泉の女神は木こりが好きすぎて普通の斧を返したくない
もしドラマ化したら
木こり:阿部寛
女神:仲間由紀恵
で、お願い致します。
(*´д`*)
むかしむかしあるところに、ちょいと渋めで真面目な中年木こりがおりました。木こりは仕事一筋で結婚相手も居らず、毎日毎日木を切って働き続けました。
──ボチャーン!
「しまった! 相棒を泉に落としてしまったぞ!?」
ある日、木こりは仕事道具である斧を誤って落としてしまい、泉の前で途方に暮れました。
すると、泉からはにかみながら女神が一人現れました。
「お前か、私の家に汚い斧を投棄したのは……」
「そ、そんな滅相もありません……」
絵にも描けぬ程に美しい女神にひれ伏し、木こりは頭を深々と下げました。始めは幻覚でも見ているのではないかと思えるくらいに美への追究を極めたその姿形は、まるで昔観た映画に出てきた女優のようでした。
女神は暫し木こりを見ると、静かに口を開きました。
「貴様が落としたのはこの【金の斧】か? こっちの【銀の斧】か? それとも汗臭い【普通の斧】か? 3秒以内に答えろ」
木こりは見たことも聞いたことも無い輝きを放つ金銀の斧に目が眩みました。とても眩しすぎて女神の方を直視出来ません。
「3……2……」
「ふ、普通の斧です!!」
木こりは相棒を失いたくない一心で正直に答えました。すると女神は、ちらりと斧を見た後にもう一度問いました。
「金の斧か? 銀の斧か?」
「いえ、汗臭い汚い普通の斧です……」
「私が金か銀か聞いているのだ痴れ者! お前はどっちが欲しいかさっさと答えろ! 金の斧で頭をかち割るぞ!?」
女神は頬を膨らませプンスカと怒り始めました。木こりはどう答えて良いものか分からず、頬を掻きながら恐る恐る問い掛けました。兎に角頭をかち割られるのだけは避けなくてはなりません。
「あの……返してはくれないのですか?」
「ならぬ。私の家に手垢塗れのばっちい斧を投棄した罰じゃ」
木こりは肩を落としました。しかし、命まで取られなくて良かったと、渋々相棒を諦めました。斧は新しく買えば済みますが、自らの命だけは買えません。
「代わりにこの金の斧か銀の斧をやる。選べ!」
「……?」
木こりは一瞬理解出来ませんでした。どう見ても資産的価値の低い普通の斧が没収されるのに、何故か代わりに高価な斧をくれるのは辻褄が合わないからです。
もしかしたら後からとんでもなく法外な値段を請求をされると思った木こりは背筋が凍え、身震いしてしまいました。所謂押し付け商法と言う奴に違いないと木こりは警戒を深めました。
「そんな高価な物頂けません! 相棒を返して頂ければそれで十分です! お願いします返して下さい!」
しかし女神は木こりの普通の斧を大事そうに抱え、離そうとしません。
「これはもう私の物だ! お前にはこの金の斧と銀の斧がお似合いだ!! 受け取らぬと銀の斧で首を刎飛ばすぞ!?」
木こりは無理矢理金の斧と銀の斧を押し付けられると、女神はそのまま泉へと消えていきました。頭も首も無事で済んだ木こりですが、納得のいかない表情で暫し呆然と立ち尽くしました。
「……解せぬ」
木こりは長年愛用した普通の斧を失いましたが、代わりに高価な金の斧と銀の斧を手に入れました。
女神の消えた泉の水面に波紋が広がり、そっと顔を近付けると、水の中からとても陽気な歌声が聞こえ、木こりから没収した斧をブンブンと振り回したり抱きしめたりキスをする怪しげな女神の姿がうっすらと映りました。
女神:綾瀬はるか
で、もう一度読むとまた違った味わいがあると思います。
(*´д`*)