら死刑。


~~~~~


 城内で転ぶ馬鹿が増えたことと、戦況が悪化した以外は特に何も無く、私は勇者召喚を続けた。

 二人目は、体格はひょろいものの、とてつもない魔力を全身から放ち続けている。こいつも期待できそうだ。


「異世界の(以下略)」

「分かりました(以下略)」


 奴も同じ様に引き受けてくれた。私には演技の才能すらも備わっているのかもな。

 早速私は、奴を晩餐会に招いた。


 奴は死んだ。


 今回は原因がすぐに分かった。奴は魔物の魚を口にしたとたん死んでしまった。何故だ。身体が貧弱過ぎたのか?


「ああ、食中毒ですね。私達もよく熱していないオークの肉を食べたらああなるでしょう。それと同じで恐らく彼は魚を食べなれていないのでしょう。次からは勇者に出す食事にも気を付けてくださいね」


 蚊の後は小魚か。異世界人はどれだけ繊細で脆弱なんだ。

まあいい。私の魔力にはまだまだ余力がある。今度はいっそ集団召喚してやろう。

 その前に、魚などは出さないように料理人に言いつけよう。私も嫌いだったしちょうどいい。

――――――


 食卓から魚が消え代わりに肉が増え、城内の人間の体重が増えたことと、国民の餓死者が何故か増えたことと、無駄な領土が削減されたこと以外は特に何も無く、私は集団召喚に向けての準備を進めていた。


 まずは祭壇の撤去だ。なんだか古ぼけてるし黴臭い。物置の踏み台にでもしてしまえ。

 それになんだこの無駄にでかい柱は。今すぐぶち壊せ。

 なに、これらは神聖な聖宝で壊したり粗末に扱うような事があれば罰が当たる?

私を誰だと思っている、ジャポニーズ王国の王女にしていずれ世界の帝王となるヤマーダハナコ様だぞ。神なぞ恐るるに足らん。私を一目見れば余りの美貌に自然と跪いて自らの血をワインにして私に捧げるさ。

 さあ今すぐやれ。我々には時間がないのだ。



 のろまな部下どもを数人処した結果、ようやく準備が出来た。

 いざ召喚してみると、それはそれは剛健で屈強な肉体の持ち主達がわらわら出て来た。総勢40人。

 質、量共に期待できそうな奴らだ。しかも能力持ちも複数いる様だ。



「(全略)」

「(同上)」


 やはり、私の神をも超えるオーラを前に彼らは快く引き受けてくれた。その後何故か全員同じ方向を向いて跪き始めた。やはり野蛮人のわけ分からん文化は理解できんな。戦争が終わり次第奴らを洗脳して奴隷にするか。数が少なくなってきたしちょうどいい。


 さて、前回のようなことがあってはならない。戦場以外で死ぬ権利は奴らにはないからな。もしくは私のために殉死するかだ。


 そのため対策を十全に行った。

食事は加熱しまくったパンと、これでもかというほどに焼いたオーク肉のハンバーグ。少々黒いが男なら文句言わずに食べろ。

 医者が「食器に使う金属に反応して死ぬ人もいる」と言っていたので彼らには手づかみで食べてもらおう。

 なに、「あついきんにく」があれば多分大丈夫だろう。


 食事を取らせた後、大浴場に案内し、蚊取り線香の匂いが充満する部屋に押し込み、睡眠香と焚いて寝かせた。

 さて、明日から我が国のために、文字通り死ぬまで(・・・・)働いて貰おうじゃないか。


 この夜、全力疾走するマッチョ達があちこちで目撃されたらしい。


 翌朝、部屋はきれいになっていた。何もいなかった。


「何故奴らがいないのだ!それに脱走をこうも簡単に許すなんて、警備兵は何をしていたのだ!」


「現在人手不足な状態でして、警備のための兵士もまともにいないのです。

そのため、召喚者達を探そうにも探さない状態なのです」


 役立たずの無能どもが!兵士がいないのならそこら辺から適当に攫えばいいだろう!

