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幕間 大切な人との再会

 静かな世界から眺める教室が、俺にとっての日常だった。誰も居ない部屋で遊ぶゲームが、私にとっての楽しみだった。

 何時までも続く穏やかな日々。けれど記憶の奥底に仕舞われた《《誰かとの思い出》》が、時々ちらついてくる。本当の孤独は寂しいのだと、思い知らせてくる。


 私達が物心がついた頃から、ずっと居た様な気がする誰か。あるいはそれ以前からずっと……。

 今となっては数秒も記憶の海に潜らなければ、思い出す事は出来ない。


 俺達の心に深く刻み込まれた誰かとの日々が、きっと人生の礎になっている。



 だというのに……、だというのに! 


 私達は“   ”の顔を思い出せない! かけてくれた言葉なんて殆ど覚えてない! 何をして遊んだのかも、何時“   ”という存在が目の前から消えたのかも! 

 記憶に片隅にこびり付いているのは、かけてくれた言葉と、額に感じた体温だけだった。


 ……実体の無い記憶に気付いて、そうやって泣き喚くには《《忘れすぎていた》》。

 ふと本当にそんな過去があったのかという細やかな疑問が一瞬浮かび、ぼんやりと日々を過ごす。


 俺にとっての日常も、私にとっての楽しみも。その人が居なくても成立していった。時々襲い来る孤独感も、許容した。



 そんなある日、じっと自分の顔を見つめてくる猫を見つけた。二人家族で出かけた時の事だ。

 目を合わせても、無防備に座っているだけ。試しに手を伸ばしても、黙って受け入れている。


 孤独感を紛らわす為の手段として、ペットを飼う事も考えた。けれども母子家庭という環境に猫を置くのは難しい。飼う以上、その責任を負わなければならない。

 だから諦めたのだが……、人に懐く野良猫なら、可愛がっても良いのかなと思った。


「あら? この猫……こんにゃくちゃん?」


 大きく欠伸をする仕草を見てか、母が思い出したように呟く。


「また会ったわねぇ……何年振りかしら」


 聞くと、ママも猫の世話をしていた時期があったらしい。と言っても飼い猫ではなく、家の近くに棲み付いた猫だと。

 何時の話かと聞けば、母が妊娠するよりも前の頃だという。


「……思い出した、もう十年もなるわね」


 その言葉を聞いて、思わずママの顔を見てしまった。

 何を落ち込んでいるんだろうと思っていたら、何時もの幼い私たちに物を教える口調で言った。


「猫の寿命はね、大体15年なの。この子は野良猫だから、もう少し短いかも」


 という事は。

 幼いながらも察して、何とも言えない気持ちになる。この子はもうすぐ……。


「もうすぐお別れね。最後に会いに来てくれたのかしら」





 ──ふと、その様子を見ていた自分は、嫌な想像をしてしまった。

 もし、もしも“   ”と再会できたとしても……。その後すぐに、別れが来るんじゃないだろうかと。

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