第6話 (神の声の後)はじめてのおつかい
「にいちゃん、食べたら買い物行くよ」
「えー、俺今から宿題するつもりだったんだけどー」
「うそつけ……晩御飯ないよ?」
弟からの冷たい視線が痛い。
「ちぇー」
「「ごちそうさまでした」」
さあ、二階でもう少しスキルを試してみよう。忍び足で階段を上がろうとしたら、
「買い物いこう、ね?」
ひえっ。
「歩いていこう!」
俺たちは玄関から外に出る。久しぶりの外だ。
「今日は何買うんだ?」
気を取り直して聞いてみる。
「えっと、卵とお米と玉ねぎがなくなってるからそれを」
「ほー」
いつの間にか弟、針山晴樹はこんなにも成長していたらしい。いやあ、俺の後について、かめは○波とかゴムゴ○の銃とかやってた頃がなつかしいなあ。
「気持ち悪い顔しないでよ恥ずかしい」
「傷ついたよ俺」
「知るか……あれ?」
「人っ子一人いないな」
がらんとしたスーパーの敷地に違和感を覚える。
まさかあの魔獣が、こんな市街地ど真ん中にも出現したとでもいうのか?
(いや)
即座にその思考を打ち消す。買占めが起こったと考えるのが妥当だろう。
「ニュース見たか?晴樹」
「え?」
「ほら」
『一時休業のお知らせ
スキルの発生のため、体業とさせていただきます
いつ再開するかは未定でございます
店長』
「慌てて書いたんだね……店長さん」
「おい、見てみろよ。品物全くないぞ」
「え?そりゃ休業だしないでしょ?」
「ちがう。トイレットペーパーとか、文房具とかの棚まですっからかんだ」
「どうする?商店街行く?でも、もう今日はやめといてもいいと思うんだけど……」
「今でしょ!い、いや冗談とかじゃなくてだな、普通に!買占めが起きてるなら、さっさと買いに行かないと」
「それもそうだね」
「わ、わかってくれたようで、な、何よりだとも!」
幸い、商店街の商品はまだ残っていたため、俺は荷物持ちにされつつかえった。いやまあ、このくらいしかできることがないからではあるが。
「ただいまー」
時計の針が午後七時を回ったころ、母が帰宅した。母は息子の俺から見ても美女だとわかる顔だちをしている。
「おかえり、かーさん」
「おかえり」
2階で勉強している弟の声が聞こえた。
「お父さんは?まだ帰ってきてない?」
母さんはコンタクトを外した。……あれ?母さんの目、青かったっけ?まあいいや。
「うん」
「おそいわね……ああ、帰ってきた。おかえり」
「ただいま」
父は相変わらず、どうやって絶世の美女の母を捕まえたのかわからない平凡な顔をしている。
「そろそろご飯にしようかしらね」