目の前の脂肪の塊をコンパクトにし、場外へ奴らを探しに行った。



 翌日戦場から逃げてきた腰抜け共の報告によれば何故か敵軍の前線に居たらしい。そしてどういう訳か此方を攻撃していたらしい。

 糞共が!!せっかく召喚してやった恩を忘れて我等に楯突こうなど万死に値する大罪だ!!私が直々に引導を渡し地獄の底に拉致監禁してやる!


―――――――――――――――

 何故か城に届けられる食料が殆ど無くなったこと、更に昼夜問わず喧しい叫び声が城外から聞こえること以外は特に何もなく、魔力弾を一発盛大に撃ってやったら一気に静まり返った。うむ、愚民共は大人しく私に従っていればよいのだ。

さて、ここまで勇者召喚をやってきて気付いた事がある。


 異世界の愚民共弱すぎ


 蚊に刺されて死ぬは魚にあたって死ぬは挙句に裏切るは。ろくなのが居たもんじゃない。

 ならば私が直接出向いて戦うか?いやこれは駄目だ。王女たるもの常に民衆を顎で使い潰し、例え倒れてもマリオネットの様に操り血の最後の一滴が干からびるまで酷使し、人々の屍の只中で高笑いするものだと王室の家庭教師に習った。


 よって勇者召喚を続けよう。


 え?生贄がいない?

 捕虜も穀潰しもいない?ならば作ればよいだろう。


 ちょうどここに沢山居るではないか。私の従順なる僕どもが、生の最期の一秒まで私に捧げたいと願っているではないか。


 なに、王国には私がいれば十分だ。女王がただ一人君臨していればよいではないか。他に何がいるというのだ。


 国民?

 土地?

 城?

 財産?


 全て不要だ。


 私がいるこの世界こそが私の王国なのだ。

 案ずるな、貴様ら僕はこれまで私に付き従った褒美として幸せな夢を最期まで見させてやるぞ。



 なに?嫌、だと?

 何が不満なのだ?何が不服か?

 私に反逆するつもりか?

 私に離反するのか?


 まあ、貴様らが今足掻いたところで流れ出した水は止まらん。無理に逆らうより流れに身を任せた方が賢明だぞ。貴様等は何の力も持たない藁に過ぎん。

 分かってくれたか。なら良い。別れのワインでも飲んでろ。地下倉庫に糞親父が貯めたワインが大量にあるはずだ。



 今回召喚するのは一人だ。一騎当千どころでは無い、天下無双など生ぬるい。この世に存在する全ての動を静にし、私に逆らう者に永遠の地獄を見せる、心臓の最奥まで私に従順な異世界の勇者をこの私は望んでいる。この私は切望している。この私は渇望している。

 神よ、私の僕よ、私の願いを聞き給え。私の望みだけを叶え給え。

 

 ああ、力が漲る。体が熱くなる。

 全身に秘めた魔力が鎖から解き放たれ、王国全土を覆うベールとなる。

 魔力も十分だ。生贄も十分だ。

 愚民共の悲鳴が歓喜のファンファーレとなり、僕共の泣き叫ぶ声は祝福の言葉となる。


 ああ、幸せだ!なんて幸せなんだ!

 こんな幸せ他にないぞ!

 ここは幸せの国だ!

 ユートピアだ!

 この理想郷を穢す者共を排斥するための力を我に!



 さあ、勇者召喚を始めよう!




