第5話 座標指定
ブックマークありがとうございます。
画面の前でガッツポーズしてます。
地面に触れるのが条件か?いやでも、もう片方の手ももちろん床についている。触れていることを意識すればいいのか?そう思い、もう片方の手に集中する。
(x=0,y=1)
おお。しかし、こいつはなかなか荒いな。整数表示しかされないのか。いろいろ試したが、単位はメートルかな?おそらく四捨五入だろう。
次のスキルだ。
「《座標指定》!……あれ?何も起きない」
?????どうやるんだこれ。不発はちょっと恥ずかしい。
発動指定がうまくいってないのかもしれない。座標指定のタブをウィンドウから開く。
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座標指定▲
ものの位置を指定する。
-設定-
トリガー スキル名の後、指定したい座標を口に出す
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「なるほど……?《座標指定(x=0,y=0)》!」
ん?
「何も、起きない?何かが座標上に無いとダメなのか?枕でも置いといて試してみるか」
俺は、さっきまで立っていたそこに枕をたてる。
「《座標指定(x=0,y=0)》!……何も起きない、か」
そう言って枕を戻そうと手を伸ばした瞬間、
ぱすっ。
「……?」
「?????」
全く触ってなかったのに?なんで倒れるの?え?安定させといたのに?扇風機?……まさか!
もちつけもちつけ。も、もう一回やってみよう。
「《座標指定(x=0,y=0)》!」
次は殴る動作をしてみる。もちろん空振りだ。
ばすっ。
勢いよく枕が倒れる。なんかちょっと衝撃波飛ばしてるみたいでカッコいい。
次は、枕に後ろを向けてやってみよう。
「《座標指定(x=0,y=0)》」
ばすっ。
なるほど。このスキルは、指定した座標に動作を転移させるらしい。
うーん、難しい。
テレビに映った光景を作り出した魔獣は、ずっととどまっていてはくれないだろう。座標を調べる時、地面をわざわざ手で触れるのも面倒だ。
罠を仕掛ける、みたいな感覚か。
何か、眼の使い方がほかにないものか。場所を指せばいいのか?なら……、
……地図とか?
家の間取り図があったはずだ。俺はそれを棚から取り出し、広げる。
「《位置の眼》……うわっ」
間取り図のところだけ、光の線が、それにおける1メートルごとに走っている。実際の座標と、地図に触れてわかる座標はちがうみたいだ。
普通の一軒家、一階のリビング。今いる真ん中あたりに指を置く。大きめにプリントしてあるから、そこまで大きく指す位置の違いはない、はず。
(x=2,y=1)
うわめっちゃずれた。
指じゃいけないのか?爪の先でやってみよう。
(x=0,y=1)
触れる点が小さいほどいいのか?……中二病的な解釈だが、イメージのしやすさ、とか……?
あっなんか恥ずかしい。
「にいちゃん何悶えてんの?」
玄関の方から現れた弟。
「おぉう、おかえりまいぶらざー。今日は早かったな、部活なかったんだ」
「ただいま。友達と遊びに行ってた。何してんの?」
リビングの床に散らばっているのは枕と間取り図。そりゃ意味不明な組み合わせだよな。
「スキル試してた」
「ああ、あれか。ところでにいちゃん、昼ご飯なにがいい?」
「やきめし」
「おっけ。枕片付けといてよ」
弟は台所へ向かった。俺が料理して産業廃棄物を出してしまわないためといえ、わが弟の女子力、いやお母さん力まじぱねぇ。弟が手を洗う水の音を背に俺は思った。