感情ーmindー
あれから僕は不登校になった。
殴られるのが怖いってわけじゃない。
ただ他の人巻き込みたくないっていうか、人とあまりかかわりたくないからだ。
だから今日も遅くまでベッドで眠り、起きたら読書、そして眠くなったら寝る。
そんなぐうたらな生活がなんとなく好きになってしまった。
「拓馬、また学校休むの?」
「うん、人と接するの疲れた」
「ええ…、最近クラミティとか倒してないでしょ?」
「うん」
「倒しなよ?元気でないよ?」
「いやいいよ」
「えええ…」
「みつ、僕の事気にせずに学校行ったら?」
「わかったわかった。明日はちゃんと行きなよ?」
僕は返事せず再びベッドの中に潜りこんだ。
しばらくすると扉が閉まる音が聞こえた。
出て行ったと思うので再び頭をだす。
「ばあ」
顔を出したすぐ目の前にみつの顔があった。
なんだ出て行ってなかったのか。
「あはははw今びっくりしたでしょ!?」
「みつ…、学校遅れるよ?」
「いーよいーよ。誰も俺の事気にしてくれてないし」
「あ、ああ…。悪い。」
「何が?」
「みつ今はそんな気分じゃないんだ…」
「わかったよ、じゃあ俺は行ってくるから」
今度はちゃんと出ていくのを見張っていた。
次は帰ってこなかった。
僕は静かにベッドを後にした。
先ほども言った通りここ4日wizardになっていない。
そのため今は本当に病モードだ。
やる気が出ない、何もしたくない、ごはんがまずい。
でもなぜかこっちの方が落ち着いてて好きだ。
伊藤の事なんて…
どうでもいい。
一階に降りて、顔を洗うことにした。
鏡を見た。
酷いクマができていた。
本当に酷かった、マッキーペンで塗ったのか?って思うほど。
無駄だが、顔を洗うついでに少しだけこすってみる。
が、消える様子もないのですぐにやめた。
顔をゆっくり拭く、頬からおでこ、おでこから顎裏としっかり拭いた。
そしてもう一度鏡を見る。
案の定消えていない。
もういいや、そんな気分でだらだらと脱ぐ。
嫌々で向いでいたのでこけてしまった、顎を扉で売ってしまった。
痛いけど、なんとも思わなかった。
気にせず服を脱いだ。
近くにあった服を着た。
その瞬間お腹がぐーとなった。
流石に三日も飲まず食わずだと流石にお腹は空いてしまう。
「はあ…、しょうがないコンビニ行くか…」
このままではおそらく飢え死んでしまう。
死んでしまってはみつに多大な迷惑をかけてしまう。
重い足取りで玄関へと向かった。
鍵を持ち一足しかない自分の靴を履き、立ち上がった。
玄関の扉を開けると一気に日光が僕の視界に入ってきた。
「う、うう…」
少し目頭が痛い、4日ぶりの日光何故か気に食わない。
セブントゥウェルブまで約560m。
意外に遠いがいい運動になる。
僕はゆっくりとのんびりと歩きだした。
地面を見ながら歩く、特に何もないけど僕は下を見るのが好きなのだ
そんなことをなんとなく思いながら国道沿いをゆっくりと歩いていく。
車の音がうるさい。
特に何も起きない。
平和だ。
みつと出会い、初めて落ち着いた生活を送っていた。
本当に感謝している。
ずっとそんな変哲のない生活が続いてくれたらいいのにな。
うつむくのをやめ、目の前を見た。
「こんにちは、最近学校に来ていなかったね」
思わす二度見した。
びっくりした、そこにいたのは伊藤だった。
え、なんで伊藤がここに?そんなことが頭によぎった。
「い、伊藤?」
久しぶりにみつ以外の人としゃべったので声が裏返った。
今の僕はほとんど無感情なのでなにも感じない。
「そーだよ、最近見なかったけど大丈夫?」
「大丈夫、てか伊藤こそ大丈夫か?」
そう、伊藤の眼もとにもくまができていたのだ。
僕よりも薄かったが確かにそれはくまだった。
「え、何が?」
「くま」
「くっまあああ!?」