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「おはよー」

 始業時間ぎりぎりに教室内に滑り込み挨拶をする。


「おい、田中。五秒遅刻してるぞ」

 訂正。ぎりぎり間に合わなかったようだ。先生に適当に謝ってから席に座る。


「いやーまいった。寝坊した日に限って電車が遅れやがった」

「ほんとついてねーなー田中って。

・・・ってなんかお前光ってるぞ⁉」


 え?そんなまさかネット小説の異世界転移のルーチーンが今ここで起きるわけが・・・

 はい光ってます。がっつり足元に魔法陣っぽいものがぐるぐるしています。

 ははっ、まさか。


 眩しい光が僕を包み込み意識が遥か彼方へとすっ飛んで逝った。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「気が付きましたか、異世界の勇者様!」

 学校に来て席に着いた途端に足元が光りだして、目が覚めたらテンプレ通り純朴そうな西洋系美少女なお姫様が潤んだ瞳に涙を浮かべて僕をじっと見つめていた。思わずその美麗な顔をまじまじと見てしまう。


「えっと、ここはどこですか?」


「はい、ここはジャポニーズ王国です。この国は現在悪逆非道な隣国の暴力的侵攻によって滅亡の危機に瀕しています。どうか、憐れな私を(・・)お救い下さい」


 なるほど。という事は人間と戦わなくちゃいけないのか。もやし系現代っ子には辛いよ。

 というか異世界転移の付属品チートはどうやって確認するんだ?


[ 田中太郎,所持スキル:空間支配]


 何故か空中に文字が浮かんでた。それにしても空間支配か・・・なんかとっても強そう。お姫様もニコニコしてる。


「分かりました。僕がこの力を使ってこの王国を救いましょう」


「・・・っ!ありがとうございます!この国を救ってくださった暁には太郎様か望む物を何でも差し上げます」


 何でも!?いま何でもって言ったよね!?


「じゃあ、この戦いが終わったら僕と結婚してくれませんか?」


 欲望をそのまま口にしたら何故か死亡フラグになってた件について。いやでも流石に承諾しないでしょ。うん。婚約者とかいそうだしね。


「良いですよ。太郎様となら喜んで結婚致します。えっと、これでいいですか?」


 王女様が上目遣いに、しかも若干顔を赤くしながら恥ずかしそうにしているから若干気まずい。なんて言うか、恥ずかし過ぎて俺も王女様もフリーズしてしまった。


「・・・・・・・・・・・・・・・お茶、淹れてきますね。そこで待っててください!」


 王女様は「お」の部分で既に駆け出して大広間を出て行ってしまった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 うわあああああああああああ!

 なんなんだ!

 なんなのだあの超絶イケメンは!

 何事も包み込んでくれそうな大きな瞳に薄い唇、線が細いものの確かに男性的な体!どんな闇よりも深い黒髪!

 間違いない!何某太郎こそが私が待ち望んできた理想の伴侶!

 

 どどどどどおっどどどうしよう。

 まずは丁重にもてなさなければ。まずは食糧庫に積んである肉を焼いて出して・・・いや料理をして・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 そして一緒に風呂に入ってベッドにインして・・・

 あの紅い唇に××××して彼の×××にキスして×××ス××××6××××××××××××ア×××××××××ら××××××××××(自主規制)



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・私は何を考えているのだ?

 今大事なのは男に好意を抱かせることではなく、快楽に身を委ねることでもなく、誑かして有象無象共をぶち殺して地の糧としてやる事ではないのか?

 どうせ彼は私に惚れている。好感度なんて態々上げなくても今のうちは大丈夫だ。

 背後から慌ただしく靴が階段を叩く音が響いてくる。どうやら人が消えている事に気付いた様だ。

 思考を切り替えよう。

××××




「・・・なんで誰もいなんですか?どうして人の姿が一人も見えないんですか!?他の人はどうなった!?」


 予期された通りの言葉を彼は肩越しに投げかけた。再び全くの静寂に包まれた城内の入り口で私はゆっくりと振り返り、さながら穢れを知らない天使の微笑みを顔に張り付けて、福音を告げる天使の様な声をゆっくりと吐き出した。


「何をおっしゃいますか、太郎様?この国の臣民達は今も確かに生きていますよ」


 彼はホッとしたように息を吐いた。大方、『この国のひとたちは全員避難したんだろう。ああよかった』と都合よく脳内変換しているのだろう。まあそれ以外の可能性が彼にとっては悲惨なものだからな。


 が、また表情が暗くなる。何故だ?


「今は敵の軍勢を殲滅することが先です。その強力なスキルを使って下さい」


 敵の軍勢は元王都のすぐそこまで来ていた。ボロッちい靴が地面を情けなく叩く音と、汚い声を辺りに撒き散らしている。さあ、早く蛮族共を殺せ!


「・・・・・・」


 が、彼は何も言わない。

 どうした?ビビっているのか?

 初めて人を殺す事に何を躊躇っているのだ?

 どうせ奴らはいつか死ぬ。それをほんの少し早めるだけだというのに。


「どうしましたか、勇者様?」


 一歩、彼に近づく。お互いの吐息が知覚出来る。


「敵を殲滅する事が我々国民の願いです。それをできるのは勇者様しかおりません!」


「っ・・・・・・」

 もう一歩、私の胸が彼に当たるまで近づく。彼は反射的に上半身をのけ反らせるが、彼の手を取り、上目遣いで更に畳み掛ける。


「この戦いが終わればこの世に平和が訪れます。そうすれば、城下町に子供の笑い声やも元通りの平和な日常が過ごせます」


ついでに軽めの洗脳しよ。


「・・・分かりました」


 そこからの彼は、まさに『災悪』そのものだった。

 彼が腕を一振りすればゴミ共がゴミらしく吹き飛び、何か詠唱したと思ったら空間に大穴が開き落ち葉のように吸い込まれていった。


「すごい!すごいぞ!さすが勇者様!」


 敵はいつの間にか眼前から完全に消え、跡には赤い血溜まりが残された。


「やりました!全ての敵を撃退しました!流石です勇者様!ささ、今日はお疲れでしょうからゆっくり休んで下さい。今から食事を用意しますね」


 彼の手を取り私の部屋に連れ込もうとした。だが、彼は動かない。


「...どうしました、勇者様?敵は全て死にました。この国には平和が訪れました。これからは私の、王女の夫としてこの国を支えて行きましょう」


「...俺が殺したのは、人間ですか?」


 何言ってんだこいつ。今まさに蛮族共をぶち殺したばかりだろう。


「確かに私達と同じ人間です。しかし、彼らは罪の無い私達の民を沢山殺したのです。殺されて当然の人間でした。勇者様が罪の意識を感じる必要はないのです」


「でも、全員が全員そうゆう訳じゃないだろ。誰だって殺したくて殺した訳じゃないんだ。彼らにも家族がいるんだ!帰るべき家があったんだ!大切な人がいたんだ!それを俺は、俺は!」


 何言ってんだこいつ。私以外の人間は総じて価値がない。つまり居ても居なくても変わらないどうでもいい存在だ。そんな物に何らかの感傷を抱くとは。


「勇者様、人はいずれ死ぬのです。それが早いか遅いかの違いですよ。たかが人間ごときにそのような感情を抱かないで下さい。一々人間に感情移入しては私の夫は勤まりませんよ」


「...!お前、人間をなんだと思ってるんだ...」


 彼は怒りを顔に出して私に向かう。あれ、説得をどこかでミスったか?いや、完璧たる私にミスはない。勝手に奴の脳味噌がバグって感情が暴走してるだけだろう。可哀想に。


「おかしいと思ったんだ。俺が敵を一掃しても城下町から人一人出てこない!誰の声も聞こえない!それなのに王女がここに残ってるのはおかしいだろう!お前、国民をどうした!」


 おかしいのはお前の頭だよ。国民がどこにいったとかどうでもいいだろう。今一番重要なのはどのプレイで私の初体験をするかだろ。

 だがこのまま情緒不安定な奴とはしたくないな。洗脳するか。


「おい!答えあばばばばば」


 ふう、やっと大人しくなった。さて、やるか!



 賢者になって考えたが、これからの食事はどうしようか。見た限り田畑は荒れ、とても作物が実る状態ではない。死体は空間操作とやらでどっか行ってしまった。保存食があるとはいえ、これだけじゃ味気ないな...

その時天才的な頭脳に電流が走る!


 魔力は完璧、生け贄ならあてがある。

 私の身体から出てくるのだ。私のために使われるのは本望だろう。


「さあ、勇者召還を始めよう!」


 一年後にな!

そうして、王女と国王は国を発展させて、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。


めでたしめでたし

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