あたりをチラチラ見まわした。
何もいないことを確認し、こちらの方に目を向けた。
「あ、ごめん。少しそわそわしててw」
「僕こそ、ごめん。くまって目のくまの方ね」
「え…?」
一瞬彼女の表情が変わったような気がした。
…気のせいか。
「あ、はははっ。最近寝てなかったからかな」
「大丈夫か?僕でよければ相談するよ」
「いや、特にないから気にしないで」
何故かその言葉が少しだけ冷たく感じた。
「っで、これからどこ行くの?」
「ああ、これからコンビニに」
「あーコンビニに!」
「そうそう」
そのまま立ち止まって話すのもあれだから僕は歩き始めた。
「あー、私も何か買うものがあるんだったー」
「そういえば、コンビニで買うものなんてなかったー」
「え、ちょっとw冷たいな!」
「今はそんな気分じゃないんだ」
「ごめん」
伊藤がしゅんとした。
本当にそういう気分じゃないんだ。
「あ、そうだ。拓馬君確かスマホもってたよね」
「うん持ってるけど」
「ならさ、ちょっと貸して」
「え、なんで?」
「え、いや、lime交換しよ」
lime交換?
少し困惑した。
limeなんてみつとコンタクトする以外に使っていなかった。
そうかそれって友達と使うのか。
「あ、いいよ」
僕はポッケからスマートフォンを取り出した。
電源を付け、伊藤に見られないようにパスワードを解いた。
「ええと、確かどうだっけ…。」
「こうだよ」
伊藤は僕のスマートフォンをいじった。
「はい、どーぞ」
「あ、うん」
スマートフォンの画面を見た、見事に伊藤のアイコンが追加されていた。
伊藤のアイコンを見たがいたって普通だった、どこの背景かはわからなかったがとても綺麗だった。
「あれ、拓馬君のアイコン何にも設定してないの?」
伊藤は僕のアイコンを見てそういった。
正確には設定してないのではなく、設定の仕方がわからないのだ。
「まあね」
「そっか、なら私が決めてあげるよ」
「え、いいよ。別に」
「ほらこっちみなよ」
伊藤は僕の隣に来て自分たちの方にスマートフォンを向けた。
なんだ?と思った瞬間シャッター音が聞こえた。
「え…?」
「じゃん、これみてみて」
スマートフォンの画面を見たらそこには少しかわいい僕がいた。
その写真はただの写真ではなく加工されていた。
僕らの鼻のところには犬の鼻がついており、頭には犬の耳、目は少し大きくなっていた
「え、なにこれ?」
「え?知らないの?」
「うん、知らない」
「ええ、このアプリはね「sulou」って言っていう写真加工アプリね」
「ふーん」
「え、なに?興味なさそう…。」
「ああ、ごめん」
「ちょっとスマホ貸して!ちゃんとロックも解除してね」
僕は言われた通りちゃんとロックを解除して伊藤に渡した。
すごい嫌々だったけど、今さっきまでの自分の塩対応が情けなくなった。
「ありがと、少し待っててね」
「うん」
少ししたらスマートフォンは帰ってきた。
何が変わったのかと思いしばらくいじっていたが特に変化は見られなかった。
「ん?伊藤なにした?」
「気づいてからの内緒ね」
「あ、うん」
「今日元気ないね、どうしたの?あの事気にしているの?」
「うん、少しだけ。伊藤は大丈夫か?本当にごめん。申し訳ない…」
「ちょっとそんなに謝らないでよ」
丁度、セブントゥウェルブのについた。
その話をつづけながら入店した。
「あ、許さない」
笑顔でそういわれたから少し驚いた。
意外に怖い奴だったのか。
「アイスおごってくれたら許そう」
「あ、そういうことか…。わかったよ。僕のお手上げだよ。」
伊藤は少し小走りでアイスのコーナーへと向かった。
僕の顔にはこの状態だと滅多に出ない笑顔が浮かびあがっていた。
「ありがとう、伊藤。いつも助かってるよ」
少し笑顔でそう呟いた。